新緑の桜並木を見ると、毎年「ねぎ味噌おにぎり」が食べたくなってくる。5月23~24日に長野県で開催されたサイクリングイベント「緑のアルプスあづみのセンチュリーライド」、通称「緑のAACR」をCW編集部の高木が取材。前編ではスタートからAACR名物の”それ”が待つ鹿島槍までをレポート。

緑のアルプスあづみのセンチュリーライド(緑のAACR)が5月23日(土)~24日(日)に開催された photo: Michinari TAKAGI
春のサイクリングシーズンに長野県で開催されているサイクリングイベントとして人気が高い「アルプスあづみのセンチュリーライド」。参加者からは通称"AACR"と呼ばれ、桜が咲く4月に「桜のAACR」と、新緑の5月に「緑のAACR」の2大会が開催されている。
そして今年2026年は、5月23日(土)から24日(日)の2日間、「緑のアルプスあづみのセンチュリーライド(緑のAACR)」が開催された。イベント前日である23日は、前日受付が行われる他、ブランドブースが多く立ち並び、走り出したくて疼く脚をいったん忘れさせてくれるイベントを楽しめる。

ブランドブースが多く立ち並ぶ photo: Michinari TAKAGI

リドレーのバイク試乗会が行われ、アンバサダーのYUKARIさんも駆けつけた photo: Michinari TAKAGI

METのヘルメットを試着できる機会 photo: Michinari TAKAGI 
DMTのシューズ試着会には多くの方が訪れていた photo: Michinari TAKAGI

コンチネンタル Terra Competitionを展示 photo: Michinari TAKAGI
前日の目玉は、大会の冠スポンサーであるミズタニ自転車が取り扱うリドレーのバイク試乗会だ。エアロロード「NOAH FAST 3.0」をはじめ、軽量オールラウンドロード「FALCN RS」などのロードバイク、グラベルバイク「ASTR」まで多くの試乗車が用意され、多くの参加者が試乗を行っていた。
またブースにはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が使用するDMTのシューズやMETのヘルメットを試着できる機会も用意されていた。そのためサイズ感を確認しているサイクリストが非常に多く、改めて世界王者の影響力の大きさを感じられた。

マヴィックブースには最新ラインアップのホイールが展示された photo: Michinari TAKAGI 
ワコーズのブースでは洗車レクチャーサービスを実施 photo: Michinari TAKAGI

クロスカントリースキーヤーで日本チャンピオンの宮崎日香里さんとアルペンスキー元日本代表の荒井章吾さん、そしてiRCの瀬古さん photo: Michinari TAKAGI

鈴木雷太さんと渡部暁斗さんのダブルオリンピアンによるスペシャルトークショー photo: Michinari TAKAGI
マヴィックは最新ラインアップのホイールやマヴィックカーを展示し、ワコーズのブースでは洗車レクチャーサービスが実施。またiRCのブースでは最新ラインアップのタイヤが展示されていた。
今回のAACRには、スペシャルゲストライダーとして、ノルディック複合で世界を舞台に活躍する渡部暁斗さんが参加した。渡部さんは長野県白馬村出身でオリンピックで6大会連続出場。ソチと平昌で銀メダルを含む計4つのメダルを獲得した、日本、そして長野のスターだ。

トークショーの後はサイン会と撮影会が行われ、大盛況だった photo: Michinari TAKAGI
そんな渡部さんは、AACRプロデューサーでシドニーオリンピックMTBクロスカントリー日本代表である鈴木雷太さんと、ダブルオリンピアンによるスペシャルトークショーを行った。スキー競技と自転車競技にまつわる裏話や食事、長野や自転車の魅力、AACRの楽しみ方などについて会場でしか聞けないディープなトークショーとなった。
自己紹介が遅れたが、今回取材を担当したのはCW編集部員の高木。昨年の4月に開催された"桜のAACR"の取材も担当し、今回でAACRに参加するのは5回目になる。出身は埼玉県の上尾だが、長野県には学連時代からレースや合宿で何度も足を運び、Jプロツアーなどでも毎年のように訪れる、思い入れのある土地だ。実は取材の前週もJプロツアーで木曽の御嶽山を走っている。

