今年で3年目を迎えたiRC TIRE 白馬グラベルミーティング。iRCが主催する2日間のグラベルキャンプイベントに3年連続、親子で参加中の自転車ライター、安井行生さんのレポートをお届けします。



メイン会場・スタート/ゴール地点となる「白馬グリーンスポーツの森」。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX

工作にお絵描きにレゴにピアノ。そしてもちろんゲームにYouTube。好きなことと言えばインドア系ばかりで、なにかに熱中することも少ない息子だが、「白馬いつだっけ」「白馬もうすぐだよね」「白馬楽しみだな」と、白馬については珍しくテンションが高い。

正式名称「iRC TIRE 白馬グラベルミーティング」。今年で第3回を迎えるこのイベント、安井親子は初回から参加している。

長野オリンピックの舞台になったこともあり、スキーのイメージが強い白馬村だが、今回宿泊したホテルでは、まだ雪がないもかかわらず英語や中国語が飛び交っていた。ホテルのスタッフさんに聞くと、雄大な景色や登山はもちろん、山々に囲まれた田園風景や日本古来の暮らしを目当てに来る観光客が多いのだという。

親子の参加者も多くなった。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX

もちろん我々自転車乗りにとっては、そして安井親子にとっても、白馬=グラベルだ。

日本のタイヤメーカーであり、BOKENシリーズなどのグラベルタイヤを製造するiRCが、「スポーツバイク初心者がグラベルという遊びにはまるきっかけになるイベント」をコンセプトに掲げて始まった白馬グラベルミーティング。グラベルタイヤを製造するメーカーとして、「ここ日本にグラベル文化を根付かせたい」という想いがある。

グラベルイベントというとハードになりがちだが、このイベントは違う。
特徴は以下の通り。

・2日間にわたって行われる
・1日目と2日目では違うコースとなり、2日間の総走行距離は約50km/総獲得標高は750m
・物足りないという参加者向けにはオプションコースが用意される
・メイン会場には地元に根差した多くのイベントブース/飲食ブースを設置
・「豚の丸焼き」「乗馬体験」「洗車体験」「朝ヨガ」「縁日イベント(けん玉チャレンジ・缶バッジ製作・タイヤ輪投げ・射的)」などのコンテンツが用意され、ライドの前後も楽しめる

今年のコースは、1日目が白馬の南を回る神城コース。距離約19km、獲得標高267m、グラベル率39%。2日目が白馬北部を巡る北城コースで、距離約20km、獲得標高237m、グラベル率24%だ。オプションコースは1日目が距離約28km、獲得標高443m、2日目が距離約32km、獲得標高580mとなる。

●1日目
受付をすると、このイベントチケット8枚がもらえる。これらを使って、ライドの前後にブースの飲食やイベント体験を楽しめるという仕組み。これだけあれば、結構飲めて食べれて楽しめる。 photo:安井行生

2026年10月3日、土曜日の朝9時。メイン会場である「白馬グリーンスポーツの森」に参加者が集まってくる。「白馬グリーンスポーツの森」はキャンプ、各種スポーツ、BBQ、釣りなどが楽しめるレクリエーション広場で、参加者のなかにはここでテント泊をする人もいる。

1日目は9~17時(ライドは11時~)、2日目は7時30分~15時(ライドは9時~)と、当日の朝に家を出ても間に合い、終了後には無理なく帰宅できるタイムスケジュールがうれしい。安井親子は、せっかくなので2泊することに。金曜に息子の学校が終わったらすぐに車で白馬に向かい、イベント前日から地元の食事とホテルの温泉と満点の星空を堪能した。始まる前から最高だ。

息子はベルギーナショナルジャージで出走。小5だが、赤とんぼを捕まえて走って見せに来るところはまだまだ子供。 photo:安井行生

初日、オープンの9時に会場に行くと、昨年の白馬グラベルで仲良くなった松本ファミリーに再会。パパとは他のイベントで何回か会っているが、子供たちとは1年ぶり。大きくなっていてびっくりする。しかし素直でいい子たちであるところは全く変わっていなかった。

