富士ヒルで初優勝を挙げた石井雄悟(MASXSAURUS)ら、男女選抜クラスの表彰台獲得バイクを紹介。日本一のホビークライマーはどんなバイクに乗っているのか?こだわりやセッティングに注目してほしい。
男子選抜優勝:石井雄悟(MASXSAURUS)/ディア PA-AFO

石井雄悟(MASXSAURUS)とディア PA-AFO photo:So Isobe
持ち前の「攻める走り」で富士ヒル主催者選抜クラス初優勝を遂げた石井雄悟(MASXSAURUS)のバイクが、DARE(ディア)の新型モデルである「PA-AFO」。ヒルクライムだけではなく、開催が迫るニセコクラシックや全日本選手権など、メインとして取り組むロードレースを走るために組み上げたばかりの一台だという。
「バイク自体は発表されて2ヶ月くらいの新モデルです。人と違うバイクに乗りたいっていうのが大きいですね。あと、このカラー(Elemental Black)が気に入ったのも大きかったです」と石井は機材チョイスの理由を話す。「見た目は結構派手なんですが、このフレームは意外と硬さが目立たず乗りやすい。硬い乗り味にしたくなかったので、パーツも含めて乗りやすさを重視したセットアップにしています」とも。

組み上げたばかりと言うニューバイク。乗り味も気に入っているという photo:So Isobe

トライピークのプリロードリングやプーリーは全てオレンジで統一 photo:So Isobe 
ブレーキローターはBRAKCO(ブラッコ)、ロックリングはトライピーク photo:So Isobe
ホイールも乗り味が硬すぎないジップ 353 NSWで、ハブにはジェイテクトの鬼ベアリングをインストール。タイヤはコンチネンタルの軽量モデルであるGRAND PRIX 5000 TT TR(28)だ。
コンポーネントはシマノDI2をメインにスラム REDのクランク+パワーメーター、トライピークのビッグプーリーやボトムブラケットなど、様々なチューニングパーツを取り付けている。「パーツ構成はめちゃくちゃなんですけど、富士ヒルではエアロ性能も軽さも大事なので軽量パーツを取り付けてました」と言う。

ホイールは踏み心地が良いというジップ353 NSW。タイヤはコンチネンタルのGRAND PRIX 5000 TT TR(28) photo:So Isobe 
シートポストには「ただの飾りです」(???) photo:So Isobe

富士ヒル新チャンピオン。当面の目標はニセコクラシックやエリートで出場する全日本選手権だ photo:So Isobe
台湾ブランド、BRAKCO(ブラッコ)のブレーキローターは宇都宮ブリッツェンの選手たちも使う製品で、放熱フィンが目立つブレーキパッドは同社の試作品。トライピーク製のローターロックリングやボトムブラケット、プーリーはオレンジでコーディネイトするなど、細部までこだわりが詰め込まれている。
完成車重量は6.8kg+αとUCI規定ピッタリ。ボリューム感のある見た目に反して非常に軽くセットアップされている。
男子選抜3位:成田眸(mkw)/キャノンデール SuperSix EVO Hi-MOD

成田眸(mkw)のキャノンデール SuperSix EVO Hi-MOD photo:So Isobe

ステム/ハンドルはこだわりの別体式 photo:So Isobe 
ステムは130mm/-17°。疲れた時の安定性を重視したという photo:So Isobe
積極的な走りで優勝した石井雄悟と逃げ、自身初の3位表彰台を掴んだ成田眸(mkw)の愛車はキャノンデールのオールラウンドバイク、SuperSix EVO Hi-MOD。以前はリムブレーキ仕様で軽く組んだSuperSix EVOに乗っていたが、「軽さとエアロ性能のバランスが取れていて、別体型のステムとハンドルを使えるバイクが条件でした。去年の乗鞍で勝った加藤大貴さんも乗っているし、これなら間違いない、と思って」とバイクチョイスの理由を教えてくれた。
フラッグシップのLAB71ではなく1つ下のHi-MODグレードだが、その分、パーツに投資を振り分けた。ヒルクライムだけではなくロードレースも見据え、全体的なバランスを考えたセットアップだ。「フレームを少し抑えて、そのぶんクランクやホイール、サドル、ハンドルといった細部にこだわって軽く仕上げました。実測で6.5〜6.6kgくらい。UCIリミットの6.8kgを下回っています」。

以前のバイクもSuperSix EVO。乗り換えに当たって「軽く速く、別体ハンドルを使えること」が条件だったという photo:So Isobe
思い切り下げたステムは130mm/-17°というかなり攻めたセッティングだが、その理由は「登りで疲れてきたときでも、ハンドリングの安定感を保てるように。これが意外と効きます」とのこと。
ジャージに記されているようにタイヤはチームをサポートするパナレーサーで、「少し重量はあるけれど、走りは軽くて反応がシャープ。パンクしづらく安心できる」と言うAGILEST FASTの25Cを使う。ペダルは長年使い慣れたスピードプレイ(ワフー)のPOWRLINK ZERO。
女子選抜優勝:三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT)/オルベア ORCA

