1級山岳「バロン・ダルザス」を越えるツール・ド・フランス第13ステージは、様々な思惑が絡み合う激しい高速ステージに。巨大な逃げグループから抜け出したマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー)が自身初のツール区間優勝を挙げ、逃げに乗ったトーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング)が総合成績を4位にまでジャンプアップさせている。



7月17日(金)第13ステージ
ドール〜ベルフォール 走行距離205.8km/獲得標高2,400m(丘陵)


この日積極策を成功させるジェイコ・アルウラー photo:A.S.O.
マイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が登場。この日、UAEチームエミレーツXRGはステージ優勝も目指した photo:A.S.O.


ドールの街を出発していく photo:A.S.O.

7月18日(金)に開催された第113回ツール・ド・フランスの第13ステージ(205.8km)は、序盤から約152.3kmにわたって平坦路が続き、終盤に3級山岳「コル・デ・クロワ(距離5.2km/平均4.8%)」と1級山岳「バロン・ダルザス(登坂距離8.8km/平均6.9%)」を越える、ザ・逃げ切り向けレイアウトだ。

しかもバロン・ダルザスの頂上ではなく、30kmに及ぶダウンヒルと平坦区間を経てベルフォールにフィニッシュするという一風変わったコース。チャンスを待ち侘びた逃げ屋たちがフィニッシュまで先行する可能性も高いし、すでに圧倒的なリードを得てマイヨジョーヌを着ているタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)がさらに攻撃を仕掛ける可能性もあるし、あるいは総合順位変動を狙うオールラウンダーが逃げを企てる可能性もある、筋書きの見えないレースが現地時間13時に始まった。

第13ステージ ドール〜ベルフォール image:A.S.O.

集団スプリント中の落車で鎖骨骨折を負ったフェルナンド・ガビリア(コロンビア、カハルラル・セグロスRGA)とイェノ・ベルクムース(ベルギー、ロット・アンテルマルシェ)を除く171名が今大会最長距離の1日をスタート。20分間のパレード走行を経て、この日は当然のごとく逃げ屋たちが0km地点から猛攻に打って出る。

最初はカスパー・アスグリーン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)を含む5名が逃げたものの、137.8km先に設定された中間スプリントを目指してスプリンターたちも積極的にアタック合戦に加わった。もう既に全ての平坦ステージを消化し、中間スプリントでの加点に目標を切り替えたスプリンターたちが次々と先行。追い風に押されて平均60km/hに達する超ハイペース進行の中、やがて37名という大きな逃げグループが先行した。

グルパマFDJユナイテッドとピナレロQ36.5プロサイクリングが実に4名ずつ、コフィディスとチューダープロサイクリング、モビスター、トタルエネルジー、さらにアルペシン・プレミアテックが3名ずつ送り込んだ37名の中には11分49秒遅れの総合10位につけるトーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング)と、マイヨヴェール(ポイント賞)ランキングで3位につけるヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)も含まれた。

まずアタックを決めたカスパー・アスグリーン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)ら5名 photo:A.S.O.

出遅れたマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)がメイン集団を自ら牽引する photo:A.S.O.

58名にまで膨れ上がった先頭グループをジョシュア・ターリング(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング)が牽く photo:CorVos

フィリプセンの逃げを嫌ったのは、フィリプセンと46ポイント差でポイント賞首位に立つマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)だった。ピーダスンは自らメイン集団を引っ張って必死に追撃し、メイン集団を飛び立って大人数の追走グループに加わる。メイン集団を引き離して逃げ切るチャンスを狙いたい先頭グループと必死に追う第2グループが追走劇を繰り広げ、自動的にメイン集団も高速で追いかけざるを得ない状況に。

大きく3グループに分かれた追走劇がたっぷり100km以上に渡って続いた結果、ピーダスンやポイント賞ランキング2位につけるビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム)を含む第2グループが中間スプリントまで23kmを残して先頭グループに追いついた。こうして実に58名、全選手の1/3以上が加わるという巨大な逃げグループが生まれた。

2023年限りで現役を退いたティボー・ピノの故郷であり、彼が今も農場を営むメリゼの中間スプリントではポイント賞ランキングの1-2-3位(ピーダスン-ギルマイ-フィリプセン)がステージ優勝争いさながらの激しい勝負を繰り広げてフィリプセンが先着。先頭通過して25ポイントを獲得したフィリプセンは3位に終わったギルマイを上回ってランキング2位浮上に成功している。

ピドコックの総合ジャンプアップを狙うピナレロQ36.5プロサイクリング勢が逃げグループを牽引 photo:A.S.O.

各エースの総合成績を守りたいバーレーン・ヴィクトリアスやリドル・トレックがメイン集団を牽引。しかしタイム差は縮まらなかった photo:CorVos

ツールの風物詩、ひまわり畑の真っ只中を駆け抜ける photo:A.S.O.

