ついに明日、開幕する第112回ツール・ド・フランス。本格山岳が2週目以降に詰め込まれた本大会で、栄光のマイヨジョーヌを掴むのは誰か。前回覇者ポガチャルや王座奪還を狙うヴィンゲゴー、五輪2冠のエヴェネプールなど有力候補をプレビューします。
栄光の証、マイヨジョーヌを巡る3週間

総合2位に6分以上の大差で総合優勝したタデイ・ポガチャル(スロベニア) photo:A.S.O.
フランスの夏を象徴するひまわりと同じ、鮮やかな黄色に輝くマイヨジョーヌ。それは個人総合成績で首位に立つ選手のみが、着用を許される特別なジャージだ。つまり初日である7月5日(土)から7月27日(日)にかけて走る総距離3,338.8kmの道のりを、最も少ない時間で走破した選手が、総合優勝の栄誉に輝く。
仮に総合成績で2名が同タイムの場合は、個人タイムトライアルの成績を1/100秒のタイムまで比較し、それでも同タイムの場合は全ステージの順位の合計が少ない選手が上位に。それでも決まらない場合は最終ステージの順位で決定する。

昨年は4日目から最後までマイヨジョーヌを守り抜いたタデイ・ポガチャル(スロベニア) photo:A.S.O.
1919年(第13回大会)から続くマイヨジョーヌは、1987年から一貫してフランスのLCL銀行(コーポレートカラーも黄色)が今年もジャージのスポンサーを務める。もちろん毎ステージのマイヨジョーヌ着用者に与えられる「ライオンのぬいぐるみ」も健在だ。
また各ステージでは順位に応じたボーナスタイムが与えられ、ステージ1位の選手は10秒、ステージ2位の選手は6秒、ステージ3位の選手は4秒のタイムが総合時間からマイナスされる(個人TTは除く)。今年のトピックとしては、昨年あったカテゴリー山岳でのボーナスタイムは廃止され、中間スプリントでのボーナスタイムもなくなった。
絶対王者ポガチャルに死角なし?

前日のチームプレゼンに現れたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos
連覇を狙うタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)にヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)が挑む。そしてあと一つ残された総合表彰台に立つのは?
それが、2025年ツール・ド・フランスにおける総合争いの勢力図。そう言い切ってしまえるほど、いまポガチャルの強さは圧倒的で、それを追うヴィンゲゴーとの2強体制は盤石だ。
昨年はステージ6勝を飾り、大会終盤の山岳決戦を含む3連勝を決めたポガチャルは、自身4度目の総合優勝を目指す。今年は2月のUAEツアーから好調を維持し、ストラーデビアンケからリエージュ〜バストーニュ〜リエージュまで春のクラシックレースを総なめにした。中でも特筆すべきは世界一過酷なレースと言われるパリ〜ルーベで2位に入ったこと。そして高地合宿を挟み、出場した前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネでも圧巻の登坂で区間2勝&総合優勝と、誰にも止められない強さを誇っている。

前哨戦のドーフィネを制したポガチャル photo:A.S.O.

ポガチャル総合優勝の鍵を握るジョアン・アルメイダ(ポルトガル) photo:CorVos
ただ、そんな世界王者に唯一の死角と言えるのが、そのチーム力かもしれない。ドーフィネの山岳ステージでは、ライバルのヴィンゲゴーが数名のアシストを残すなか、単騎での戦いを強いられるシーンが目立った。もちろんジョアン・アルメイダ(ポルトガル)にアダム・イェーツ(イギリス)と世界トップクライマーを擁してはいるものの、山岳の最終局面でヴィンゲゴーに対し、ポガチャルのアシストが何人残っているかが注目される。ただ、ポガチャルがそんな懸念をものともしない強さを見せる可能性も高いが。
個のポガチャルに組織のヴィンゲゴーが対抗する

万全の状態でポガチャルに挑むヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos
一方、ヴィンゲゴーの脇を固めるのは盤石なアシスト陣だ。安定感抜群のアシストを見せるセップ・クス(アメリカ)をはじめ、ジロ・デ・イタリアで総合優勝したサイモン・イェーツ(イギリス)が連続参戦。特に直前に2029年末までの契約延長が発表されたマッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ)はセカンドエースを担える強さがあり、またジロで見せた献身的なアシストも記憶に新しいワウト・ファンアールト(ベルギー)は言及する必要がないほど心強い存在となる。
肝心のヴィンゲゴーは、大怪我から急遽参戦して区間1勝&総合2位に入った昨年から一転、今年は万全の状態でマイヨジョーヌ争いに臨む。
エーススプリンターを抱える2人の戦略

