ミケのブランド初となるカーボンスポークを採用した「Deva RD」。グルパマFDJユナイテッドのフィードバックを取り込みながら空力、剛性、軽量性のバランスを突き詰めた最高峰モデルをインプレッションした。



ミケ Deva RD 62

ホイールからコンポーネントまで、自転車の駆動系にまつわる幅広いパーツを手掛けるミケは、1919年の創業以来イタリア国内での自社生産にこだわり続けてきたブランドだ。長らくクランクやカセット、ハブといったコンポーネントを主戦場としてきたが、1995年に完組ホイールへも参入。2022年にはウィリエール・グループの傘下に加わりながらも、本社機能や少数精鋭の生産体制は変わらず、むしろグループ内の完成車向け供給が増えたことで生産体制はさらに強化されているという。

そんなミケのホイールラインアップで、これまで最高峰を担ってきたのが「Kleos RD」だ。その上位モデルとして登場したDeva RDは、サンスクリット語で「輝く者」を意味し調和やバランスを象徴する名を冠し、性能・効率性・信頼性・軽量性を高い次元でまとめ上げることを狙った新たなフラッグシップである。開発にはミケが機材を供給するグルパマFDJユナイテッドが初期段階から関与し、2種類のカーボンスポークと4種類のリム形状を試作・検証する絞り込みを経て完成に至った。

ミケ初のカーボンスポークモデルだ

インターナルニップル仕様で、エアロ性能を高める

もっとも大きな変更点は、ブランドとして初めてカーボンスポークに踏み込んだことだろう。近年、カーボンスポークを備えたレーシングホイールが上位グレードの潮流になりつつある中、老舗のミケもこの流れに合わせてきた形だ。採用されたのは4×1mmという扁平な断面のスポークで、スポークヘッドとネジ部分にはチタン製の金属パーツが組み合わされている。スチール製のパーツと比べるとスポーク1本あたり0.5gの軽量化になるといい、細部にまでこだわりが行き届いている。

スポーク本数にも手が加えられた。Kleos RDでは前後合わせて24本だった本数を、Deva RDでは21本(前14本・後7本)にまで減らしている。一般的に本数を減らせば剛性や反応性は犠牲になりやすいが、カーボンスポークは重量あたりの剛性に優れるため、本数を絞りながらも加速やペースの変化に対する反応性を保つことに成功したという。

エアロ性能、効率性、信頼性、軽量性全ての調和を示すDevaというモデル名

リムの素材には東レのT700・T800・T1000をマットUD仕上げで採用。ラインアップは52mmと62mmの2種類のハイトで展開され、それぞれフロントとリアで外幅を変えているのが特徴だ。52mmハイトはフロント33mm・リア31mm、62mmハイトはフロント31mm・リア30mmという設定で、内幅はどちらも23mmに統一されている。フロントを幅広にすることで空気抵抗を抑え、リアは細くすることで重量を切り詰めるという、前後で役割を分けた設計思想が読み取れる。

リム形状の詰めには相応の時間がかけられている。内幅23mmのリムに28mmタイヤを組んだ状態で空力が最適化されるよう、NACA形状をベースにした4つの候補から、空力効率・横風時の安定性・タイヤとリムの連続性という観点で最終形状を選定。グルパマFDJユナイテッドとの協力による28回にわたるCFDシミュレーションに加え、業界のベンチマーク的な設備として知られるGST-Windkanal風洞での3セッション・計24時間のテストを経て導き出したという。

その成果は数値にも表れている。風洞実験ベースでは、前モデルのKleos RD 50と比較して50km/hでの空気抵抗を9.3%削減。ワット数に換算すると、フロントホイール単体で50km/hでは1.2W、60km/hでは2.2Wの節約になる計算だ。高速域を維持する場面ほど、この差は体感につながりやすいはずだ。

エアロフランジに収められるベアリングはセラミックスピード製

ハブも自社工場で新規に設計されたパーツである。素材は7075 T6アルミニウムで、フロントは横剛性を高める方向で、リアはアルミとチタンを組み合わせることで重量に対する剛性のバランスを最適化する方向でそれぞれ煮詰められている。シマノ仕様のフリーボディは大胆に肉抜きが施され、ホイール全体の軽量化に寄与した。加えてハブにはカーボン強化樹脂製の3Dプリント・エアロブレードが備えられており、空力とスポークまわりの安定性を両面から支える構造だ。