ら逃げグループを先導したのはピドコックの総合成績ジャンプアップに絶好のチャンスが回ってきたQ36.5プロサイクリングだった。当初UAEチームエミレーツXRGがコントロールしていたメイン集団は大きなタイム差を許したため、ピドコックはバーチャルで総合3位にまで浮上する状況に。総合9位レニー・マルティネス(フランス)を擁するバーレーン・ヴィクトリアスがタイム差を詰めにかかったものの、ステージ優勝に意欲を燃やす逃げグループの意志と重なってタイム差は広がるばかり。

総合5位ポール・セクサス(フランス)要するデカトロンCMA CGM)や、最終的に総合4位フアン・アユソ(スペイン)擁するリドル・トレックも集団牽引に加わったものの、後半の2連続山岳区間でペースアップが入ったことも手伝って、2グループ間の差は全くと言っていいほど縮まらなかった。

逃げグループは3級山岳コル・デ・クロワをハイペースでこなし、メイン集団から8分リードで連続して現れる1級山岳バロン・ダルザスに突入する。体重の6倍出力で登坂時間23分、6.6倍出力で登坂時間20分の1級山岳では当然のようにクライマー勢による絞り込みとアタックが勃発した。まずはマキシム・ファンヒルス(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が仕掛け、人数が減った状態からルーク・プラップ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)がカウンターアタック。後方ではベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)が遅れていく中、積極的にペースを上げるピドコックがプラップを引き戻し、総勢9名で約15km続くダウンヒル区間をクリアした。

1級バロン・ダルザスで攻撃を仕掛けたマキシム・ファンヒルス(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

ラスト15kmで抜け出すマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー)とアロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ)

バロン・ダルザスで一時遅れていたティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)が合流して先頭グループは10名。一瞬ペースが落ちた残り16km区間で仕掛けたのは数的有利を得たジェイコ・アルウラーのマウロ・シュミット(スイス)と、アロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ)の2人。マークが厳しいピドコックは追従できず、シュミットとテハダが20秒差で先行することに。ジェイコは登坂区間でマイケル・マシューズ(オーストラリア)を失ったものの、それでもなおシュミットとプラップを使って先手を打ち続けた。

逃げる2名は20秒リードを保持したままラスト1kmアーチをくぐり、リードを確認しながらシュミット先行でフィニッシュ前へ。追い上げ届かない追走グループを尻目に、テハダの加速をきっかけに横一線のスプリント勝負が始まり、最後の最後で抜き返したシュミットが両手を振り上げる。先頭グループに3名を送り込んだジェイコ・アルウラーが数的優位を存分に活かして今大会初勝利をもぎ取った。

前輪を叩きつけてフィニッシュするマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) photo:CorVos

テハダとの一騎打ちを制したマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) photo:CorVos

トーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング)は2秒差のステージ3位。総合ジャンプアップに成功した photo:CorVos

グランツールとしては2021年ジロ・デ・イタリア第11ステージに続く区間2勝目となったシュミットは、コロナ禍真っ只中の2021年にクベカでプロデビューし、クイックステップを経て2023年から現チームに所属する26歳。クライマーながら加速力も兼ね備え、今年はツアー・ダウンアンダーで総合2位、セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリでステージ1勝+総合優勝を挙げるなど好調を維持してきた。

シュミットとテハダから2秒遅れたピドコックはステージ優勝こそ手が届かなかったものの、メイン集団が7分32秒遅れたことで総合成績を10位から4位にまでジャンプアップすることに成功した。「ステージ優勝を目指していたので複雑な気持ち。ただし火曜日のタイムトライアルではタイムを失ってしまうと思う」と言うものの、リポヴィッツも、セクサスも、さらにはアユソも追い抜き、総合3位エヴェネプールとのタイム差はたったの9秒にまで縮まっている。

自身初のツール区間優勝を挙げたマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) photo:A.S.O.

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)はマイヨジョーヌを危なげなく維持 photo:A.S.O.
中間スプリントで加点したマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)はマイヨヴェールを維持 photo:A.S.O.


総合4位に浮上したトーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング)は敢闘賞も獲得 photo:A.S.O.


ツール・ド・フランス2026第13ステージ結果
1位 マウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) 4:06:58
2位 アロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ)
3位 トーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング) +0:02
4位 マキシム・ファンヒルス(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
5位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツXRG)
6位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、ネットカンパニー・イネオス)
7位 ジョルダン・ジェガット(フランス、トタルエネルジー)
8位 クレマン・ブラズアフォンソ(フランス、グルパマFDJユナイテッド)
9位 ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)
10位 ルーク・プラップ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) +0:10
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 47:18:31
2位 ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +3:36
3位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +4:06
4位 トーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング) +4:15
5位 フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) +4:22
6位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) +4:35
7位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +4:44
8位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) +5:08
9位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) +5:45
10位 レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) +6:34
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 377pts
2位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) 336pts
3位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム) 333pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 42pts
2位 ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 27pts
3位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) 19pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) 47:22:53
2位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) +0:13
3位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) +0:46
チーム総合成績
1位 リドル・トレック 141:53:38
2位 UAEチームエミレーツXRG +9:18
3位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +36:58
text:So Isobe
photo:CorVos, A.S.O.
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