レースはもちろん、通勤にも使っている相棒のS-Works Tarmac SL8 photo: Michinari TAKAGI
そんな私が取材したのは、今回もAACRでは最長カテゴリーとなる160kmのクラス。7つのエイドを巡りながら総距離160kmを走破するコースだ。先月開催された「桜のAACR」のスタート時刻は6時であるが、日の出の時間が早まるため、緑のAACRでは5時30分スタートと30分早い。両方参加する場合は間違いのないように!
そして迎えた大会当日。ホテルを出発し、4時台に160kmコースのスタートゴール地点である梓水苑の駐車場に到着すると、すでに多くの参加者が集まっていた。スタート時刻の5時30分に合わせて、ライダーたちは若干緊張した面持ちでタイヤに空気を入れたり、ボトルの中身を用意したりとライドの準備を進めていた。私も愛車にはフロントライトとリアライト、もちろんベルにフロントバッグ、サドルバッグ、ダブルボトルを取り付けて準備完了だ。

スタートラインにあるAACRのゲートから160kmクラスの1組目の参加者が続々と並んでいく photo: Michinari TAKAGI

「みっちーさん!」と呼ばれ振り返るとホノルルセンチュリーライドの参加者の方がいました photo: Michinari TAKAGI 
AEDサポートライダーの皆さん photo: Michinari TAKAGI

マヴィックさん、サポートよろしくお願いします! photo: Michinari TAKAGI
5月下旬ともなれば、朝の4時台はすでに空は明るい。当日の最低気温は13℃、最高気温23℃と春らしい寒暖差となっており、曇っているためウェア選びに悩んでしまった。そして私が導き出した答えは、半袖のジャージとビブショーツをベースに、温度変化に合わせてアームカバーやウインドブレーカーで調節することにした。
スタート時刻が迫ると梓水苑前の道路は交通規制がかかり、スタートラインにあるAACRのゲートから160kmクラスの1組目の参加者が、4名ずつ並んでいく。因みに、160kmクラスは655人、120kmクラスは493人、サイクルトレインは54人と合計1202人が緑のAACRに参加。距離の長い160kmクラスが最も人気なのは毎年のことだ。

AACRをプロデュースしている鈴木雷太さん photo: Michinari TAKAGI 
開会の挨拶をするスペシャルゲストの渡部暁斗さん photo: Michinari TAKAGI

大会を支えるスタッフさんで集合写真 photo: Michinari TAKAGI

「緑のAACRを楽しむぞー!!」 photo: Michinari TAKAGI
スタート前にはイベントをプロデュースしている鈴木雷太さんと、スペシャルゲストの渡部暁斗さんによる開会のあいさつが行われた。恒例の集合写真を撮影し、後はスタートの時を待つのみ。
そして5時30分になると、機材サポートをするマヴィックカーのレヴォーグを先頭に、4名ずつ間隔を空けて参加者が続々とスタート。"緑のAACR"が開幕した。早朝にもかかわらず、参加者たちが元気いっぱいの笑顔でスタートゲートをくぐり、北アルプスへ向かって駆け出していった。

4名ずつ間隔を空けて参加者が続々とスタート photo: Michinari TAKAGI

北アルプスへ向かって駆け出していく photo: Michinari TAKAGI
160kmクラスの1組目の最後尾からは、鈴木雷太さんと渡部暁斗さんもスタートしていく。長野の2大スターたちのスタートシーンをカメラに収め、私もゲートを潜り、そして新緑の長野を巡る160kmが始まった。
走り出しこそ少し肌寒かったが、次第に身体が温まり、ちょうどよい気温に感じてきた。また回りを走るライダーのウェアチョイスや(職業柄気になる)メーカーなどを眺めながら、最初の休憩地点である穂高エイド、スタートから23kmの堀金・穂高地区にある「アルプスあづみの公園」を目指していく。

AACRをプロデュースする鈴木雷太さんとスペシャルゲストの渡部暁斗さんも160kmクラスの1組目の最後でスタートしていった photo: Michinari TAKAGI