安井親子のバイクは昨年と同じ。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX

息子はシクロワイアードの綾野編集長から譲り受けた名車リッチー・P-23(詳しくはこちら https://note.com/rin_kaku2025/n/nb610dd6a6798)。パパはダボスのネオランドナー、D-604。

僕のウエアなんてどうだっていいのだが、今年はついに脱レーパン。ハーフパンツで走った。コースを甘く見ているということではなく、そのくらいのテンションでも楽しめるということである。なんならフラペでもいいかもしれない。

山の国である日本には多種多様なグラベルがあるが、「雄大な山岳に囲まれた“日本の原風景”たる田園の中の砂利道を走る」という白馬のグラベルは、白馬にしかない雰囲気だと感じる。距離は短いけれど、これを味わうために来る価値がある。 photo:安井行生

初日は、白馬村の南端から湧き出ている姫川沿いを南下。ちなみに、この姫川は白馬村から新潟県の糸魚川市まで総延長約60kmもある大河だが、その源流となる湧き水は国道や民家のすぐ近くにある。これは、一級河川の源流としては大変珍しいのだという。

両日ともコースの途中に2ヶ所のエイドステーションが設けられており、地元の食材を使った補給食とドリンクが楽しめる。息子は初年度の手作りジェラートと2年目の五平餅を今も覚えており、「あれは美味しかった」と言う。ただでも美味しい地元の名物なのに、白馬の大自然のなか、最高のライドの途中に食べるのだから、脳に深く刻み込まれるのだろう。

初日、1回目のエイドステーションはクロスカントリー競技場であるスノーハーブの広場。世界一流の選手たちをも唸らせた難コースで有名だというが、今日はそんな雰囲気は微塵もなく、グラベル乗りたちがみんなでのんびり。 photo:安井行生

富山県高岡市のショップ、バイシクルランドM-2は白馬グラベルミーティングの常連。常に笑顔で白馬を楽しむ姿が印象的だった。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX
ここでは新鮮なプチトマトと、ロッヂ五竜のおかみ特製だという甘納豆入り紫米おにぎりが提供される。見た目はただのおにぎりなのに……。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX



これがすさまじく美味しかった。余裕であと5個はいけた。子供たちも目を丸くして「うまっ!」とあっと言う間に完食。 photo:安井行生

photo:安井行生

白馬はちょうど稲刈りの時期。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX
子供&ファミリーでの参加者が多いのも白馬グラベルミーティングの特徴。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX



2つめのエイドステーションでは、ほくほくで美味しい豆腐ドーナツと、初回から食べている白馬農場の手作りジェラート。このジェラートはいくつかの味から選べるのだが、子供たちは手堅いチョイスをするので、「取材にはある程度の冒険も必要なんだ」とライターの心得を示すべく一番予測不能なトマトバジル味を選んだら、これも思いのほか美味しかった。親子で一口ずつシェアしながら堪能する。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX

チームの仲間とジェラートを口に運びながらおしゃべり。大人になると日常生活で地べたに座ることなんてほとんどなくなる。貴重な経験かも。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX
みんな笑顔。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX



今年の最年少参加者はなんと5歳!シングルギヤのキッズバイクで見事に完走。最後はママをちぎってゴールしたという。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX

「白馬グラベルミーティング」というイベントを象徴する一枚。 photo:白馬グラベルミーティング実行委員会

ライドが終わってもイベントは終わらない。会場にはさまざまなアクティビティが用意されており、特に子供たちにとってはむしろここからが本番。 photo:白馬グラベルミーティング実行委員会

1回目から参加してくれている白馬の白馬、楓ちゃんに乗って会場を一回りする乗馬体験は今年も人気。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX
ライド後、メイン会場で腹を満たす。 photo:白馬グラベルミーティング実行委員会



白馬の精肉店「大国屋」が主催する白馬豚の丸焼きイベントは白馬グラベルの定番行事に。ライド後の参加者全員に無料で振舞われる。目の前で時間をかけてじっくりと焼かれた豚を、感謝しながらいただく。こんな贅沢な経験はない。 photo:白馬グラベルミーティング実行委員会