三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT)のオルベア ORCA photo:So Isobe
まさに圧巻の勝利。女子選抜クラスで2連覇を達成した三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT)は、今年からオルベア・ジャパンのサポートを受け、同社がラインナップする軽量モデル「ORCA」にスイッチ。「バイクが変わり、ブレーキはリムからディスクに、変速は機械式からDI2に、タイヤもチューブレスに、チェーンリングは真円から楕円に。何もかも初めてだったので最初は戸惑いましたが、練習を重ねるうちにすごくフィットして、不安なくレースを迎えられました」と劇的な機材アップデートを振り返る。
「ORCAは乗り味がすごく良くて、推進力のあるバイクだなって感じます。力が無駄なくグッ、グッと路面に伝わる感覚がとてもはっきりしている。力強い走りができる1台です。」と、富士ヒルと乗鞍の2年連続両制覇に一歩近づいた三島は言う。「カラーもお任せ。ワインレッドは今までの自分だったら絶対選ばない色ですが、今はすごく気に入っています。本当にサポートして頂いてありがたいです」とも。

ダリモのNexum DragハンドルにはReve(レーブ)のシームレスバーテープ「MAKARES(マカレス)」をセット。今大会で注目を受けた製品だ photo:So Isobe 
コンポーネントはULTEGRA。自身初めてのDI2とディスクブレーキだという photo:So Isobe

目指すのは2年連続の富士ヒル/乗鞍制覇だ photo:So Isobe
パーツ類は基本的にメカニックにお任せだと言うが、ダリモの一体型ハンドルは自分で選んだもの。「シンプル・イズ・ベスト、が好きなので一体型を選びました。ヒルクライムで戦うには軽さが大事で、軽量なダリモを選びました。すごく軽く仕上がったのでとても満足しています」と加える。
タイヤは昨年のCORSA SPEEDからCORSA PRO SPEEDに進化し、ディスクブレーキローターはスペインのガルファー製。オルベア、ローター、ガルファー、ダリモとかなりスペイン色濃い組み合わせだ。バーテープはインソールブランドのReve(レーブ)が富士ヒルに合わせて発表させた特殊なシームレスバーテープ「MAKARES(マカレス)」だ。
女子選抜3位:河田朱里(Infinity style)/サーヴェロ S5

河田朱里(Infinity style)のサーヴェロ S5 photo:So Isobe

コンピューターをトップチューブに移し、マウントを廃して軽量化 photo:So Isobe 
チェーンはマックオフの超音波洗浄・施工プログラムを実施 photo:So Isobe
富士ヒルクライム初出場だった昨年は2位、目標に据える全日本ロードに向けての足慣らしとなった今年は3位。育児をこなしながら2年連続表彰台を射止めた河田朱里(Infinity Style)のバイクは、昨年と同じサーヴェロのS5。2023年のグランツールを全制覇したユンボ・ヴィスマの偉業を記念した限定モデルで、男子選抜で17位に入った(58分18秒!)旦那様(恭司郎さん)もお揃いのバイクだ。
昨年との違いは、できる限り重量を抑えるためにコンピュータをトップチューブに移してマウントを外し、空力を考えてボトル付きで走ったこと。そしてホイールはロードを走る上でカーボンスポークからスチールスポークのものに変更。さらにチェーンにはマックオフの超音波洗浄・施工プログラムを実施。チェーンは少し乗っただけでも分かるほどの違いを体感できたので良かった、とのこと。

旦那様の恭司郎さんもお揃いのS5。男子選抜で17位に入る強豪クライマー photo:So Isobe
※なお、今回は男女2位の金子宗平(群馬グリフィン)と大石由美子、両選手へのインタビューが叶わず……!次回はぜひじっくりお話を伺いたいと思います。
text:So Isobe
男子選抜優勝:石井雄悟(MASXSAURUS)/ディア PA-AFO

持ち前の「攻める走り」で富士ヒル主催者選抜クラス初優勝を遂げた石井雄悟(MASXSAURUS)のバイクが、DARE(ディア)の新型モデルである「PA-AFO」。ヒルクライムだけではなく、開催が迫るニセコクラシックや全日本選手権など、メインとして取り組むロードレースを走るために組み上げたばかりの一台だという。
「バイク自体は発表されて2ヶ月くらいの新モデルです。人と違うバイクに乗りたいっていうのが大きいですね。あと、このカラー(Elemental Black)が気に入ったのも大きかったです」と石井は機材チョイスの理由を話す。「見た目は結構派手なんですが、このフレームは意外と硬さが目立たず乗りやすい。硬い乗り味にしたくなかったので、パーツも含めて乗りやすさを重視したセットアップにしています」とも。



ホイールも乗り味が硬すぎないジップ 353 NSWで、ハブにはジェイテクトの鬼ベアリングをインストール。タイヤはコンチネンタルの軽量モデルであるGRAND PRIX 5000 TT TR(28)だ。
コンポーネントはシマノDI2をメインにスラム REDのクランク+パワーメーター、トライピークのビッグプーリーやボトムブラケットなど、様々なチューニングパーツを取り付けている。「パーツ構成はめちゃくちゃなんですけど、富士ヒルではエアロ性能も軽さも大事なので軽量パーツを取り付けてました」と言う。