広大で平坦な田んぼ道を走っていく photo: Michinari TAKAGI

笑顔で激坂をクリアしていく photo: Michinari TAKAGI

マヴィックが早速サポート中 photo: Michinari TAKAGI 
笑顔でピース photo: Michinari TAKAGI
序盤はしばらく松本市内の広大で平坦な田んぼ道を突っ切っていく。目の前には雲がかかった山々が聳え立ち、幻想的な景色が広がる。そして、自然豊かな長野の空気は澄んでいて美味しい。
安曇野市に入ると小刻みなアップダウン区間が登場するものの、どれも短い坂のため、参加者たちは笑顔でクリアしていく。だが、しばらくすると小雨が降ってきて、路面は完全なウェットに。登り区間の先には先行していたマヴィックカーが停まっており、参加者のパンクのサポートをしていた。何かバイクトラブルがあった時に、サポートカーがすぐに駆け付けてくれるのがAACRの良いところだ。メカトラに慣れていないライダーにとってもこの安心感は大きいはずだ。

穂高エイドの看板が見えれば、あと少し photo: Michinari TAKAGI 
最初の穂高エイドに到着 photo: Michinari TAKAGI

やさいぱんは、にんじんとホウレンソウ、トマト、カボチャ、むらさき芋の5種類 photo: Michinari TAKAGI 
「米粉とポロネギのポタージュスープです!とても温かいですよ!」 photo: Michinari TAKAGI

むらさき芋とにんじんのやさいぱんと米粉とポロネギのポタージュスープ photo: Michinari TAKAGI 
マイボトルに水を汲む参加者の皆さん photo: Michinari TAKAGI

鈴木雷太さんと渡部暁斗さん、辻浦圭一さんのグループで一枚 photo: Michinari TAKAGI
最初の穂高エイドに到着すると、色とりどりな「やさいぱん」と「米粉とポロネギのポタージュスープ」が用意されている。やさいぱんは、にんじんとホウレンソウ、トマト、カボチャ、むらさき芋と5種類の中から2つ選べる。どれも美味しそうなため、選びあぐねている参加者の列が出来ていた。今回で5度目の参加ではあるが、もちろん私もその一人だ(笑)。
ちなみにしばらく悩んだ末、むらさき芋とにんじんをチョイス。それぞれの野菜の風味を感じるのはもちろん、玄米のもちもちとした食感でお腹を満たしてくれる。また、米粉とポロネギのポタージュスープはとても温かく、濃厚でとろっとしたスープで、雨で濡れた身体を温めてくれた。

大会MCのAsamiさんが参加者にエールを送る photo: Michinari TAKAGI

緩やかで長いアップダウンが続く区間を駆け抜けていく photo: Michinari TAKAGI

安曇野アートラインを走っていく photo: Michinari TAKAGI
小腹も満たされ、次なる目的地は20km先の大町市にあるアルプスあづみの公園にある「大町エイド」だ。緩やかで長いアップダウンが続くものの、北アルプスの山々や安曇野アートラインなど、景色を楽しみながら走れる区間でもある。
安曇野アートラインに突入すると、ブラウンのレトロな電車が見えてくる。鉄道オタクである私は、ついつい毎年止まる場所だ。安曇野ちひろ公園内にある「トットちゃん広場」には、長野電鉄から譲り受けた昭和2年(1927年)に製造されたモハ604と、大正15年(1926年)に製造されたデニハ201の2両が展示されている。
ちなみにこの広場は、生ける伝説こと黒柳徹子さんが自身の子ども時代をつづった『窓ぎわのトットちゃん』をアニメーション映画化した際、その世界を再現した場所なのだという。映画を観た方や鉄道マニアの方は立ち寄ってみては。

安曇野ちひろ公園内にある「トットちゃん広場」では昭和2年(1927年)に製造された「モハ604」が展示されていた photo: Michinari TAKAGI

楽しそうに園路を走っていくSOLAの皆さん photo: Michinari TAKAGI
引き続き小雨が降る中、大町エイドがある「アルプスあづみの公園」の入口に到着した。そこからエイドステーションまでは左右に聳え立つ木々が並ぶ園路を抜けていく。視界いっぱいに広がる緑は、まさに「緑のAACR」のハイライトとなる場所の1つ。新緑で目が癒され、その先にあるのが「大町エイド」だ。