白馬グラベル初登場は、長野県を中心に活動する西アフリカの音楽とダンスのコミュニティ、サブニュマ(Sabunyuma)ファミリーによるダンスと演奏。 photo:白馬グラベルミーティング実行委員会

最初は「なんで白馬でアフリカンドラム……?」と戸惑い気味だった参加者も、徐々にそのリズムに引き込まれ、最後はみんな輪になって踊った。サブニュマの皆さんはスタート前とゴールでも大声援を送ってくださった。 photo:安井行生

豪華賞品がもらえるじゃんけん大会も大いに盛り上がった。 photo:白馬グラベルミーティング実行委員会
今年は1日目の夜にアフターパーティーが開催された。自転車で走るだけでなく、参加者同士や地域の方々とのコミュニケーションの場となり、白馬のローカルカルチャーを味わう機会となった。 photo:安井行生




●2日目
2日目、空に薄雲はかかっているが、気温・湿度ともにこれ以上ないほど快適。今日は白馬村の北側を巡る。

両日ともにライド前は朝ヨガが行われる。 photo:白馬グラベルミーティング実行委員会

スタート後は、北アルプスから流れ出る清流、平川沿いのグラベルを上る。何度も来ているがここの景色と道は最高。 photo:白馬グラベルミーティング実行委員会
ここではグリーンベルファームのシャインマスカットが振舞われた。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX



御神木は樹囲10.8m、高さ41m、樹齢推定1000年以上の県内有数の巨木である。思わず見惚れる。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX

巨木の歴史に思いを馳せる大人たちを横目に、子供たちは古くから伝わるグリコじゃんけんで大騒ぎ。とにかく自由なイベント。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX
ときにはこんな泥んこセクションも。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX



2日目のハイライトは、白馬連峰から流れてくる松川沿いの走りやすい道と、白馬の山々を見渡すことができる松川橋。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX

過去2回の開催で得られた要望を反映し、コースはより安全により走りやすく見直されたという。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX
白馬村のシンボル、スキージャンプ競技場の脇を通る。 photo:白馬グラベルミーティング実行委員会



2日目、最後のエイドステーションでは、呑者屋の白馬産信州おやきがお出迎え。数種類の具が選べるが、筆者はかぼちゃを選択。深みのある甘さが胃と心に沁みる。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX

童心で水たまりに突っ込む。いい笑顔! photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX
初日同様、ライド後はチケットで肉、ハンバーガー、ピザ、クレープ、うどん、ハンドドリップのコーヒー、クラフトビールなどを楽しむ。 photo:GRAVELROADHACK編集部 imao/chagenX



グラベルバイクを多数ラインナップするリドレーも出展。ASTR RS、ASTR、カンゾーアドベンチャーなどの試乗車が用意されていた。写真のYUNGSTR(ヤングスターと読む)は、小柄なライダーのために設計されたオールロード。純粋なグラベルバイクではないが、女性や子供の参加者が多い白馬グラベルでは注目を集めていた。 photo:安井行生

若手女性ビルダー、赤松 綾さん手によるAYA BIKESでの参加者も。他社のハイエンドカーボンバイクも複数所有するというが、「小柄なのでオーダーフレームに乗るべきですよ、と綾ちゃんに言われてね」とのこと。 photo:安井行生
メインスポンサーであるiRCは今年で100周年を迎える。それを記念して、26インチのMTBタイヤ、「CLAW Series COMP Lite(クロウシリーズ コンプライト)」を限定で復刻。1980年代、MTB黎明期に世界のトップライダーたちと共に生み出されたCLAW COMPは、iRCのオフロードタイヤ史を語る上で欠かせない存在。当時の図面を基に、トレッドパターンを忠実に再現したという。26×2.125のみの限定生産。 photo:安井行生



出展者も楽しむ白馬グラベル。オーストリッチを展開する東産業の伊美さんはD-604で快走。 photo:安井行生
懐かしいガープのMTB仕様で会場に現れた方も。参加はしていないが面白そうなので遊びに来たという。こういうことができるのも白馬グラベルのいいところ。 photo:安井行生



