ツール・ド・フランス第18ステージは、ロズ峠を含む3つの超級山岳が設定された今大会最難関ステージ。積極的な走りを見せたベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が逃げ切り勝利を飾り、ポガチャルはヴィンゲゴーからタイムを奪い、マイヨジョーヌを堅守した。



リラックスした表情のアラフィリップ photo:CorVos
サインに応じるトーマス photo:A.S.O.


スタートの時を待つタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)たち photo:A.S.O.

7月24日(木)第18ステージ
ヴィフ〜ラ・ロズ峠(山岳)
距離:171.5km
獲得標高差:5,450m
天候:晴れのち霧
気温:15度


第18ステージ ヴィフ〜ラ・ロズ峠 image:A.S.O.

第112回ツール・ド・フランスは第18ステージにして、ついにアルプス山脈での戦いに突入した。その舞台は3つの超級山岳がそびえ、獲得標高差5,450mという今大会最難関のクイーンステージだ。

ヴィフを発ち、40kmの登り基調の平坦区間を終えると、まず超級山岳グランドン(距離21.7km/平均5.1%)へ。そして約20kmの下りの後、間髪入れずに超級山岳マドレーヌ(距離19.2km/平均7.9%)を登る。再び25kmのダウンヒルと15kmの平坦路で束の間の休息を取ったのち、フィニッシュ地点であり大会史上3度目の登場となる超級山岳ラ・ロズ峠(距離26.4km/平均6.5%)での頂上フィニッシュを迎える。初登場の登坂路となるコースは、山岳飛行場を通過してからのラスト4kmが勾配が不規則に変化する厳しいレイアウトだ。

今大会最高標高点2,304mを目指すレースは、前日の落車で骨盤を骨折したカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)と脳震盪を起こしたシリル・バルト(フランス、グルパマFDJ)を除く162名でスタート。序盤の中間スプリント(23.7km地点)を狙うリドル・トレックが集団をコントロールし、狙い通りジョナタン・ミラン(イタリア)が先頭通過。パリでのマイヨヴェール獲得に向けポイントを加算した。

スタートから中間スプリントまではリドル・トレックが集団をコントロールした photo:A.S.O.

ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)らが逃げた photo:CorVos

その後のアタック合戦の末、ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)やワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)らが先行。この動きには11分42秒遅れの総合5位であるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)も加わる。しかし最初の超級山岳グランドンに入るとレースはシャッフルされ、ログリッチを含む12名の逃げ集団が形成された。

この強力な逃げにはテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)も乗り、またデカトロンAG2Rラモンディアールは総合7位フェリックス・ガル(オーストリア)をブリュノ・アルミライユ(フランス)と共に送り込む。頂上は繰り下げでマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着用するレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)が先頭通過。プロトンから1分46秒差で、逃げ集団は次なるマドレーヌ峠へと続く下りに入った。

テクニカルな下りで先頭はアレンスマンとマッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)の2名に絞られたが、続くマドレーヌ峠の登りでログリッチらの追走グループが合流した。一方、メイン集団ではヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)の牽引で人数が25名まで絞られ、セップ・クス(アメリカ)に代わると、エースのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)以外が振り落とされた。

ヴィンゲゴーを牽引するセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

そのハイペースは逃げとのタイム差を28秒まで縮め、フィニッシュまで71kmを残した頂上手前4.7kmで、「総合2位を危険に晒しても攻めに行く」とレース前に語ったヴィンゲゴーが仕掛ける。ポガチャルを連れて瞬く間に先頭集団に追いつき、ログリッチやオコーナーを含む強力なグループが再編成された。

ヴィンゲゴーのためにジョーゲンソンが圧巻の牽引を見せ、ヴィンゲゴーが先頭で頂上を通過。単独で追う総合3位フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は30秒遅れで頂上を越え、先頭合流を目指した。

マドレーヌ峠からの下りで先頭グループのペースが落ちると、これを嫌ったオコーナーがエイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター)とジョーゲンソンと共に先行。そして最終決戦の地、超級山岳ラ・ロズ峠(距離26.4km/平均6.5%)に突入する。ローテーションが順調に回っていた先頭からはヴィンゲゴーのためにジョーゲンソンが遅れ、残り17km地点でオコーナーがアタック。ルビオを振り切り、オージークライマーが独走態勢を築いた。

逃げから降りてきたジョーゲンソンがヴィンゲゴーをアシスト photo:CorVos

レース先頭はベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)とエイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター)の2名に絞られた photo:A.S.O.

