岐阜県美濃市で開催されたツアー・オブ・ジャパン第4ステージは、序盤から先行した5名が逃げ切ってのスプリント勝負となり、宇田川塁(愛三工業レーシングチーム)がロードレース初勝利を挙げた。総合首位はアレッサンドロ・ファンチェル (JCL TEAM UKYO)が維持している。



新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)の周りにファンが集まる photo:Satoru Kato
子供達の花神輿が練り歩く photo:Satoru Kato


ツアー・オブ・ジャパン4日目は、岐阜県美濃市でのステージ。国の重要建造物群保存地区に選定されている「うだつの上がる町並み」をパレードスタートし、長良川に沿って走る1周21kmの周回コースを6周する計137.3kmのレース。周回コース終盤に山岳賞が設定される登りがあるものの、それ以外はおよそ平坦なコースレイアウトだ。

「うだつの上がる街並み」のスタートラインに揃った選手達 photo:Satoru Kato

長良川沿いを行く集団 ©︎TOJ2025

集団スプリントに持ち込まれるスプリンターステージに位置付けられる一方、総合優勝を狙う選手・チームにとっては後半の山場を控えてのレストデイとされる。とは言え、昨年は逃げ切り優勝が決まったことで、このステージに対する考え方が若干変わってきている。

この日は美濃市で30℃を超える最高気温を記録する暑さ。早朝から気温が上がる中、平日にも関わらずスタート地点には多くの観客が集まった。

レース序盤から先行した5名の集団 photo:Satoru Kato

レースはリアルスタート直後から動いた。アイマン・チャヒヤディ (トレンガヌ・サイクリングチーム)、宇田川塁 (愛三工業レーシングチーム)、ヨン・クノレ (レンべ・ラド・ネット)ら3名が先行。そこに風間翔眞 (シマノレーシング)、カーター・ベトルス (ルージャイ・インシュアランス)が合流して5名の先頭集団が形成される。

1周目、5名を先行させたメイン集団はJCL TEAM UKYOがコントロール photo:Satoru Kato

リーダージャージのアレッサンドロ・ファンチェル(JCL TEAM 右京)直後に宇都宮ブリッツェンと岡篤志が続く photo:Satoru Kato

後続のメイン集団はリーダージャージを着るアレッサンドロ・ファンチェル擁するJCL TEAM UKYOがが先頭に立ってコントロール。総合優勝争いに影響のない5名の先行であることから差は一気に広がり、2周目には4分以上の差がつく。

3周目、山岳賞ポイントへの登りを行くメイン集団 photo:Satoru Kato

5周目、ワンティ・NIPPO・リユーズやキナンレーシングチームがメイン集団を牽引 photo:Satoru Kato

レース後半に入るとワンティ・NIPPO・リユーズ、シーキャッシュXボディラップがメイン集団のコントロールに加勢。終盤に入るとキナンレーシングチームが集団前方に入り、先頭集団との差を2分まで縮める。しかし最終周回に入ると追走のペースが鈍り、残り半周を過ぎても2分前後の差が残る状態。先行する5名の逃げ切りが濃厚になった。

残り100m付近から前に出る宇田川塁(愛三工業レーシングチーム) photo:Satoru Kato

宇田川塁(愛三工業レーシングチーム)がステージ優勝 photo:Satoru Kato

最後の登り区間に入ると宇田川とチャヒヤディが遅れるも、下り区間で追走して残り1kmを前に先頭集団に復帰。勝負は5名でのスプリントへ。牽制してる間に差を詰めてきたメイン集団が後方に迫る中、残り300mから始まったスプリントは、先行したクノレの背後から前に出た宇田川がまくりきって先着。日本人選手として初の美濃でのステージ優勝と同時に、自身初のロードレース勝利を挙げた。

美濃ステージ 表彰式 photo:Satoru Kato

宇田川塁 コメント

「登りで一回離れてしまっていっぱいいっぱいだったけれど、チームカーから小森(亮平)監督が叫んでくれたので気合い入れ直した。前が牽制してくれて追いつくことが出来たので、スプリント勝負になるなら自信があった。集団との差が縮まってきても逃げのメンバーは脚を持っていたので踏み直してペースを維持した。アタックが何度かあったけれど、ここで止めたら後悔するなと思って最後まで踏み切った。

小学生らに握手責めされる宇田川塁(愛三工業レーシングチーム) photo:Satoru Kato

最後は直線が長いので早がけに注意しつつ、他の選手より自信はあったので多少出遅れてもまくれる距離から行こうと考えていた。追いついた時に先行していた3名はきつそうな表情をしていたので、最後は焦らず冷静にスプリント出来たことが勝因だと思う。フィニッシュラインを先頭できった時は人生一番くらい叫んだ。これからチームメイトと喜びを分かち合いたい。

まだハードなステージが残っているが、地元に近い相模原でもう一度見せ場を作りたい」

アレッサンドロ・ファンチェル(JCL TEAM UKYO)がリーダージャージを維持 photo:Satoru Kato
ツアー・オブ・ジャパン2025 第4ステージ美濃 結果(137.3km)
1位 宇田川 塁 (日本、愛三工業レーシングチーム) 3時間9分35秒
2位 アイマン・チャヒヤディ (インドネシア、トレンガヌ・サイクリングチーム) +0秒
3位 ヨン・クノレ (ドイツ、レンべ・ラド・ネット)
4位 風間 翔眞 (日本、シマノレーシング)
5位 カーター・ベトルス (オーストラリア、ルージャイ・インシュアランス)
6位 窪木 一茂 (日本、愛三工業レーシングチーム) +16秒
7位 ジョルジェ・ジュリッチ (セルビア、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)
8位 孫崎 大樹 (日本、ヴィクトワール広島)
9位 アンドレア・ダマト (イタリア、JCL TEAM UKYO)
10位 石原 悠希 (日本、シマノレーシング)
個人総合順位(第4ステージ終了時)
1位 アレッサンドロ・ファンチェル (イタリア、JCL TEAM UKYO) 8時間51分0秒
2位 マティアス・ブレンホイ (デンマーク、トレンガヌ・サイクリングチーム) +16秒
3位 岡 篤志 (日本、宇都宮ブリッツェン) +33秒
4位 ニコロ・ガリッボ (イタリア、JCL TEAM UKYO) +35秒
5位 アンドレア・ダマト (イタリア、JCL TEAM UKYO) +39秒
6位 マーク・スチュワート (イギリス、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) +44秒
新人賞 マクサンス・プラス(ワンティ・NIPPO・リユーズ) photo:Satoru Kato
RTA賞 岩村元嗣(日本ナショナルチーム) photo:Satoru Kato


ポイント賞 アレッサンドロ・ファンチェル (イタリア、JCL TEAM UKYO)
山岳賞 ニコロ・ガリッボ (イタリア、JCL TEAM UKYO)
新人賞 マクサンス・プラス(ベルギー、ワンティ・NIPPO・リユーズ)
RTA賞 岩村 元嗣(日本、日本ナショナルチーム)
チーム総合首位 JCL TEAM UKYO 26時間34分42秒



ツアー・オブ・ジャパンは前半戦を終え、明日からは総合優勝争いが動き出す後半戦へ突入する。第5ステージの信州飯田は総合順位がシャッフルされるハードステージとなることが多い。とは言え、現時点で総合10位以内に3名を入れるJCL TEAM UKYOの強力なメンバーを崩すのは難しい課題になりそうだ。


text&photo:Satoru Kato