10〜12%の登りをこなしてからの緩斜面スプリント。早駆けしたフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)との差を自ら詰め、圧倒的な加速を披露したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が今大会2勝目を掴んだ。



5月14日(金)第7ステージ
ノタレスコ〜テルモリ 181km ★★


アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が拳を突き合わせるアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が拳を突き合わせる photo:LaPresse
5月14日(金)第7ステージ ノタレスコ〜テルモリ 181km ★★5月14日(金)第7ステージ ノタレスコ〜テルモリ 181km ★★ image:RCS Sport5月14日(金)第7ステージ ノタレスコ〜テルモリ 181km ★★5月14日(金)第7ステージ ノタレスコ〜テルモリ 181km ★★ image:RCS Sport


アドリア海に沿って南下し、アブルッツォ州からモリーゼ州に入るジロ・デ・イタリア第7ステージ。ステージ中盤にかけて丘上都市の4級山岳キエーティを通過するが、ティレーノ〜アドリアティコのような激坂は登場しない。その後もいくつかの丘を越えるがほぼフラットと言って良く、フィニッシュ手前には10〜12%の登り区間(マリオミラノ通り)が200mに渡って続く。

スプリンターはもちろん、登坂力とスピードを武器にするアタッカーにもチャンスが残されているこの日、ノタレスコのスタートラインに並んだ選手たちの中にドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、クベカ・アソス)の姿は無く。雨の第6ステージで落車し、昨年手術した左肘を再び痛めたことで帰宅を強いられている。

ピンクの傘が踊るノタレスコの街をスタートピンクの傘が踊るノタレスコの街をスタート photo:LaPresse
スタートフラッグが振られると同時に飛び立ったのは、今大会積極的に逃げるウンベルト・マレンゴ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ)とシモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)、そしてマーク・クリスティアン(イギリス、エオーロ・コメタ)の3名。メイン集団はこのファーストアタックを見送り、約4分のリードを許した。

誰もが「厳しかった」と口を揃える前日の雨中消耗戦と、この週末に続く山岳ステージに挟まれたこの日、メイン集団は超まったりペースでレースを進める。ティレーノ〜アドリアティコでおなじみの4級山岳キエーティを何事もなく通過(先頭通過はペロー)し、初日からの今大会通算1000km地点を通過。93km地点の第1中間スプリントではペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がメイン集団の先頭(全体の4位)で5ポイントを加算している。

この日のステージ平均スピードは38km/h台。カレブ・ユアン(オーストラリア)のステージ2勝目を狙うロット・スーダルはトーマス・デヘント(ベルギー)をタイムキーパー役に抜擢し、クベカ・アソスやアルペシン・フェニックスの牽引役たちと共にタイム差を削り取っていく。残り40kmで1分15秒、残り30kmで50秒と、残り20kmで30秒と、余裕を持ったペースメイクで集団スプリントへの準備を整えていった。

アブルッツォ州からモリーゼ州に向けて南下する第7ステージアブルッツォ州からモリーゼ州に向けて南下する第7ステージ photo:LaPresse
ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)がユアンを連れて登坂区間へジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)がユアンを連れて登坂区間へ photo:CorVos
落車や横風分断も何もない、極めて平穏なステージ。最後まで協調体制を貫いた逃げグループは残り17kmで飲み込まれ、フーガ(逃げ)ランキングでペローが1位、マレンゴが2位に躍進。力を蓄えた各チームが隊列を並べる中、先頭にはバーレーン・ヴィクトリアス列車を牽引する新城幸也(日本)の姿もあった。

ユンボ・ヴィズマの牽引でラスト4.3kmから始まるランドアバウト連続地帯をクリアし、マリオミラノ通りの登り終盤に飛び出したヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ)とダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)も決定的なリードを奪うには至らない。ユアンを従えたジャスパー・デブイスト(ベルギー)が2人をキャッチすると共に、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)がロングスパートを仕掛けた。

サプライズアタックを仕掛けたガビリアは大きなリードを得たものの、ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)たちを引き連れながら追撃するユアンが後方から飛んでくる。接触によるメカトラブルで4番手サガンが沈む中、ガビリアの後ろで一瞬タイミングを待ち、一気に踏み込んだユアンがライバルを突き放した。

ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)たちを引き離すカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)たちを引き離すカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:LaPresse
ステージ2勝目を掴んだカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)ステージ2勝目を掴んだカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:LaPresse
ユアンのステージを支えたチームメイトたちユアンのステージを支えたチームメイトたち photo:LaPresse
チモライやティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)を2車身以上突き放し、フィニッシュラインに辿り着いたユアンがチームジャージをアピールし、両手を突き上げる。逃げるガビリアを自ら引き戻し、そのまま圧倒的な力を披露した”ポケットロケット”が第5ステージに続くステージ2勝目を決めた。

18秒間の登りスプリントで、平均1010ワット、平均53.4km/hで踏み込んだユアンはジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス)に代わってマリアチクラミーノを獲得。「登坂開始前で既に始まっていたかのようなスプリントだった。だからこそ早めに集団前方に位置取ったけれど、チームは期待以上の走りで応えてくれた。特にジャスパー(デブイスト)の走りは素晴らしく、彼のおかげで脚を貯めることができたんだ」とユアンはチームの働きぶりに感謝している。

マリアチクラミーノを得たカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)マリアチクラミーノを得たカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:CorVos
マリアローザを堅守したアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ)マリアローザを堅守したアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ) photo:CorVos
翌日からジロは山岳決戦に突入。ユアンを含め、ピュアスプリンターたちは我慢の2日間を過ごし、月曜日の第10ステージに再びチャンスを見出すこととなる。

ジロ・デ・イタリア2021第7ステージ結果
1位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 4:42:12
2位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション)
3位 ティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
4位 マッテオ・モスケッティ(イタリア、トレック・セガフレード)
5位 アンドレア・パスクアロン(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)
6位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
7位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
8位 マックス・カンター(ドイツ、チームDSM)
9位 フィリッポ・フィオレッリ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ)
10位 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
62位 新城幸也(日本、バーレーン・ヴィクトリアス)
DNS ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、クベカ・アソス)
マリアローザ 個人総合成績
1位 アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ) 26:59:18
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:00:11
3位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) 0:00:16
4位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック) 0:00:24
5位 ルイス・フェルファーク(ベルギー、アルペシン・フェニックス) 0:00:25
6位 ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・NIPPO) 0:00:38
7位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) 0:00:39
8位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) 0:00:41
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) 0:00:47
10位 サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ) 0:00:49
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 106pts
2位 ティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・フェニックス) 83pts
3位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス) 76pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ジーノ・マーダー(スイス、バーレーン・ヴィクトリアス) 26pts
2位 ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) 18pts
3位 ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ) 16pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ) 26:59:18
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:00:11
3位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) 0:00:16
チーム総合成績
1位 バーレーン・ヴィクトリアス 80:59:58
2位 イネオス・グレナディアーズ 0:00:39
3位 バイクエクスチェンジ 0:02:48
text:So Isobe
photo:CorVos