毎回恒例の猫耳を付けたスタッフさんたちがお出迎え photo: Michinari TAKAGI

猫耳を付けたスタッフさんが笑顔で手渡してくれる photo: Michinari TAKAGI 
「寒仕込みひやむぎ」と「水ようかん」 photo: Michinari TAKAGI

渡部暁斗さんの母校である「白馬高校」のジャージを持って記念撮影 photo: Michinari TAKAGI 
「寒仕込みひやむぎ」が美味しくて、笑顔になってしまう photo: Michinari TAKAGI
大町エイドではAACRでは定番の「寒仕込みひやむぎ」と「水ようかん」が用意されていた。さらに大町エイドでは、毎回恒例(そしてAACRの裏名物)である「猫耳」を付けた女性スタッフさんが笑顔でそれらを手渡してくれる。
脚はもちろん眼精疲労さえも回復した参加者たちが、次に目指すのは23km先、スタートから66km地点の青木湖にある「鹿島槍エイド」だ。田んぼ道と森林を抜け、右手に見えてくるのが木崎湖。信濃大町にある青木湖と中綱湖、そしてこの木崎湖の3つは、まとめて「仁科三湖」と呼ばれる。

スタートから66km地点の青木湖にある鹿島槍エイドを目指していく photo: Michinari TAKAGI

仁科三湖である木崎湖の西岸を進んでいく photo: Michinari TAKAGI
因みに木崎湖は長野県大町市にある、仁科三湖のうち最も南側に位置する湖。キャンプをはじめ、アヒルボートやサップ、カヌーなどの水上スポーツが楽しめるほか、ワカサギ、 コクチバス、 サクラマスなどが釣れるため、釣り好きにもお馴染みのスポットとなっている。
連続コーナーが続く木崎湖の西岸を進んでいくと、今度は踏切が見えてくる。これは長野県の松本駅から新潟県の糸魚川駅までを繋ぐ、JR大糸線。この踏切を渡り、中綱湖と青木湖方面へと国道148号を北上していく。

JR大糸線の踏切を渡っていく photo: Michinari TAKAGI

国道148号は緩やかな登りが続く photo: Michinari TAKAGI 
中綱湖の看板が見えればあと少し photo: Michinari TAKAGI
鹿島槍エイドへ向かう国道148号は緩やかな登りが続くが、路面が整備されているためとても走りやすい。中綱湖を横目に登り続け、エイドステーションまであと1kmを切ったところで、AACR前半戦の難関である激坂が参加者の前に立ちはだかる。
鹿島槍エイドにたどり着くためにはこの激坂をクリアしなければならない。プロの自転車レースでも勝負所となりうる勾配10%の坂には、さらに路面に凹凸があり、砂利があるためトラクションコントロールが非常に難しい。

激坂を楽しそうにダンシングでクリアしていく photo: Michinari TAKAGI

鹿島槍エイドに到着 photo: Michinari TAKAGI
登り好きなクライマーたちは軽快なダンシングでクリアしていく。もちろん勾配が厳しすぎると感じたならば、バイクから降りて押してもよい。ちなみに私はダンシングではなく、インナーローで一番軽いギアに切り替え、弱虫ペダルの小野田坂道くんのようにハイケイデンスでクリアすることができた。
やっとの思いでたどり着いた鹿島槍エイド。バイクラックに愛車をかけて、一年越しの「ねぎ味噌おにぎり」を受け取りに行く。「"伝説"のねぎ味噌おにぎり」のポップを目掛けて歩いていき、ホカホカの「"伝説"のねぎ味噌おにぎり」を受け取った。

「伝説のねぎ味噌おにぎり」が渡される photo: Michinari TAKAGI

「伝説のねぎ味噌おにぎり」と浅漬け photo: Michinari TAKAGI
一粒一粒に艶があるホカホカのおにぎりに、甘辛いねぎ味噌が塗られ、見ているだけでよだれが出てしまう。一口ほおばり、「美味い!ここまで頑張って走ってきてよかった!」と感動に浸る。また付け合せのキュウリと白菜の浅漬けもありがたい。ここまでで失った塩分が身体に染み込んでいく。
また、来年の参加を検討している読者に朗報なのですが、なんとこの伝説のおにぎりはおかわり自由。私も遠慮なくおかわりをもらい、お腹も心も満たし、そして残り100kmの後半戦に備えることに。

