ピナレロの新型Fシリーズがデビューする。トップモデルのDOGMA F譲りのテクノロジーに、最大32mm対応のクリアランス。「1台で勝つ」哲学を受け継ぐ、ベスト・イン・クラスのピュアレーサーが刷新された。開発者の言葉とともに現地レポートをお届けする。

イタリア・コネリアーノの丘で開催された発表会。ホテルのロビーには、これまでジロ・デ・イタリアが通過した記憶が飾られていた photo:So Isobe 
ジロ・デ・イタリアに登場する激坂「ムーロ・ディ・カ・デル・ポッジオ」の頂上にあるホテルで発表会が行われた photo:Pinarello

Fシリーズの中核を担うのが、このF7。T900カーボンのフレームにシマノULTEGRA、MOSTのULTRAFAST 45ホイールを装備する photo:So Isobe
DOGMA GRとGREVIL F。2台のグラベルマシンが主役として華やかにお披露目された、イタリア・コネリアーノの丘に囲まれたピナレロの2026モデル発表会。しかし、あの日明かされたのはそれだけではなかった。ピナレロが静かに、しかし確かな手応えとともに発表したもうひとつの進化。それが新型「Fシリーズ」である。
ピナレロがロードモデルの総刷新と共に、ラインナップをコンペティションモデルの「Fシリーズ」とエンデュランス(非競技者向け)モデルの「Xシリーズ」に振り分けたのが2年半前。DOGMA Fに次ぐレーシングバイクとして人気を得ていたFシリーズが、2026モデルで新たなフェーズへと突入する。今回のフルモデルチェンジでは、昨年デビューしたDOGMA Fから継承したテクノロジーを各所に反映。美しさと性能をさらに引き上げたプレミアムラインナップへと切り替わった。

会場に並んだFシリーズ。開発者のマッシモ・ポロニアート氏へ質問が飛ぶ photo:Pinarello
「我々の目標は、DOGMA Fのメッセージをすべてのライダーに届けることです。エアロでも軽さでも、1台で全ての性能を満たすこと。それがピナレロの哲学。FシリーズはDOGMAのスピリットをそのまま引き継いでいます」と、プレゼンターを務めたフェデリコ・ズブリッサ氏は言う。筆者を含め、世界中から集まったジャーナリストたちの前で、DOGMA純血のレーシングモデルの詳細が明かされた。

艶やかで、美しく、速い。ピナレロのDNAが息づく普及モデルがFシリーズだ photo:Pinarello
多くのブランドが「エアロロード」と「軽量クライミングバイク」という2系統を展開し、北米ブランドはそれらを1本化する流れにあるが、一方でピナレロは遥か昔から1モデル体制で勝負してきた。DOGMAがそうであるように、Fシリーズもまたその思想を踏襲する。平坦での伸び、登坂での軽さ、下りでの安定性とコーナリングでの切れ味。レース志向の走りを好むユーザーがバイクに求めるあらゆる要素を、1台に統合する。それがFシリーズ最大の特徴だ。
先述したように、今回のFシリーズではDOGMA Fの最新世代から数多くの構造設計が活かされている。もっとも大きな変化のひとつがヘッドチューブからダウンチューブ〜ボトムブラケットに掛けての、いわゆる「パワーライン」と呼ばれる部分の刷新だ。
ヘッドチューブは他社に先駆けてDOGMA F8時代に採用された、前に突き出したエアロシェイプを継承。もちろん現状維持ではなく、軽量化と空力向上を図るためにDOGMA Fの最新モデルから継承された楕円断面の新型ステアリングコラム「ETICRヘッドセット」と小径ヘッドベアリング採用し、ヘッドチューブの横幅をスリム化(具体的にはダイエット量は8mm)。当然ヘッドのスリム化は剛性低下を招く要因だが、形状とカーボンレイアップの工夫によってむしろ強化に成功しているという。

コンパクトなリアバック。瞬間的なダッシュに対応する photo:So Isobe 
フロント周りのフレーム造形は、先代よりもメリハリの効いたアグレッシブなものに。 photo:So Isobe

ボトムブラケット周辺は圧倒的なボリューム。踏み心地はレーシングバイクそのものだ photo:So Isobe
2023年にメディアキャンプに参加して乗り込んだ先代Fシリーズと比較すると、横から眺めたときのボリュームアップは顕著だ。ピナレロらしいメリハリの効いたデザインはよりグラマラスになり、見た目のインパクトは大きい。一方で、バイクの正面や真後ろから眺めると印象はがらりと変わる。各チューブはカミソリのように薄く、空気を切り裂くかのようだ。動的性能と空力性能、そして美しさをすべて両立させるというピナレロの設計思想が色濃くにじみ出ている。
更にBBまわりにはDOGMA Fにも採用されているAero Keel BBを導入した。直線的なダウンチューブ下側のラインが前方に張り出し(3.5度)、その名の通り船の船底のような形状でエアロ性能と横剛性を両立。さらにはリア三角も再設計され、ペダリングパワーを無駄なく推進力に変える反応性の高いフレーム剛性が与えられているという。