オリジナルツーリングバイクブランドのダボスや、ウルフトゥースからスピンアウトしたフレームブランドであるオッツォを取り扱うフカヤは、白馬グラベルとの相性が抜群にいい問屋。担当者はそれぞれダボス・D-604とオッツォ・フェンリルスチールでランデブー。 photo:安井行生


2日目、最後の参加者がゴールしたあと、全員で集合写真をとり、主催者が締めの挨拶を終えた瞬間、雨がぽつぽつと降り始めた。奇跡のようなタイミングだった。

「こういうイベントは貴重」
「白馬グラベルみたいなイベントがなくなると困る」
「規模は小さいけど、続けてほしい」

走り終えたライダーに話を聞くと、必ずと言っていいほどこのような答えが返ってきて、参加者に愛されていることが伝わってきた。

走り切った!とかタイムが縮んだ!とか誰それに勝った!とか、そういう感動を与えてくれるイベントは多い。

こぢんまりとしたイベントなので、メーカー担当者とじっくり話し込むことができる。 photo:安井行生
会場には洗車ブースも。イベント後はバイクを車に積んで帰るため、これは非常にありがたい。安井親子のバイクは来たときよりも綺麗になった。 photo:安井行生



しかし白馬グラベルミーティングはちょっと違う。子供や家族や仲間と一緒にいい田舎道を走り、ぼーっとしたり談笑したり子供がはしゃいでいるのを眺めたりしながら、白馬岳から下ってきた風が頬を撫でるのを感じ、芝生の上でゆったりとした時間の流れに身をゆだねていると、しみじみと幸せだなあと感じる。

自転車がある人生ってなかなかいいじゃないかと思える。白馬グラベルミーティングとはそういうイベントである。


白馬グリーンスポーツの森には各種遊具があるので、子供たちは遊ばせておき、パパはビールやグルメを楽しむ、というファミリーも。幸せな時間が流れる。 photo:安井行生

最後はメインスポンサーであるiRCの設立100周年を記念して、参加者で人文字を作った。 photo:白馬グラベルミーティング実行委員会

「ここ日本にグラベル文化を根付かせたい」という想いによって始まった白馬グラベルミーティング。今年で3回目とまだ若いイベントだが、参加者の心には「あの日あのとき、白馬で自転車を楽しんだ記憶」が深く刻まれていると思う。

特に子供たち。弾けるような笑顔で走り、遊び回っていた彼らは、例えすぐにはコアなサイクリストにはならなくても、彼らの中に埋め込まれた「あの白馬の想い出」がいつかよみがえって、自転車の世界に戻ってきてくれるはずだ。

白馬グラベルミーティングとは、そういうイベントである。



大会実行委員長・原知義さんインタビュー

大会実行委員長・原知義さん(白馬MTBクラブ/北アルプス自転車協議会) photo:安井行生
このイベントは競技志向ではなく、「のんびりと走りながら、白馬の自然とグラベルを楽しんでもらうこと」が目的です。できるだけたくさんの若いライダーや子供たちに来てもらいたいと思っており、距離を伸ばすとか難易度を上げる方向にはいきません。今後もそこは変えないつもりです。
今年は、初心者やお子さんたちにも安全に楽しんでもらえるよう、コースの分かりやすさと安全性を見直しました。コースに設置する看板を増やしたり、できるだけ急な坂や荒れている場所を避けたり、先導者が付くグループライドを積極的に提案したりと、「誰もが安心して楽しめるグラベルイベント」にするために労力を割きました。

お子さんの参加者は年々増えていますが、もっとたくさん来てほしいですね。今はどのスポーツも子供が少なくなって、特に田舎では野球やサッカーのようなチームスポーツが成り立たなくなっています。自転車はその中でもマイナーなスポーツなので、少子化はより深刻でしょう。
だからこの白馬グラベルミーティングの「できるだけ敷居を低く、間口を広く」というコンセプトを変えるつもりはありません。来年は、参加者それぞれのレベルや目的に合ったグループライドの申し込みを事前にできるようにするなど、より楽しく魅力的なイベントにするつもりです。

text:安井行生
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