次から次へとアタックが続いたツール17日目。逃げグループに入ったヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)が待望のステージ優勝を挙げると共に、マイヨヴェール争いで首位を走るマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)とのポイント差を大きく削り取った。



7月22日(水)第17ステージ
シャンベリー〜ヴォワロン 走行距離174.7km/獲得標高2,200m(平坦)


今ステージの主役となるヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) photo:A.S.O.
積極策を続けるも、まだ勝利に手が届いていないEFエデュケーション・イージーポスト photo:A.S.O.


ステージ優勝とポイント最大加点を狙うマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.

3日間に及ぶアルプス決戦を前にした第113回ツール・ド・フランスの第17ステージ。主催者によるカテゴライズは「3週目まで生き残ったスプリンターたちを主役にした平坦ステージ」だが、シャンベリーからヴォワロンを目指す174.7kmコースはアップダウンの連続で、特に序盤戦は4級、4級、3級、4級と4つのカテゴリー山岳が続き、獲得標高は2,200mに及ぶ。

この日は個人タイムトライアルで落車骨折したフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)と、発熱によってラルス・クラップス(ベルギー、ロット・アンテルマルシェ)がスタートせず。開幕からちょうど20名がリタイアし、164名となったプロトンが過ごしやすい気候のシャンベリーの街からスタートを切った。

第17ステージ シャンベリー〜ヴォワロン image:A.S.O.

厳しいアルプスを前に、クライマーではない「逃げ屋」にとってはおそらくほぼ最後にして最大のチャンス。スタート直後から今大会最も逃げているバティスト・ヴェストロフール(フランス、ロット・アンテルマルシェ)を含んであらゆる選手たちが活発に動き、アタックが掛かっては吸収される展開が1時間以上に渡って続く。カテゴリー山岳を越えるにも関わらず平均スピードは44km/hに到達し、後方では早くもビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム)たちがグルペットを作る状態となった。

この日最も逃げ切りに意欲を燃やしていたのは、ポイント賞ランキングで首位に立つマイヨヴェールのマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)だ。マイヨヴェールを守りたいリドル・トレックの目標は、ピーダスンを逃げに乗せて147.5km地点の中間スプリントとステージ優勝を狙うこと。この日用意されたスプリントポイントを全て(中間25ポイント、フィニッシュ50ポイント)先取してマイヨヴェールをほぼ手中に収めたいピーダスンだったが、この日は31ポイント差のランキング2位につけるヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)が徹底抗戦を試みた。

0km地点から逃げを打つバティスト・ヴェストロフール(フランス、ロット・アンテルマルシェ) photo:A.S.O.

ステージ前半は湖畔の山岳区間を行く。アタック合戦によって平均スピードは44km/hに到達 photo:A.S.O.

逃げグループに入ったミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、ネットカンパニー・イネオス) photo:A.S.O.

山岳区間の終盤でようやく形成された20名の逃げグループの中に入ったのは第9ステージで勝利したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)や好調ジョシュア・ターリング(イギリス、ネットカンパニー・イネオス)、クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)といった強力な選手たち。この動きを逃したピーダスンはメイン集団に位置取ったものの、逃げ切りに意欲を燃やすべン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)たちが集団を飛び出し、さらには山岳区間を耐えきったオラフ・コーイ(オランダ)を勝たせるべくデカトロンCMA CGMが本格的な追走を開始した。

逃げとメイン集団のタイム差が25秒に詰まったタイミングで再びピーダスンが攻勢に出た。短い登坂区間を利用してあっという間にブリッジに成功し、チームメイトのシモンズと共に、フィリプセンを合流させじと猛烈にペースアップを企てる。リドル勢の猛攻によって先頭グループはピーダスンとヒーリー、ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、ネットカンパニー・イネオス)、エドワルト・プランカールト(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)、ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、スーダル・クイックステップ)、そしてフェリックス・エンゲルハート(ドイツ、ジェイコ・アルウラー)の6名だけに絞り込まれ、後方からはフィリプセンとそのチームメイトが必死に追いかける展開に。

総合成績で既にたっぷり遅れている選手たちがアタックを続けたため、マイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)や総合2位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)たち総合上位勢を含むメイン集団は、必死に追いかけるフィリプセンたちを見送ってペースダウンを選ぶ。ペースが落ち着いたことで、UAEチームエミレーツXRGは体調不良で一人遅れ、タイムアウトの危機に瀕していたアダム・イェーツ(イギリス)の元にティム・ウェレンス(ベルギー)を送り、2人で完走を目指した(最終的に26分半遅れで辛くも完走)。

6名の逃げグループを牽引して中間スプリントに向かうマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.