一方、後方のマイヨジョーヌ・グループは牽制ムードからペースが落ち、総合上位を狙うオスカー・オンリー(イギリス)のためにピクニック・ポストNLが先導する追走集団が合流を果たした。しかし、牽引役がUAEチームエミレーツXRGのジョナタン・ナルバエス(エクアドル)に交代すると集団は再びペースアップ。この動きでリポヴィッツやログリッチらが再び遅れていき、ポガチャルがアダム・イェーツ(イギリス)という強力なアシストを残す一方、ヴィンゲゴーは単騎での戦いを強いられた。

霧が立ち込めるロズ峠を駆け上がるオコーナーは、後続との差を保ったままフラムルージュ(残り1km)を通過。1週目で早くも総合タイムを失いながらも、ステージ優勝を狙い続けた執念が実り、雄叫びを上げてフィニッシュラインへ。ツールでは自身2度目、そしてジェイコ・アルウラー移籍後初となる勝利を掴み取った。

自身2度目のステージ優勝を飾ったベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) photo:CorVos

「ツールは世界最大のレースであると同時に、最も残酷なレースでもある。ここ数年、ツールでの2勝目がどうしても欲しかった。これまで何度も区間3位や4位と勝利に迫っていたからね。今日、勝つことができて、自分やアシストしてくれたチームメイトを誇りに思う。この勝利はチーム、そして僕自身が欲していたものだ」と、オコーナーは語った。

フィニッシュ手前でポガチャルに引き離されたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.

後方の総合争いでは、ヴィンゲゴーが再びアタックを仕掛けるもポガチャルを千切ることはできない。逆にフィニッシュ手前の緩斜面でポガチャルがヴィンゲゴーを突き放し、9秒の差をつけて区間2位でフィニッシュした。

「ステージ優勝を狙っていたが、もちろん最優先はマイヨジョーヌの保持。勝利は逃したがロズ峠では調子が良かった。今日はクイーンステージだったが、明日もそれに準ずる過酷なステージ。あと残すは3ステージで、その後のバカンスが待ち遠しい」とポガチャルはコメント。ヴィンゲゴーとの総合タイム差を4分15秒から4分26秒へと拡大させ、総合優勝へまた一歩近づいた。

なお、数日前から左膝痛に悩まされていたエンリク・マス(スペイン、モビスター)がこのステージの途中でリタイアしている。

ツールで移籍後初勝利をチームにもたらしたベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) photo:CorVos

マイヨジョーヌを堅守したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.
辛くもマイヨブランを守ったフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.


ツール・ド・フランス2025第18ステージ
1位 ベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) 5:03:47
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) +1:45
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +1:54
4位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) +1:58
5位 エイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター) +2:00
6位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) +2:25
7位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +2:46
8位 アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツXRG) +3:03
9位 トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +3:09
10位 セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +3:26
11位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +3:37
12位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +4:34
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 66:55:42
2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +4:26
3位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +11:01
4位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) +11:23
5位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +12:49
6位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) +15:36
7位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +16:15
8位 トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +18:31
9位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +25:41
10位 ベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) +29:19
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) 332pts
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 257pts
3位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) 196pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 105pts
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 89pts
2位 レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) 72pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) 67:06:43
2位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) +0:22
3位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +5:14
チーム総合成績
1位 ヴィスマ・リースアバイク 201:36:51
3位 UAEチームエミレーツXRG +14:00
2位 デカトロンAG2Rラモンディアール +1:03:46
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.

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