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今年もやってきました、「浪切バンク」岸和田競輪場。梅雨時期の開催のため、俗に「雨の宮杯」とも呼ばれるこの大会。しかし昨年に続き、期間中全てが晴れ予報。快晴の空の下、まずは6月19日(木)に行われたガールズケイリンのGI「パールカップ」決勝の模様をお送りしよう。レースリポートの後にはガールズのトップレーサー、児玉碧衣選手(福岡)のバイクも拝見!

西入場門から入ると、高松宮記念杯競輪とパールカップの横断幕が出迎える。今年の文字は「鼓(永山玳潤・筆)」と「舞(逢香・筆)」 photo: Yuichiro Hosoda

大きな声で中野慎詞選手(岩手)を応援するキッズ photo: Yuichiro Hosoda
鮮やかな横断幕の周りを選手達が走る photo: Yuichiro Hosoda


春木駅から東入場門へと続く道は、地元の英雄・古性優作選手(大阪)の歴代勝利の横断幕が並ぶ古性ストリートだ photo: Yuichiro Hosoda

キッチンカーの塩ダレきゅうりで喉を涼ませながら場内取材

それにしたって梅雨はどこへ?連日30度を軽々超える暑さの中、岸和田の場内に並ぶキッチンカーにも涼を得ようとかき氷を求める人達が、次々と訪れていた。そんな中、かき氷のみならず、塩ダレきゅうりを売るお店を発見。その名も「DOT.KITCHEN」。お店のお姉さんに300円を渡し、一本頂いた。

氷水に浸けられてしっかり冷えたきゅうりを塩ダレにつけて食べると、喉元を通ったきゅうりがスッと身体を冷やしてくれるのがわかる。取材中さすがにかき氷を食べながら歩き回るわけにも行かないため、溶ける心配もなく、片手で素早く食べられるこれはありがたい。ひと時の涼を得て、また場内の取材へと戻った。

かき氷や冷やしそうめんなど、様々な涼食を提供していた「DOT.KITCHEN」 photo: Yuichiro Hosoda
にこやかに塩ダレきゅうりを手渡してくれたDOT.KITCHENのお姉さん photo: Yuichiro Hosoda


暑さを和らげ、雨風を避けられる屋根付きスタンドがあるのも競輪場の良いところ photo: Yuichiro Hosoda

場内の所々には無料のドリンクサーバーがある。暑いので、水分補給を忘れずに photo: Yuichiro Hosoda
東スタンドの裏手には、龍虎の姿を取り入れた書作品も飾られていた photo: Yuichiro Hosoda


名実備えたガールズケイリンの人気選手、日野未来が引退を発表

日付は前後するが、パールカップ翌日・7月20日(金)の最終レース後、日野未来選手(114期、奈良)の引退が、本人による文章を通じて発表された。

アイドルからの転身は2018年のデビュー当時、怪我による低迷もあって懐疑的にも見られた事もあったが、努力を重ね、近年はGIをはじめビッグレースの常連となるほどのトップレーサーとなった。

仲の良い児玉碧衣(福岡)とともに6月20日(金)のトークショーに上がった日野未来(奈良)。この日の最終レース後に引退が発表された photo: Yuichiro Hosoda

6月21日(土)、引退報告のトークショーで、ファンの声援に涙を浮かべながら挨拶を行う日野未来(奈良) photo: Yuichiro Hosoda
元選手の白井美早子さんから花束を贈られた日野未来(奈良)。ともに近畿のガールズケイリンを盛り上げた二人 photo: Yuichiro Hosoda


目標にGI決勝進出、その先にあるガールズグランプリへの出場を掲げていたが、昨年もそれに届かず「夢はもうかなわないなと思いました」と綴り、引退を決断したようだ。「公営競技が大好きで、5月末に地方競馬の馬主資格が取れたのも、引退を決意した理由のひとつ」とも。

「選手としてはやりきりました。本当に悔いはないです」と続け、応援してくれたファンや師匠の佐藤成人選手(奈良)などに感謝し、締めくくっている。デビューから通算154勝、優勝20回を記録。パールカップ決勝と同日の第5レース・L級ガールズ選抜で2着。これがラストランとなった。

名実兼ね備え、ガールズケイリンを盛り上げた功績が色褪せることはない。日野未来選手、お疲れ様でした。

第5レースのL級ガールズ選抜を走る日野未来(奈良) photo: Yuichiro Hosoda

バックストレッチで先頭に立つ日野未来(奈良) photo: Yuichiro Hosoda
當銘直美(愛知)に差されるも、最後まで積極的なレースを見せ、2着で現役最終レースを終えた photo: Yuichiro Hosoda