台湾ブランド、BRAKCO(ブラッコ)のブレーキローターは宇都宮ブリッツェンの選手たちも使う製品で、放熱フィンが目立つブレーキパッドは同社の試作品。トライピーク製のローターロックリングやボトムブラケット、プーリーはオレンジでコーディネイトするなど、細部までこだわりが詰め込まれている。
完成車重量は6.8kg+αとUCI規定ピッタリ。ボリューム感のある見た目に反して非常に軽くセットアップされている。
男子選抜3位:成田眸(mkw)/キャノンデール SuperSix EVO Hi-MOD



積極的な走りで優勝した石井雄悟と逃げ、自身初の3位表彰台を掴んだ成田眸(mkw)の愛車はキャノンデールのオールラウンドバイク、SuperSix EVO Hi-MOD。以前はリムブレーキ仕様で軽く組んだSuperSix EVOに乗っていたが、「軽さとエアロ性能のバランスが取れていて、別体型のステムとハンドルを使えるバイクが条件でした。去年の乗鞍で勝った加藤大貴さんも乗っているし、これなら間違いない、と思って」とバイクチョイスの理由を教えてくれた。
フラッグシップのLAB71ではなく1つ下のHi-MODグレードだが、その分、パーツに投資を振り分けた。ヒルクライムだけではなくロードレースも見据え、全体的なバランスを考えたセットアップだ。「フレームを少し抑えて、そのぶんクランクやホイール、サドル、ハンドルといった細部にこだわって軽く仕上げました。実測で6.5〜6.6kgくらい。UCIリミットの6.8kgを下回っています」。

思い切り下げたステムは130mm/-17°というかなり攻めたセッティングだが、その理由は「登りで疲れてきたときでも、ハンドリングの安定感を保てるように。これが意外と効きます」とのこと。
ジャージに記されているようにタイヤはチームをサポートするパナレーサーで、「少し重量はあるけれど、走りは軽くて反応がシャープ。パンクしづらく安心できる」と言うAGILEST FASTの25Cを使う。ペダルは長年使い慣れたスピードプレイ(ワフー)のPOWRLINK ZERO。
女子選抜優勝:三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT)/オルベア ORCA

まさに圧巻の勝利。女子選抜クラスで2連覇を達成した三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT)は、今年からオルベア・ジャパンのサポートを受け、同社がラインナップする軽量モデル「ORCA」にスイッチ。「バイクが変わり、ブレーキはリムからディスクに、変速は機械式からDI2に、タイヤもチューブレスに、チェーンリングは真円から楕円に。何もかも初めてだったので最初は戸惑いましたが、練習を重ねるうちにすごくフィットして、不安なくレースを迎えられました」と劇的な機材アップデートを振り返る。
「ORCAは乗り味がすごく良くて、推進力のあるバイクだなって感じます。力が無駄なくグッ、グッと路面に伝わる感覚がとてもはっきりしている。力強い走りができる1台です。」と、富士ヒルと乗鞍の2年連続両制覇に一歩近づいた三島は言う。「カラーもお任せ。ワインレッドは今までの自分だったら絶対選ばない色ですが、今はすごく気に入っています。本当にサポートして頂いてありがたいです」とも。



パーツ類は基本的にメカニックにお任せだと言うが、ダリモの一体型ハンドルは自分で選んだもの。「シンプル・イズ・ベスト、が好きなので一体型を選びました。ヒルクライムで戦うには軽さが大事で、軽量なダリモを選びました。すごく軽く仕上がったのでとても満足しています」と加える。
タイヤは昨年のCORSA SPEEDからCORSA PRO SPEEDに進化し、ディスクブレーキローターはスペインのガルファー製。オルベア、ローター、ガルファー、ダリモとかなりスペイン色濃い組み合わせだ。バーテープはインソールブランドのReve(レーブ)が富士ヒルに合わせて発表させた特殊なシームレスバーテープ「MAKARES(マカレス)」だ。
女子選抜3位:河田朱里(Infinity style)/サーヴェロ S5



富士ヒルクライム初出場だった昨年は2位、目標に据える全日本ロードに向けての足慣らしとなった今年は3位。育児をこなしながら2年連続表彰台を射止めた河田朱里(Infinity Style)のバイクは、昨年と同じサーヴェロのS5。2023年のグランツールを全制覇したユンボ・ヴィスマの偉業を記念した限定モデルで、男子選抜で17位に入った(58分18秒!)旦那様(恭司郎さん)もお揃いのバイクだ。
昨年との違いは、できる限り重量を抑えるためにコンピュータをトップチューブに移してマウントを外し、空力を考えてボトル付きで走ったこと。そしてホイールはロードを走る上でカーボンスポークからスチールスポークのものに変更。さらにチェーンにはマックオフの超音波洗浄・施工プログラムを実施。チェーンは少し乗っただけでも分かるほどの違いを体感できたので良かった、とのこと。

※なお、今回は男女2位の金子宗平(群馬グリフィン)と大石由美子、両選手へのインタビューが叶わず……!次回はぜひじっくりお話を伺いたいと思います。
text:So Isobe
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