伝説のねぎ味噌おにぎりを早速一口 photo:いたりあーのさん

「伝説のねぎ味噌おにぎり、最高です!」とSOLAの皆さん photo: Michinari TAKAGI
取り急ぎ、緑のAACRのイベントレポート前編はスタートから66km地点の鹿島槍エイドまでお届けしました!次回の後編は長野オリンピックの会場であった白馬を駆け抜け、フィニッシュを目指す後編に続きます。こうご期待!
photo & text : Michinari TAKAGI

春のサイクリングシーズンに長野県で開催されているサイクリングイベントとして人気が高い「アルプスあづみのセンチュリーライド」。参加者からは通称"AACR"と呼ばれ、桜が咲く4月に「桜のAACR」と、新緑の5月に「緑のAACR」の2大会が開催されている。
そして今年2026年は、5月23日(土)から24日(日)の2日間、「緑のアルプスあづみのセンチュリーライド(緑のAACR)」が開催された。イベント前日である23日は、前日受付が行われる他、ブランドブースが多く立ち並び、走り出したくて疼く脚をいったん忘れさせてくれるイベントを楽しめる。





前日の目玉は、大会の冠スポンサーであるミズタニ自転車が取り扱うリドレーのバイク試乗会だ。エアロロード「NOAH FAST 3.0」をはじめ、軽量オールラウンドロード「FALCN RS」などのロードバイク、グラベルバイク「ASTR」まで多くの試乗車が用意され、多くの参加者が試乗を行っていた。
またブースにはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が使用するDMTのシューズやMETのヘルメットを試着できる機会も用意されていた。そのためサイズ感を確認しているサイクリストが非常に多く、改めて世界王者の影響力の大きさを感じられた。




マヴィックは最新ラインアップのホイールやマヴィックカーを展示し、ワコーズのブースでは洗車レクチャーサービスが実施。またiRCのブースでは最新ラインアップのタイヤが展示されていた。
今回のAACRには、スペシャルゲストライダーとして、ノルディック複合で世界を舞台に活躍する渡部暁斗さんが参加した。渡部さんは長野県白馬村出身でオリンピックで6大会連続出場。ソチと平昌で銀メダルを含む計4つのメダルを獲得した、日本、そして長野のスターだ。

そんな渡部さんは、AACRプロデューサーでシドニーオリンピックMTBクロスカントリー日本代表である鈴木雷太さんと、ダブルオリンピアンによるスペシャルトークショーを行った。スキー競技と自転車競技にまつわる裏話や食事、長野や自転車の魅力、AACRの楽しみ方などについて会場でしか聞けないディープなトークショーとなった。
自己紹介が遅れたが、今回取材を担当したのはCW編集部員の高木。昨年の4月に開催された"桜のAACR"の取材も担当し、今回でAACRに参加するのは5回目になる。出身は埼玉県の上尾だが、長野県には学連時代からレースや合宿で何度も足を運び、Jプロツアーなどでも毎年のように訪れる、思い入れのある土地だ。実は取材の前週もJプロツアーで木曽の御嶽山を走っている。

そんな私が取材したのは、今回もAACRでは最長カテゴリーとなる160kmのクラス。7つのエイドを巡りながら総距離160kmを走破するコースだ。先月開催された「桜のAACR」のスタート時刻は6時であるが、日の出の時間が早まるため、緑のAACRでは5時30分スタートと30分早い。両方参加する場合は間違いのないように!
そして迎えた大会当日。ホテルを出発し、4時台に160kmコースのスタートゴール地点である梓水苑の駐車場に到着すると、すでに多くの参加者が集まっていた。スタート時刻の5時30分に合わせて、ライダーたちは若干緊張した面持ちでタイヤに空気を入れたり、ボトルの中身を用意したりとライドの準備を進めていた。私も愛車にはフロントライトとリアライト、もちろんベルにフロントバッグ、サドルバッグ、ダブルボトルを取り付けて準備完了だ。