当開催、GIともに三連勝 佐藤水菜が初制覇 パールカップ[GI]決勝

舞台をパールカップ決勝に移そう。予選と準決勝を東地区、西地区に分けて争われた当大会は、決勝においてついに東西地区の上位各3名+1名(東西準決勝4着のいずれかから規定により選抜)による頂上決戦となる。東西区分は以下の通り。

東地区:北日本・関東・南関東のいずれかに在籍する選手
西地区:中部・近畿・中国・四国・九州のいずれかに在籍する選手

ナショナルチーム所属選手の佐藤水菜(神奈川)と仲澤春香(福井)の2人が、ともに準決勝1着で決勝へ勝ち上がった photo: Yuichiro Hosoda

注目はもちろん、4月のオールガールズクラシックを制してここへ臨んだ2024ケイリン世界王者・佐藤水菜(神奈川)。1番車は苦手と語るも、後方の落車トラブルを尻目に予選を9車身差、準決勝でも6車身差をつけて2着以下の選手達を圧倒し、2連勝で決勝に駒を進めた。

ナショナルチームに所属し、佐藤とも練習を共にする仲澤春香(福井)がGI初出場で決勝進出を決め、2番車。GI常連の実力派・尾崎睦(神奈川)が3番車。こちらもGIで初の優出、若干22歳の竹野百香(三重)が4番車に。

5番車には佐藤とナショナルチームで鎬を削った梅川風子(東京)、2022年ガールズGP覇者の柳原真緒(福井)が6番車、昨年同レース2着の奥井迪(東京)が準決勝4着から選抜され、7番車に収まった。

第5レース後の特別選手紹介に並んだ、パールカップ決勝進出選手たち photo: Yuichiro Hosoda
3番車・尾崎睦(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda


4番車・竹野百香(三重) photo: Yuichiro Hosoda
5番車・梅川風子(東京) photo: Yuichiro Hosoda


6番車・柳原真緒(福井) photo: Yuichiro Hosoda
7番車・奥井迪(東京) photo: Yuichiro Hosoda

車番 選手名 期別 級班
1 佐藤水菜(神奈川) 114期 L1
2 仲澤春香(福井) 126期 L1
3 尾崎睦(神奈川) 108期 L1
4 竹野百香(三重) 124期 L1
5 梅川風子(東京) 112期 L1
6 柳原真緒(福井) 114期 L1
7 奥井迪(東京) 106期 L1
レース開始の号砲とともに、最初に前へと出たのは2番車・仲澤。ここへ先行策を得意とする奥井が外から被せ、Sを取った。3番目には佐藤が入るも、外に竹野が並走。この状態が2周目を終える頃まで続いた。最終的に3周目へと入ったところで佐藤が前を譲り、竹野が3番手、佐藤が4番手となる。

スタート直後、先行策を狙う奥井迪(東京)がSを取りに行く photo: Yuichiro Hosoda
仲澤春香(福井)の直後・3番手を狙う竹野百香(三重)が佐藤水菜(神奈川)と並走する photo: Yuichiro Hosoda


全周回の半分を終え、3番手に竹野百香(三重)が収まり、ようやく並びが決まった photo: Yuichiro Hosoda

3周目となる赤板周回は、先頭の奥井から車間を空けながら2人ずつの塊が出来た。2番手より仲澤、竹野、そこから佐藤と尾崎、最後方に梅川、柳原と縦に並ぶ。佐藤は後ろを頻繁に振り返り、後方の動きを警戒。バックストレッチで先頭誘導員が離れる頃、2名ずつの車間はさらに空き、およそ2車身ほどに。

後方の梅川を意識しながら「自力の選手が多かったので、今日は自分が最初に仕掛けないと」と考えていた佐藤が4コーナーで踏み上げると、ワンテンポ遅れて先頭の奥井も脚の回転を上げて先行。しかし佐藤は前を行く仲澤と竹野をあっと言う間に捲り切って最終周回に入ると、1センター付近で早くも奥井を捉えて先頭に立った。

ジャンが鳴る中、仲澤春香(福井)が奥井迪(東京)との車間を大きく空ける photo: Yuichiro Hosoda

4コーナー出口、早くも先頭を行く奥井迪(東京)の後ろに佐藤水菜(神奈川)が迫る photo: Yuichiro Hosoda
最終周回の1センターで佐藤水菜(神奈川)が先頭に立つ photo: Yuichiro Hosoda


