「落車したことで、もう失うものはないと思った」。脚の腫れと親指の痛みを抱えながら、ツール初勝利をつかんだソーレン・ヴァーレンショルト。ボルはリードアウトを悔やみ、ポガチャルは史上最速となった高速ステージを振り返った。



ステージ優勝 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)

インタビューに答えるソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) photo:A.S.O.

レース直後インタビュー

勝つには集団の後方すぎると思った。だが突然、右側が空いたので踏み込んだ。これまでのキャリア最大の勝利だった2025年のオムロープ・ヘット・ニュースブラットと似たような状況だった。後方にいたはずが、気づけば先頭にいた。本当に信じられない勝利だよ。

これが間違いなくキャリア最大の勝利だ。ここには僕より速い選手が2、3人いる。だから勝つためには、良いスプリントをしなければならない。今日はそれができた。時々、自信が一気に湧いてくる瞬間があるんだ。ここまで何度も疲れ果て、勝利なんて無理だと思った時もあった。それだけに、勝利を手にしたことが信じられない。しかも落車した翌日だなんてね。その影響で序盤は身体が重かったが、徐々に良くなっていった。終盤はアドレナリンが出ていたことも大きかったのだろうね。

笑顔でインタビュー会場に向かうソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) photo:A.S.O.

─奇妙なスプリントでもあったよね?

そうだね。残り6km地点では集団先頭にいたのだが、ライバルチームが次々と前に上がってきた。最終コーナーに向かうまでに少し脚を使いすぎたので、その後は力を温存するためにいったん踏むのをやめた。すると右側に隙間が空き、ケース・ボルが飛び出した。だから踏み込んで彼に追いつき、一瞬だけ背後についてから飛び出した。その時点で残り250mほどだっただろうか。どうせ第7ステージのように、後ろからメルリールが迫ってくるのだろうと思っていた。幸運にも、同じことは起こらなかった。

チームに今大会初勝利を献上したソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) photo:A.S.O.

記者会見

このステージの平均速度がツール史上最速だったなんて意外だ。それほど速いとは感じなかったが、終始追い風だったからだろう。それに、プロトンが逃げとのタイム差を1分前後に保ち続けていたことも理由の1つだと思う。近年のレースでは、逃げに大きなタイム差を与えなくなっているからね。

昨日の落車は深刻ではないが、軽いとも言えない。程度としては中程度といったところかな。脚は腫れており、親指にも痛みがある。だが走るのに問題はなく、終盤はアドレナリンが出ていたので気にならなかったよ。

─チームとして2日間マイヨジョーヌを保持し、今日、区間優勝を飾った。チームの雰囲気を教えてほしい。

95%は良い雰囲気だ。今大会はノルウェー人とデンマーク人だけで構成されたチームということもあるね。もちろん、良い走りができなかった時には雰囲気が暗くなることもある。それでもレース前もレース後も、夕食の時にも楽しい空気が流れているよ。

小さい頃から、いまのようなスプリントフォームだった。14歳の時に見た、前輪に顔がつきそうなほど前傾してもがくカヴェンディッシュの影響かな。子どもの頃から身についたスタイルは、そう簡単には変わらないものなんだ。僕は背が高いので、できる限り低い姿勢で踏み込むスタイルを目指している。

自分がツールでステージ優勝できるという自信は持ち続けていた。だが、ここには僕より速いスプリンターが2、3人いることも分かっている。だからこそ勝利への欲望を持ち続けながら、彼らが包囲され、自分が先に抜け出せるような幸運も必要だと思っていた。完璧な位置から飛び出すことができれば勝てると思っていたんだ。少しネガティブな考え方かもしれないが、現実を見ながら戦うのが僕の性格なんだ。

昨日の落車があったからこそ、あそこで飛び出せたのだと思う。落車したことで「もう失うものはない」と思い、あのタイミングで踏み込めた。「このスプリントだけに集中し、本能に従って踏み込め」と自分に言い聞かせ、右側に開いたスペースへ飛び込んだんだ。確証はないけれど、たぶんこの考えは合っていると思うよ。

ケース・ボル(オランダ、デカトロンCMA CGM)

突然、自分の後ろに誰もいなくなったんだ。僕が少し早く前に出すぎてしまい、オラフ(コーイ)は一瞬のうちに、僕についていかずに見送る判断をしたのだと思う。一度その判断をしたら、もう元には戻せない。最終的にオラフは素晴らしいスプリントを見せたが、僕たちはもう少し上を狙えたと思っている。勝利が手の届くところにあっただけに悔しい。チームとして間違いなく脚はあるので、明日に向けてタイミングをさらに微調整したい。

ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)の降格処分が取り消されたことについて、クリストフ・ルードホフト代表

復調に期待が掛かるヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) photo:A.S.O.

本件について審判団と話し合うことができ、降格処分とイエローカードを取り消してもらえたことを嬉しく思う。これは誰にとっても正しい判断だった。2つの違反行為を巡ってかなり議論になったが、どちらの場面にも、それに至るまでの経緯があった。ヤスペルも関わっていたが、直接の原因ではなかった。だから最終的に処分は取り消された。

最初の降格処分は正しい判断ではなかったが、彼らもそれを理解してくれた。自分たちの誤りを認めたのは非常にフェアだと思う。自分たちの立場を変えずに押し通すこともできたのに、彼らはそうしなかった。

マイヨジョーヌ&マイヨアポワ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)

マイヨジョーヌ着用日数を61日目に伸ばしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

今日はそれほど厳しいステージではなかったものの、とても速い1日だった。トイレ休憩で止まってから、集団に追いつくのがとても大変だったからね(笑)。ツール・ド・フランス史上最速のステージを走ることができて嬉しいよ。

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)はマイヨアポワも着用中 photo:A.S.O.

逃げ切りの可能性もあったなかで、スプリンターチームが懸命に追走していたので、速くなった理由にも納得できる。逃げのメンバーも強力だった。プロトンが逃げを捉えた残り5kmからしばらくの間、目に見えてスピードが落ちたのが面白かった。あの区間が1日を通して最も遅かったんじゃないかな(笑)。それに終始、追い風に背中を押されていたからね。

text:Sotaro.Arakawa
photo:A.S.O., CorVos

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