「ONDA」の名前を継承し、性能と美しさを兼ね備えるフォーク。オフセットは43mmから47mmに伸ばされた photo:So Isobe
深く低いレーシングポジションを叶えるジオメトリーも含め、フレームの基本デザインはDOGMA Fに則っているが、異なるのはタイヤクリアランスだ。DOGMA Fの最大タイヤ幅が30mmだったのに対してFシリーズは最大32mmを飲み込み、かつチェーンステー両側に一定以上の余裕を持たせている。ワイドタイヤとのマッチングを踏まえ、フォークのオフセットはDOGMA F同様に43mmから47mmに伸ばされている。カテゴライズとしてはレーシングマシンではあるものの、DOGMA以上にワイドタイヤを履かせてロングライドに連れ出すシーンも想定されている。
Fシリーズに含まれるラインナップは最上級モデルの「F9」から1つ飛ばしの奇数ナンバリングがつけられた「F7」、「F5」、「F3」、「F1」という合計5モデル。先代はF9からF5までの3モデルだけだったが、F3とF1が加わったことはユーザーにとって良い報せ。日本で展開されるのはF9、F7、F5、F1の合計4モデルだ。
5モデルのうち4モデルが同一金型で成形され、唯一F1だけは先代Fシリーズと同形状。その上で想定ユーザー層の違いを考慮して、それぞれには異なるカーボンレイアップが与えられている。

フレームは大きく分けて3種類。T900、T700、T600と使用されるカーボンで区分けされている photo:So Isobe

トップチューブにはピナレロからのメッセージ photo:So Isobe 
タイヤもMOSTのCOMPETITION。30Cで、オールラウンドに扱いやすい走り心地だった photo:So Isobe
F9とF7には高次元で剛性と軽量性をミックスした「T900」カーボンが投入され、F5にはT900に比べて積層が厚く柔軟性に富みながら十分な剛性を確保した「T700」カーボンが、F1には乗り心地を重視しエントリーフレンドリーな性格を与える「T600」カーボンだ。
ピナレロ Fシリーズ日本国内販売モデル
F9(T900カーボン/Dura-Ace Di2、7.4kg)
F7(T900カーボン/Ultegra Di2/Most UltraFast45の場合 7.8kg)
F5(T700カーボン/105 Di2、8.25kg)
F1(T600カーボン/105機械式)F1は先代モデルのフレーム。
「我々はミドル〜エントリーグレードだからといって手を抜くことはせず、どのモデルに乗ってもDOGMA Fに込めたものと同じメッセージを体感できるように最善を尽くしました」と言うのはプレゼンター。「それぞれのモデルは、限られた予算内で最高のパフォーマンスを求めるユーザーに向けたレーシングバイクです。平坦から山岳、スプリント、ダウンヒルまで全要素を満たすベスト・イン・クラスとして開発しています」とも。

DOGMA Fと同じTALON ULTRAFASTハンドルバーを装備する photo:So Isobe

TALON ULTRAFASTハンドルはドロップ部分の身幅が細い。握りやすさを考慮した設計だ photo:So Isobe 
ピナレロがプロデュースするULTRAFAST 45。フレームの良さを支える万能ホイールだった photo:So Isobe
今回のFシリーズは、明確にレーシングバイクとして設計されているが、それはプロだけに向けられたものではない。「積極的にトレーニングし、ライバルを打ち負かすために努力するライダーへ。予算に制限があっても、最高の性能を求める人たちのために、このFシリーズを届けたいんです」とプレゼンでは語られた。
そんなメッセージが込められた新型Fは、まさにDOGMA Fの魂を継いだもうひとつの主役。ハイエンドの象徴であるDOGMA Fのフィロソフィーや乗り味を、より多くのライダーに伝える。そのことを強く実感させるラインナップの刷新だ。

DOGMA Fの流れを汲む美しいスタイリング。細部にまでピナレロの美意識が宿る photo:So Isobe
DOGMA Fのフィロソフィーをそのままに、もうひとつの主役となるべく設計された新型Fシリーズ。次回は同じ発表会で実施された現地試乗会から、その実力の真価をレポートする。