脚が一杯になった奥井は2コーナー出口で尾崎にもかわされ後退。さらに外からは梅川が捲って来て、尾崎と一時並走する。尾崎はここで譲らず、梅川を上回る脚でこれを退け、先頭の佐藤にジリジリと迫っていく。内からも竹野が迫り、直線終盤で梅川をかわし3番手に。

その2人の追撃は届かず、「なんとか抜きたかったんですけど、抜くどころか踏み直された」と後に悔しがった尾崎睦に、佐藤水菜が1車身差をつけてフィニッシュ。パールカップ初出場にして初優勝を果たした。3着はこのレースでただ一人11.4秒の上がりタイムをマークした竹野百香。

佐藤は、昨年11月の競輪祭女子王座戦、今年4月のオールガールズクラシックに続きGI三連続連勝。当開催では初日から三連勝で完全優勝を遂げた。

バックストレッチで佐藤水菜(神奈川)の後を追う尾崎睦(神奈川)に梅川風子(東京)が並びかけていく photo: Yuichiro Hosoda
尾崎睦(神奈川)は速度を緩めず、梅川風子(東京)の捲りを封じる photo: Yuichiro Hosoda


先頭でフィニッシュラインを駆け抜け、頭上に拳を掲げる佐藤水菜(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda

ラスト1周の勝負について佐藤は「発走するまで1周半行くつもりだったので、半周短くなった分、気持ちが籠もった1周になった。(最後の)4コーナーからは、ない脚を絞ってゴール線に向かって頑張りました。」と話す。

後ろに尾崎らが迫ってきたことについては「自分もメチャクチャ踏んでるんですけど、それ以上に後ろの選手が踏んでくるのがわかったので、気持ちで乗り越えなきゃなと思いました」と、決して楽な勝負ではなかった事を言葉で表し、次回GIとなる女子オールスター競輪に向けて気持ちを新たにしていた。

カメラ目線でガッツポーズを決めながら敢闘門へ帰ってきた佐藤水菜(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda
5着に敗れ、悔しそうに唇を噛みながら仲澤春香(福井)が引き上げる photo: Yuichiro Hosoda


シンガーソングライターのchayさんとともに記念撮影に応じる佐藤水菜(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda
岸和田の空へ向けて賞金ボードを掲げる佐藤水菜(神奈川) photo: Yuichiro Hosoda


笑顔で声援に応えながら佐藤水菜(神奈川)が表彰式を去る photo: Yuichiro Hosoda
パールカップ[GI]決勝 結果
車番 選手名 級班 着差 上りタイム
1着 1 佐藤水菜(神奈川) L1 11.7秒
2着 3 尾崎睦(神奈川) L1 1車身 11.6秒
3着 4 竹野百香(三重) L1 1/2車身 11.4秒
4着 5 梅川風子(東京) L1 1/2車身 11.7秒
5着 2 仲澤春香(福井) L1 1/2車身 11.7秒
6着 6 柳原真緒(福井) L1 1車身 11.7秒
7着 7 奥井迪(東京) L1 5車身 12.3秒

あなたの自転車見せてください 〜ガールズGP三連覇の女王・児玉碧衣編〜

11回目を迎えた今回は、人気、実力ともにガールズケイリンのトップクラスに君臨する児玉碧衣選手(福岡)が登場!児玉選手はガールズグランプリを2018年に制すると、2020年まで三連覇。その後もガールズケイリンを牽引する存在として実力を示し続け、一昨年はパールカップ初代女王に輝き、昨年のオールガールズクラシックでも優勝を遂げている(昨年の記事は→こちら)。

児玉碧衣選手(福岡)の相棒は、幾多の勝利を共にしたブリヂストン・アンカーTR9 photo: Yuichiro Hosoda

フレームは、他の選手が2021年にデビューしたブリヂストン・アンカーTS9に乗り変える中、前モデルのTR9を使い続けている。すでに8年ほど乗っているそうだ。TS9は何度かレースに乗ったこともあるそうだが、フレームが持つ性格、硬さなどが合わなかったようで「相当なパワーがないと乗れないなと思い、すぐ降りてしまいました」とのこと。

