まさにアタックの乱打戦。15回目のジャパンカップクリテリウムを制したのは21歳の新星イェスパー・スティアンスン(ノルウェー、チューダープロサイクリング)。日本勢も4名がトップ10に入った。



ホープフルクリテを制した道上陽翔(学校法人 名古屋学院 名古屋高等学校) photo:Makoto AYANO
ウィメンズ・クリテリウムを制した田中麗奈 photo:Makoto AYANO


最前列でスタートを待つチューダープロサイクリング勢 photo:Makoto AYANO

宇都宮駅から直結する大通りを駆けるジャパンカップクリテリウム。2010年に初開催されたハイスピードレースも、コロナ禍での2度の中止を挟みつつ今年で記念すべき15回目。片側3車線のメインストリートを規制した往復コースを走る短距離高強度レースで、世界からやってきたトップ選手たちがスピードを披露した。

オリオン通りと交差するシンボルロードから大通りに入り、大観衆の前を2周回パレードラン。1周2.25kmの特設コースを15周回する合計33.75km、時間にして40分ほどの短時間高強度レースの火蓋が切って落とされた。

19チーム115名の選手たちがクリテリウムのスタートを待つ photo:Makoto AYANO

ハイペースによって隊列が長く引き伸ばされる photo:Makoto AYANO

スタート直後、積極的に動いたのは地元応援団に後押しされたAstemo宇都宮ブリッツェン勢だった。沢田時がシクロクロスばりのスタートダッシュで引っ張り、元全日本王者の山本元喜(キナンレーシングチーム)や寺田吉騎(チーム右京)も先頭でレースを作る。すると3周目、日曜日の優勝候補であるベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)が動いた。

移動スケジュールの遅れによって金曜夜に現地入りしたことを感じさせない走り。独特のエアロポジションで踏んだ元アイルランド王者はすぐに捕まったものの、この日は終始アタックを打ち続ける積極的な走りを披露した。

1回目のスプリント賞をとったのは、ライン直前で思い切りスプリントした元全日本王者の草場啓吾。入れ替わり立ち替わり攻める選手が入れ替わる中、山本大喜(VC FUKUOKA)を筆頭とした日本勢もレースを作る。今年はクリテの7連覇が掛かるリドル・トレックに絶対的なスプリンターが不在、かつマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)も勝負を狙わなかったことで集団をまとめ上げるチームがいなかった。

積極的にアタックを放ち続けたベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:Makoto AYANO

積極的な走りを披露したマッテオ・ソブレロ(イタリア、リドル・トレック) photo:Makoto AYANO

中盤からは、一瞬タイミングが緩めばヒーリーがアタックを掛ける緩みのない展開。常に一列棒状、常にハイペース。有力チームがコントロールするのではなく、国内コンチネンタル勢からワールドチーム勢までが絶えずアタックを仕掛け続ける乱打戦が終始続いた。

7周目の終わりに飛び出した阿見寺俊哉(愛三工業レーシングチーム)はマッテオ・ソブレロ(イタリア、リドル・トレック)のチェックで引き戻され、9周目に掛けられた2回目のスプリントポイントに向けてヴィクトワール広島がリードアウトを披露したものの、ライン上では孫崎大樹を抜き去ったニコラス・ゴイコヴィッチ(クロアチア、ポギチーム・グスト・リュブリャナ)が先着している。

全日本王者の留目夕陽(愛三工業レーシングチーム)が前方でチャンスを伺う photo:Makoto AYANO

ツール・ド・九州からの連戦となったトタルエネルジー photo:Makoto AYANO
レースを活性化させるクィン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック) photo:Makoto AYANO


終盤に生まれた逃げグループをジョルダン・ジェガット(フランス、トタルエネルジー)が牽引 photo:Makoto AYANO

シクロクロス全日本王者の織田聖(愛三工業レーシングチーム)がペースを作って全日本王者の留目夕陽を前に運び、今度はミケル・ヴァルグレン(デンマーク)が踏み込んでEFが積極策を続行。コフィディスのスタジエ(研修生)として走るジョセフ・ブルックス(イギリス)の単独アタックも1周で終わり、続いたフロリアン・シュトルク(ドイツ、チューダープロサイクリング)には再びヒーリーとニコロ・ガリッボ(イタリア、チーム右京)、さらにジョルダン・ジェガット(フランス、トタルエネルジー)が、少し時間を空けて積極的に動くソブレロも追いついた。

しかしこの5名逃げも長くは続かない。ロット・アンテルマルシェやジェイコ・アルウラーの牽引によって残り1.5周引き戻され、最後まで抵抗したソブレロの後を継いでサム・オーメン(オランダ、リドル・トレック)がアタック。さらにクィン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)が最終コーナーを回って踏み続けたものの、その背後から寺田吉騎がロングスパート。こうして集団スプリントの幕が切って落とされた。

イェスパー・スティアンスン(ノルウェー、チューダープロサイクリング)とアレッサンドロ・ボルゴ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)がハンドル投げ photo:Yuichiro Hosoda

先着したイェスパー・スティアンスン(ノルウェー、チューダープロサイクリング) photo:Yuichiro Hosoda

トップスピードに乗せる寺田をリードアウトに見立て、絶好のタイミングから踏み込んだのはイェスパー・スティアンスン(ノルウェー、チューダープロサイクリング)だった。同じタイミングで加速したアナス・フォレーヤ(デンマーク、ジェイコ・アルウラー)のラインを牽制しつつ、最後は追い込むアレッサンドロ・ボルゴ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)をハンドル投げで抑え込みクリテリウム覇者に輝いた。

リドルの連勝記録に待ったをかけたスティアンスンは、今季チューダーの育成チームメンバーとして走り、U23のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで3位、さらにロード世界選手権のU23レースで3位に入った2005年生まれの21歳。本人によれば決してスプリンターではなく、クラシックレーサーとパンチャーの間。来季から3年契約でチューダーの上部チームに昇格する新星が、ワールドツアーのトップ勢が躍動した高速レースを制した。

1位スティアンスン、2位ボルゴ、3位フォレーヤ photo:Yuichiro Hosoda

惜しくも4位、表彰台に届かなかった岡篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン) photo:Makoto AYANO
6位に食い込んだ岡本隼(愛三工業レーシングチーム) photo:Makoto AYANO


表彰台に上がったトップスリー photo:Makoto AYANO

ワールドツアー勢が表彰台を独占した一方、日本勢も岡篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン)が4位、寺田吉騎が5位、引退が迫る岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が6位、さらに本多晴飛(VC福岡)が8位と健闘。惜しくも表彰台には手が届かなかったものの、ここ近年最も存在感を示したレースとなった。

2026年大会のレース時間は40分07秒。最速記録となった2025年大会(39分58秒/平均スピード50.7km/h)よりも9秒遅かったものの、それでも平均スピード50.48km/hは歴代2位の記録。2年連続で50km/h台に突入し、高速化が止まらない世界のレースを体現している。
ジャパンカップ2026クリテリウム結果
1位 イェスパー・スティアンスン(ノルウェー、チューダープロサイクリング) 40:07
2位 アレッサンドロ・ボルゴ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
3位 アナス・フォレーヤ(デンマーク、ジェイコ・アルウラー)
4位 岡篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン)
5位 寺田吉騎(チーム右京)
6位 岡本隼(愛三工業レーシングチーム)
7位 イェノ・ベルクムース(ベルギー、ロット・アンテルマルシェ)
8位 本多晴飛(VC福岡)
9位 バティスト・ヴァディク(フランス、トタルエネルジー)
10位 コルビー・シモンズ(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)
text:So Isobe
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