5月下旬ともなれば、朝の4時台はすでに空は明るい。当日の最低気温は13℃、最高気温23℃と春らしい寒暖差となっており、曇っているためウェア選びに悩んでしまった。そして私が導き出した答えは、半袖のジャージとビブショーツをベースに、温度変化に合わせてアームカバーやウインドブレーカーで調節することにした。
スタート時刻が迫ると梓水苑前の道路は交通規制がかかり、スタートラインにあるAACRのゲートから160kmクラスの1組目の参加者が、4名ずつ並んでいく。因みに、160kmクラスは655人、120kmクラスは493人、サイクルトレインは54人と合計1202人が緑のAACRに参加。距離の長い160kmクラスが最も人気なのは毎年のことだ。




スタート前にはイベントをプロデュースしている鈴木雷太さんと、スペシャルゲストの渡部暁斗さんによる開会のあいさつが行われた。恒例の集合写真を撮影し、後はスタートの時を待つのみ。
そして5時30分になると、機材サポートをするマヴィックカーのレヴォーグを先頭に、4名ずつ間隔を空けて参加者が続々とスタート。"緑のAACR"が開幕した。早朝にもかかわらず、参加者たちが元気いっぱいの笑顔でスタートゲートをくぐり、北アルプスへ向かって駆け出していった。


160kmクラスの1組目の最後尾からは、鈴木雷太さんと渡部暁斗さんもスタートしていく。長野の2大スターたちのスタートシーンをカメラに収め、私もゲートを潜り、そして新緑の長野を巡る160kmが始まった。
走り出しこそ少し肌寒かったが、次第に身体が温まり、ちょうどよい気温に感じてきた。また回りを走るライダーのウェアチョイスや(職業柄気になる)メーカーなどを眺めながら、最初の休憩地点である穂高エイド、スタートから23kmの堀金・穂高地区にある「アルプスあづみの公園」を目指していく。





序盤はしばらく松本市内の広大で平坦な田んぼ道を突っ切っていく。目の前には雲がかかった山々が聳え立ち、幻想的な景色が広がる。そして、自然豊かな長野の空気は澄んでいて美味しい。
安曇野市に入ると小刻みなアップダウン区間が登場するものの、どれも短い坂のため、参加者たちは笑顔でクリアしていく。だが、しばらくすると小雨が降ってきて、路面は完全なウェットに。登り区間の先には先行していたマヴィックカーが停まっており、参加者のパンクのサポートをしていた。何かバイクトラブルがあった時に、サポートカーがすぐに駆け付けてくれるのがAACRの良いところだ。メカトラに慣れていないライダーにとってもこの安心感は大きいはずだ。







最初の穂高エイドに到着すると、色とりどりな「やさいぱん」と「米粉とポロネギのポタージュスープ」が用意されている。やさいぱんは、にんじんとホウレンソウ、トマト、カボチャ、むらさき芋と5種類の中から2つ選べる。どれも美味しそうなため、選びあぐねている参加者の列が出来ていた。今回で5度目の参加ではあるが、もちろん私もその一人だ(笑)。
ちなみにしばらく悩んだ末、むらさき芋とにんじんをチョイス。それぞれの野菜の風味を感じるのはもちろん、玄米のもちもちとした食感でお腹を満たしてくれる。また、米粉とポロネギのポタージュスープはとても温かく、濃厚でとろっとしたスープで、雨で濡れた身体を温めてくれた。



小腹も満たされ、次なる目的地は20km先の大町市にあるアルプスあづみの公園にある「大町エイド」だ。緩やかで長いアップダウンが続くものの、北アルプスの山々や安曇野アートラインなど、景色を楽しみながら走れる区間でもある。
安曇野アートラインに突入すると、ブラウンのレトロな電車が見えてくる。鉄道オタクである私は、ついつい毎年止まる場所だ。安曇野ちひろ公園内にある「トットちゃん広場」には、長野電鉄から譲り受けた昭和2年(1927年)に製造されたモハ604と、大正15年(1926年)に製造されたデニハ201の2両が展示されている。
ちなみにこの広場は、生ける伝説こと黒柳徹子さんが自身の子ども時代をつづった『窓ぎわのトットちゃん』をアニメーション映画化した際、その世界を再現した場所なのだという。映画を観た方や鉄道マニアの方は立ち寄ってみては。