ベアリングはセラミックスピード製の二重シールタイプを採用し、リアハブにはベアリングのプリロードを微調整できるマイクロメトリック機構も組み込まれている。こうした積み重ねの結果、重量は52mmハイトモデルで1,305g、62mmハイトモデルでも1,375gに収まっており、Kleos RDの1,450gから大きく数字を縮めることに成功した。

今回試乗するのは、この62mmハイトモデルだ。グルパマFDJユナイテッドとの二人三脚で磨き上げられたブランド初のカーボンスポークホイールは、実走ではどのような感触を残すのか。それでは、インプレッションに移ろう。



「高速巡航で力を必要としない効率の良さを感じる」高木三千成(シクロワイアード編集部)

最初に強く印象に残ったのは、スピードに乗ってからの伸びの良さです。20km/h前後からスーッとスピードが乗っていく感覚があって、そこから先はDevaの土俵に入っていくような印象でした。ディープリムらしい重量感のある走り出しなのですが、20km/hを超えてスポークのしなりを感じ始めると、気持ちよくスピードが伸びていきます。

30km/h〜40km/hの巡航になると、力強く踏まずとも速度がキープできてしまいます。そして、その先の50km/h以上まで踏み込んでいくスプリントの場面ではどこまでも加速していくような感覚がありました。平坦基調のクリテリウムやサーキットエンデューロを走る人であれば、Deva 62がかなり有力な選択肢になると思います。この、踏み込んだ分だけ際限なく伸びていくような感覚は、60mmを超えるハイトのホイールでなければ味わえない領域だと感じます。

ミケ初のカーボンスポーク採用モデル、Devaをテスト

ただ、信号待ちからの発進のような、ゼロ加速が頻繁に求められる場面では初速の重さが気になるので、オールマイティに活躍する性能は52mmハイトモデルに軍配が上がります。一度速度に乗ってしまえばこのホイールの巡航能力の高さが際立ちますし、好みやシチュエーションによってリムハイトを選び分けられればいいと思います。

ディープホイールは直進安定性が高いがゆえに、コーナリングやダンシングでは癖が表れやすいものですが、Deva RD 62に関しては想像以上にニュートラルな感触でした。シャープにホイールが倒れる低リムハイトのホイールより、ホイールが倒れるタイミングがゆっくりですが、高速のダウンヒルでもイメージした通りにバイクを倒し込んでいけます。50mmリムハイトのホイールに乗り慣れていれば、ディープリム特有の走行感は受け入れやすいはずです。

「ダンシングでも違和感なく扱えるニュートラルな性能を持つ」高木三千成(シクロワイアード編集部)

踏み心地はマイルドです。VONOA製カーボンスポークに共通する印象なのですが、ペダリングの瞬間にスポークが一瞬だけしなり、その反発が加速感を与えてくれています。このマイルドさは一見デメリットに思えるかもしれませんが、実際にはアドバンテージの方が大きいと感じています。上りできつくなってきた場面で、とりあえず踏めば前に進んでくれる感覚があります。レース中に何度も繰り返す加減速の場面では、この足残りの良さが効いてくると思います。

シャープな剛性感で、足を使って一気に加速させていくホイールとは異なり、多少マイルドにしてレースの最後まで足を残せるような印象があります。特に速度域が全体的に高いコースには相性が良いと感じました。普段であれば100%踏まないと維持できない速度域を80〜90%の力で維持できてしまい、勝負所まで足を残しておけるようなホイールでした。

「程よいしなりがアドバンテージとなる」高木三千成(シクロワイアード編集部)



ミケ Deva RD 62
リムハイト:62mm
リム外幅:前31mm、後30mm
リム内幅:23mm(共通)
リム素材:東レ T700/T800/T1000 マットUDフィニッシュ
スポーク:Vonoa カーボンスポーク&チタン製ハードウェア(4×1mm エアロプロファイル)
スポーク本数:前後21本
ハブ:7075 T6 アルミニウム(自社生産)
ベアリング:セラミックスピード製 二重シール
重量:1,375g(62mmハイトモデル)
価格:624,800円(税込)
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