ピナレロ F9(H200 FORMULA GREEN MATT) photo:Pinarello

ピナレロ F7(H210 ALABASTER WHITE SHINY) photo:Pinarello

ピナレロ F7(H211 STARRY RED SHINY) photo:Pinarello 
ピナレロ F7(H212 VICTORIA BLUE SHINY) photo:Pinarello

ピナレロ F5(H220 ETNA BLACK MATT) photo:Pinarello

ピナレロ F5(H231 ALABASTER WHITE SHINY) photo:Pinarello 
ピナレロ F5(H230 INTERSTELLAR GREY SHINY) photo:Pinarello

ピナレロ F1(H241 COMET SILVER SHINY) photo:Pinarello 
ピナレロ F1(H240 CARBON RED MATT) photo:Pinarello
DOGMA Fの血統を引くリアルレーシングモデルが総刷新



DOGMA GRとGREVIL F。2台のグラベルマシンが主役として華やかにお披露目された、イタリア・コネリアーノの丘に囲まれたピナレロの2026モデル発表会。しかし、あの日明かされたのはそれだけではなかった。ピナレロが静かに、しかし確かな手応えとともに発表したもうひとつの進化。それが新型「Fシリーズ」である。
ピナレロがロードモデルの総刷新と共に、ラインナップをコンペティションモデルの「Fシリーズ」とエンデュランス(非競技者向け)モデルの「Xシリーズ」に振り分けたのが2年半前。DOGMA Fに次ぐレーシングバイクとして人気を得ていたFシリーズが、2026モデルで新たなフェーズへと突入する。今回のフルモデルチェンジでは、昨年デビューしたDOGMA Fから継承したテクノロジーを各所に反映。美しさと性能をさらに引き上げたプレミアムラインナップへと切り替わった。

「我々の目標は、DOGMA Fのメッセージをすべてのライダーに届けることです。エアロでも軽さでも、1台で全ての性能を満たすこと。それがピナレロの哲学。FシリーズはDOGMAのスピリットをそのまま引き継いでいます」と、プレゼンターを務めたフェデリコ・ズブリッサ氏は言う。筆者を含め、世界中から集まったジャーナリストたちの前で、DOGMA純血のレーシングモデルの詳細が明かされた。
現行DOGMA F同様に進化+32mmタイヤを飲み込むクリアランスを獲得

多くのブランドが「エアロロード」と「軽量クライミングバイク」という2系統を展開し、北米ブランドはそれらを1本化する流れにあるが、一方でピナレロは遥か昔から1モデル体制で勝負してきた。DOGMAがそうであるように、Fシリーズもまたその思想を踏襲する。平坦での伸び、登坂での軽さ、下りでの安定性とコーナリングでの切れ味。レース志向の走りを好むユーザーがバイクに求めるあらゆる要素を、1台に統合する。それがFシリーズ最大の特徴だ。
先述したように、今回のFシリーズではDOGMA Fの最新世代から数多くの構造設計が活かされている。もっとも大きな変化のひとつがヘッドチューブからダウンチューブ〜ボトムブラケットに掛けての、いわゆる「パワーライン」と呼ばれる部分の刷新だ。
ヘッドチューブは他社に先駆けてDOGMA F8時代に採用された、前に突き出したエアロシェイプを継承。もちろん現状維持ではなく、軽量化と空力向上を図るためにDOGMA Fの最新モデルから継承された楕円断面の新型ステアリングコラム「ETICRヘッドセット」と小径ヘッドベアリング採用し、ヘッドチューブの横幅をスリム化(具体的にはダイエット量は8mm)。当然ヘッドのスリム化は剛性低下を招く要因だが、形状とカーボンレイアップの工夫によってむしろ強化に成功しているという。



2023年にメディアキャンプに参加して乗り込んだ先代Fシリーズと比較すると、横から眺めたときのボリュームアップは顕著だ。ピナレロらしいメリハリの効いたデザインはよりグラマラスになり、見た目のインパクトは大きい。一方で、バイクの正面や真後ろから眺めると印象はがらりと変わる。各チューブはカミソリのように薄く、空気を切り裂くかのようだ。動的性能と空力性能、そして美しさをすべて両立させるというピナレロの設計思想が色濃くにじみ出ている。
更にBBまわりにはDOGMA Fにも採用されているAero Keel BBを導入した。直線的なダウンチューブ下側のラインが前方に張り出し(3.5度)、その名の通り船の船底のような形状でエアロ性能と横剛性を両立。さらにはリア三角も再設計され、ペダリングパワーを無駄なく推進力に変える反応性の高いフレーム剛性が与えられているという。