引き続き小雨が降る中、大町エイドがある「アルプスあづみの公園」の入口に到着した。そこからエイドステーションまでは左右に聳え立つ木々が並ぶ園路を抜けていく。視界いっぱいに広がる緑は、まさに「緑のAACR」のハイライトとなる場所の1つ。新緑で目が癒され、その先にあるのが「大町エイド」だ。





大町エイドではAACRでは定番の「寒仕込みひやむぎ」と「水ようかん」が用意されていた。さらに大町エイドでは、毎回恒例(そしてAACRの裏名物)である「猫耳」を付けた女性スタッフさんが笑顔でそれらを手渡してくれる。
脚はもちろん眼精疲労さえも回復した参加者たちが、次に目指すのは23km先、スタートから66km地点の青木湖にある「鹿島槍エイド」だ。田んぼ道と森林を抜け、右手に見えてくるのが木崎湖。信濃大町にある青木湖と中綱湖、そしてこの木崎湖の3つは、まとめて「仁科三湖」と呼ばれる。


因みに木崎湖は長野県大町市にある、仁科三湖のうち最も南側に位置する湖。キャンプをはじめ、アヒルボートやサップ、カヌーなどの水上スポーツが楽しめるほか、ワカサギ、 コクチバス、 サクラマスなどが釣れるため、釣り好きにもお馴染みのスポットとなっている。
連続コーナーが続く木崎湖の西岸を進んでいくと、今度は踏切が見えてくる。これは長野県の松本駅から新潟県の糸魚川駅までを繋ぐ、JR大糸線。この踏切を渡り、中綱湖と青木湖方面へと国道148号を北上していく。



鹿島槍エイドへ向かう国道148号は緩やかな登りが続くが、路面が整備されているためとても走りやすい。中綱湖を横目に登り続け、エイドステーションまであと1kmを切ったところで、AACR前半戦の難関である激坂が参加者の前に立ちはだかる。
鹿島槍エイドにたどり着くためにはこの激坂をクリアしなければならない。プロの自転車レースでも勝負所となりうる勾配10%の坂には、さらに路面に凹凸があり、砂利があるためトラクションコントロールが非常に難しい。


登り好きなクライマーたちは軽快なダンシングでクリアしていく。もちろん勾配が厳しすぎると感じたならば、バイクから降りて押してもよい。ちなみに私はダンシングではなく、インナーローで一番軽いギアに切り替え、弱虫ペダルの小野田坂道くんのようにハイケイデンスでクリアすることができた。
やっとの思いでたどり着いた鹿島槍エイド。バイクラックに愛車をかけて、一年越しの「ねぎ味噌おにぎり」を受け取りに行く。「"伝説"のねぎ味噌おにぎり」のポップを目掛けて歩いていき、ホカホカの「"伝説"のねぎ味噌おにぎり」を受け取った。


一粒一粒に艶があるホカホカのおにぎりに、甘辛いねぎ味噌が塗られ、見ているだけでよだれが出てしまう。一口ほおばり、「美味い!ここまで頑張って走ってきてよかった!」と感動に浸る。また付け合せのキュウリと白菜の浅漬けもありがたい。ここまでで失った塩分が身体に染み込んでいく。
また、来年の参加を検討している読者に朗報なのですが、なんとこの伝説のおにぎりはおかわり自由。私も遠慮なくおかわりをもらい、お腹も心も満たし、そして残り100kmの後半戦に備えることに。


取り急ぎ、緑のAACRのイベントレポート前編はスタートから66km地点の鹿島槍エイドまでお届けしました!次回の後編は長野オリンピックの会場であった白馬を駆け抜け、フィニッシュを目指す後編に続きます。こうご期待!
photo & text : Michinari TAKAGI