ポジションは決まった位置があり、時間がたつと勝手にサドルが下がったりするため、微調整を師匠の藤田剣次選手(福岡)にやってもらっているのだとか。「特に開催中は(競輪場に)送りっぱなしなので、開催の間が空いた時は一度(地元の)久留米に戻して、師匠に調整してもらっています」開催中も自分でポジションをいじることはないと言う。

笑顔を絶やさず撮影に応じてくれた児玉碧衣選手(福岡) photo: Yuichiro Hosoda
ガイダンスルーム「K-SPOT」には、第1回パールカップを勝った児玉碧衣選手(福岡)の賞金ボードが飾られている photo: Yuichiro Hosoda


使い込まれたセッレ・イタリア X-1 LADY FLOW FEC ALLOY photo: Yuichiro Hosoda
ミスディナ・ジャポンのアスリートケアブランド「クリア」のステッカーが貼られたシートポスト photo: Yuichiro Hosoda


フレーム同様に年季の入ったサドルは、セッレ・イタリア製X-1 LADY FLOW FEC ALLOY。「新しいサドルだと滑るので、これをずっと使っています。このサドルはもう売っていないから、使えるまで永遠に使うつもりです」

フォークとシートステーにあるウサギとイヌを模したロゴについて尋ねると、ブリヂストンのスタッフの方を経由し紹介されたデザイナーさんにお任せしたものだとか。「うさちゃんとわんちゃん(ダックス)を飼っていて、うさちゃんはもう亡くなっちゃったんですけど、その身体にAOIと選手登録番号を合わせて。お気に入りです」と教えてくれた。

ワンちゃんのボディにAOI 15080のマークが入ったシートステー photo: Yuichiro Hosoda
ウサギさんのボディにAOI 15080と入ったロゴマーク photo: Yuichiro Hosoda


ハンドル幅は370mmと広めのスタンスを取る photo: Yuichiro Hosoda
グリップは定番のソーヨー ハイグリップ photo: Yuichiro Hosoda


ハンドル幅は男子でも340mmとする選手が多い中、370mm。ステムはアップライズしたものを使用。スポークは前を結線し、後ろはフリー。タイヤも前後で変えている。こちらも師匠と大師匠(楢原剛さん、2009年引退)がこの形にしてくれたと話す。「他の選手も跨ってるんですけど、クセ強いってよく言われます」と笑う。

このセッティングの始まりについて聞くと、デビューした年、バンクを100周回する練習をしていたそうで、「そこでどうやったら楽に乗れるか」と、サドルに座る位置を変えたり、ハンドルを持つ位置を変えたりと試行錯誤していたら、それを見ていた師匠が「ああ、こうやって乗りたいんだ」と理解して、仕上げてくれたのだとか。

最後に自ら拘った部分を聞くと、フレームカラーだと教えてくれた。ネイビーのつや消しをベースに、ロゴをシルバーに。

スクエアテーパーのデュラエースクランクに、ペダルはMKS CUSTOM NUEVO。チェーンリングは49T photo: Yuichiro Hosoda
リアコグは13T。49✕13Tでギア比3.77としている photo: Yuichiro Hosoda


後輪タイヤはソーヨーRED R-II photo: Yuichiro Hosoda
前輪は、ヤスリ目パターンが付いたソーヨーGOLD STARを履く photo: Yuichiro Hosoda


自ら指定し、つや消しネイビーにシルバーロゴを奢ったTR9 photo: Yuichiro Hosoda

児玉選手と話していて感じられたのは「これと決めたら変えない」と言う拘り、そして彼女を支える師匠をはじめとした周りの方々への厚い信頼だ。「周りに恵まれてるなって、つくづく思いますね」と語った言葉の中には、強い感謝の気持ちが籠もっていた。

ガールズGIは次回、女子オールスター競輪が8月の宇都宮で開催を待つ。絶大な人気を誇る児玉選手は、ファン投票で9年連続の1位に選出され、パールカップの雪辱を目指す。児玉選手、暑い中取材に応じてくださり、ありがとうございました。

この日の第7レース・L級ガールズ特選を6番車で走り、1着で開催を締めた児玉碧衣選手(福岡) photo: Yuichiro Hosoda



次の「競輪場へ行こう!」は同じく岸和田で行われた男子GI「高松宮記念杯競輪」の決勝をお送りする。J SPORTSのロードレース実況などで馴染みある小俣雄風太さんをゲストライターにお招きし、いつもと違った場内レポートも。お楽しみに!

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パールカップ&高松宮記念杯競輪 優勝選手サイン入りクオカード

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