深く低いレーシングポジションを叶えるジオメトリーも含め、フレームの基本デザインはDOGMA Fに則っているが、異なるのはタイヤクリアランスだ。DOGMA Fの最大タイヤ幅が30mmだったのに対してFシリーズは最大32mmを飲み込み、かつチェーンステー両側に一定以上の余裕を持たせている。ワイドタイヤとのマッチングを踏まえ、フォークのオフセットはDOGMA F同様に43mmから47mmに伸ばされている。カテゴライズとしてはレーシングマシンではあるものの、DOGMA以上にワイドタイヤを履かせてロングライドに連れ出すシーンも想定されている。
Fシリーズに含まれるラインナップは最上級モデルの「F9」から1つ飛ばしの奇数ナンバリングがつけられた「F7」、「F5」、「F3」、「F1」という合計5モデル。先代はF9からF5までの3モデルだけだったが、F3とF1が加わったことはユーザーにとって良い報せ。日本で展開されるのはF9、F7、F5、F1の合計4モデルだ。
5モデルのうち4モデルが同一金型で成形され、唯一F1だけは先代Fシリーズと同形状。その上で想定ユーザー層の違いを考慮して、それぞれには異なるカーボンレイアップが与えられている。



F9とF7には高次元で剛性と軽量性をミックスした「T900」カーボンが投入され、F5にはT900に比べて積層が厚く柔軟性に富みながら十分な剛性を確保した「T700」カーボンが、F1には乗り心地を重視しエントリーフレンドリーな性格を与える「T600」カーボンだ。
ピナレロ Fシリーズ日本国内販売モデル
F9(T900カーボン/Dura-Ace Di2、7.4kg)
F7(T900カーボン/Ultegra Di2/Most UltraFast45の場合 7.8kg)
F5(T700カーボン/105 Di2、8.25kg)
F1(T600カーボン/105機械式)F1は先代モデルのフレーム。
「我々はミドル〜エントリーグレードだからといって手を抜くことはせず、どのモデルに乗ってもDOGMA Fに込めたものと同じメッセージを体感できるように最善を尽くしました」と言うのはプレゼンター。「それぞれのモデルは、限られた予算内で最高のパフォーマンスを求めるユーザーに向けたレーシングバイクです。平坦から山岳、スプリント、ダウンヒルまで全要素を満たすベスト・イン・クラスとして開発しています」とも。



今回のFシリーズは、明確にレーシングバイクとして設計されているが、それはプロだけに向けられたものではない。「積極的にトレーニングし、ライバルを打ち負かすために努力するライダーへ。予算に制限があっても、最高の性能を求める人たちのために、このFシリーズを届けたいんです」とプレゼンでは語られた。
そんなメッセージが込められた新型Fは、まさにDOGMA Fの魂を継いだもうひとつの主役。ハイエンドの象徴であるDOGMA Fのフィロソフィーや乗り味を、より多くのライダーに伝える。そのことを強く実感させるラインナップの刷新だ。

DOGMA Fのフィロソフィーをそのままに、もうひとつの主役となるべく設計された新型Fシリーズ。次回は同じ発表会で実施された現地試乗会から、その実力の真価をレポートする。
ピナレロ F9

販売形式 | 完成車/受注発注 |
フレーム | T900 カーボン |
コンポーネント | SHIMANO DURA-ACE DI2 |
コックピット | TALON ULTRA FAST |
ホイール | MOST Ultra Fast45ホイール |
カラー | H200 FORMULA GREEN MATT |
税込価格 | 2,080,000円 |
ピナレロ F7



販売形式 | 完成車 |
フレーム | T900カーボン |
コンポーネント | SHIMANO Ultegra DI2 |
コックピット | TALON ULTRA FAST |
ホイール | FULCRUM R800 |
カラー1 | H212 VICTORIA BLUE SHINY |
カラー2 | H210 ALABASTER WHITE SHINY |
カラー3 | H211 STARRY RED SHINY |
税込価格 | 1,050,000円 |
ピナレロ F5



販売形式 | 完成車 |
フレーム | T700カーボン |
コンポーネント | SHIMANO 105 DI2 |
コックピット | CLAW ULTRA AERO E-TiCR ステム/JAGUER CLAW ULTRA ハンドル |
ホイール | FULCRUM R800 |
カラー1 | H220 ETNA BLACK MATT |
カラー2 | H230 INTERSTELLAR GREY SHINY |
カラー3 | H231 ALABASTER WHITE SHINY |
税込価格 | 720,000円 |
ピナレロ F1


販売形式 | 完成車 |
フレーム | T600カーボン |
コンポーネント | SHIMANO 105 メカニカル |
コックピット | TIGER TiCR アルミステム |
ホイール | SHIMANO WH-RS171 |
カラー1 | H240 CARBON RED MATT |
カラー2 | H241 COMET SILVER SHINY |
税込価格 | 470,000円 |
提供:カワシマサイクルサプライ
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