山岳を耐え抜いたオラフ・コーイ(オランダ)の勝利のためにデカトロンCMA CGMがメイン集団をコントロール photo:CorVos

逃げグループから抜け出し、ラスト4km地点まで逃げたヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

先頭6名は147.5km地点の中間スプリントに到達し、ピーダスンは無事に1位通過を果たして25ポイントを奪取。マイヨヴェール争いにおいて重要な加点に成功したが、追走グループではフィリプセンが頭を取り、全体の7番手で通過して9ポイントを加える。2人の差が31から47ポイントに広がる中、今度は先頭グループでチャンスを窺っていたストゥイヴェンが強烈なアタックで抜け出した。

フィニッシュまでの平坦区間をタイムトライアルモードでかっ飛ばしたストゥイヴェン。一緒に逃げていたピーダスンを引き離すことには成功したものの、問題はフィリプセンやコーイを含んだ大きな追走グループが後ろに迫っていたこと。ギルマイを除くスプリンター集団は残り15km地点でピーダスンたちを捕まえ、さらに残り4km地点で「フレッシュなメンバーを含む追走が見えた時点でチャンスは消えたと思った。でも攻めたことに後悔はない」と言うストゥイヴェンを吸収。フィニッシュ手前のノンカテゴリー登坂「ラ・コマンドリー(登坂距離2.6km/平均勾配4%)」では当然のごとく抜け出しが掛かったものの、スプリントに持ち込みたいチームの追走を振り切ることはできなかった。

フラムルージュ(ラスト1km)を通過すると同時に仕掛けたターリングは引き戻され、そのままラスト350mの最終右コーナーを通過してからフィリプセンを従えたファンデルプールのリードアウトがスタート。3番手ルイス・アスキー(イギリス、NSNサイクリングチーム)が中切れするほどの猛加速から発進したフィリプセンに対抗できる選手は一人もいなかった。

後続を大きく引き離してフィニッシュするヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) photo:CorVos

今大会初勝利を掴んだヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) photo:CorVos

絶好のリードアウトを披露したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)がフィリプセンを祝福 photo:CorVos

最強スプリンターの一人として挙げられながら、第1週目に陥った不調によって勝てない日々が続いていたフィリプセンがようやく勝利を掴んだ。対抗するピーダスンを弾き返すファンデルプールの最強リードアウトを得て、2着のマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー)から3車身以上の差を奪う会心の勝利。「大会序盤は自分らしさも、そうであるべき勝負の感覚も見つけることができない最悪な日々が続いたよ。17日間を耐えてようやく勝てた。毎日ずっと自分自身に失望していたけど、チームメイトやスタッフが全員で僕を支え続けてくれた。彼ら全員に対して感謝しないといけない」とフィリプセンは安堵の表情でインタビューに応えている。

フィリプセンが50ポイントを稼いだ一方、ピーダスンは8位に沈んだ。この日フィリプセンは合計59ポイントを稼ぎ、中間スプリントまでは順調に駒を進めていたピーダスンとポイントランキングで僅か7ポイント差にまで詰め寄ることに成功。「ポイントをたくさん獲得できて良かったよ。次のステージは非常に厳しいけれど、パリまで戦い続けたいと思う」と2023年以来となるマイヨヴェール獲得に向けて意欲を燃やしている。

待望の勝利を挙げたヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) photo:A.S.O.

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)は安定のマイヨジョーヌキープ photo:A.S.O.

辛くもマイヨヴェールを守ったマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.

ツール・ド・フランス2026第17ステージ結果
1位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) 3:41:13
2位 マウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー)
3位 オラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM)
4位 ルイス・アスキー(イギリス、NSNサイクリングチーム)
5位 リック・プルイマース(オランダ、チューダープロサイクリング)
6位 クレマン・リュソ(フランス、グルパマFDJユナイテッド)
7位 フープ・アルツ(オランダ、ロット・アンテルマルシェ)
8位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)
9位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)
10位 アーロン・ゲイト(ニュージーランド、XDSアスタナ)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 60:04:17
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +4:32
3位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) +5:51
4位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) +7:11
5位 フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) +9:22
6位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) +10:14
7位 レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) +12:50
8位 トーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング) +12:58
9位 ジョルダン・ジェガット(フランス、トタルエネルジー) +14:04
10位 ヤニス・ヴォワザール(スイス、チューダープロサイクリング) +24:18
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 452pts
2位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) 445pts
3位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム) 361pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 70pts
2位 ヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ) 46pts
3位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) 40pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) 60:11:08
2位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) +0:20
3位 フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) +2:31
チーム総合成績
1位 リドル・トレック 180:03:42
2位 UAEチームエミレーツXRG +18:10
3位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +54:24
text:So Isobe
photo:CorVos, A.S.O.