昨年マイヨブランを獲得したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos
昨年、初出場ながら区間1勝を挙げ、総合3位&マイヨブラン(ヤングライダー賞)を獲得したレムコ・エヴェネプール(ベルギー)。オフシーズンのトレーニング中の事故で大怪我を負ったものの、驚異的な回復力で4月に復帰した。するとツール・ド・ロマンディとドーフィネの個人TTで勝利、さらに直前のTTベルギー選手権でも優勝。今大会2つある個人TTでどれだけタイムを稼ぐことができるかが鍵となる。
ただエヴェネプールの懸念点は、今年メンバーにエーススプリンターのティム・メルリール(ベルギー)がいること。つまり平坦ステージではエヴェネプールに割くアシストが手薄になる可能性がある。また重要な山岳アシストにはヴァランタン・パレパントル(フランス)やマキシミリアン・シャフマン(ドイツ)などがいるが、UAEやヴィスマと比べると見劣りする。

ジロからの連戦となるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.
昨年落車リタイアしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は、その無念を払拭すべく今年も参戦。だが、こちらもスプリンターのヨルディ・メーウス(ベルギー)がステージ優勝を狙う。またパリ〜ニースで総合2位、ドーフィネで総合3位に入った若きエース候補、フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ)の走りが注目される。
その他の総合上位候補は、カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)やベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)、エンリク・マス(スペイン、モビスター)、オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL)といった選手たち。また今年アムステルゴールドレースを制し、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合5位のマティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック)にも注目だ。
栄光の証、マイヨジョーヌを巡る3週間

フランスの夏を象徴するひまわりと同じ、鮮やかな黄色に輝くマイヨジョーヌ。それは個人総合成績で首位に立つ選手のみが、着用を許される特別なジャージだ。つまり初日である7月5日(土)から7月27日(日)にかけて走る総距離3,338.8kmの道のりを、最も少ない時間で走破した選手が、総合優勝の栄誉に輝く。
仮に総合成績で2名が同タイムの場合は、個人タイムトライアルの成績を1/100秒のタイムまで比較し、それでも同タイムの場合は全ステージの順位の合計が少ない選手が上位に。それでも決まらない場合は最終ステージの順位で決定する。

1919年(第13回大会)から続くマイヨジョーヌは、1987年から一貫してフランスのLCL銀行(コーポレートカラーも黄色)が今年もジャージのスポンサーを務める。もちろん毎ステージのマイヨジョーヌ着用者に与えられる「ライオンのぬいぐるみ」も健在だ。
また各ステージでは順位に応じたボーナスタイムが与えられ、ステージ1位の選手は10秒、ステージ2位の選手は6秒、ステージ3位の選手は4秒のタイムが総合時間からマイナスされる(個人TTは除く)。今年のトピックとしては、昨年あったカテゴリー山岳でのボーナスタイムは廃止され、中間スプリントでのボーナスタイムもなくなった。
絶対王者ポガチャルに死角なし?

連覇を狙うタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)にヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)が挑む。そしてあと一つ残された総合表彰台に立つのは?
それが、2025年ツール・ド・フランスにおける総合争いの勢力図。そう言い切ってしまえるほど、いまポガチャルの強さは圧倒的で、それを追うヴィンゲゴーとの2強体制は盤石だ。
昨年はステージ6勝を飾り、大会終盤の山岳決戦を含む3連勝を決めたポガチャルは、自身4度目の総合優勝を目指す。今年は2月のUAEツアーから好調を維持し、ストラーデビアンケからリエージュ〜バストーニュ〜リエージュまで春のクラシックレースを総なめにした。中でも特筆すべきは世界一過酷なレースと言われるパリ〜ルーベで2位に入ったこと。そして高地合宿を挟み、出場した前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネでも圧巻の登坂で区間2勝&総合優勝と、誰にも止められない強さを誇っている。


ただ、そんな世界王者に唯一の死角と言えるのが、そのチーム力かもしれない。ドーフィネの山岳ステージでは、ライバルのヴィンゲゴーが数名のアシストを残すなか、単騎での戦いを強いられるシーンが目立った。もちろんジョアン・アルメイダ(ポルトガル)にアダム・イェーツ(イギリス)と世界トップクライマーを擁してはいるものの、山岳の最終局面でヴィンゲゴーに対し、ポガチャルのアシストが何人残っているかが注目される。ただ、ポガチャルがそんな懸念をものともしない強さを見せる可能性も高いが。
個のポガチャルに組織のヴィンゲゴーが対抗する

一方、ヴィンゲゴーの脇を固めるのは盤石なアシスト陣だ。安定感抜群のアシストを見せるセップ・クス(アメリカ)をはじめ、ジロ・デ・イタリアで総合優勝したサイモン・イェーツ(イギリス)が連続参戦。特に直前に2029年末までの契約延長が発表されたマッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ)はセカンドエースを担える強さがあり、またジロで見せた献身的なアシストも記憶に新しいワウト・ファンアールト(ベルギー)は言及する必要がないほど心強い存在となる。
肝心のヴィンゲゴーは、大怪我から急遽参戦して区間1勝&総合2位に入った昨年から一転、今年は万全の状態でマイヨジョーヌ争いに臨む。
エーススプリンターを抱える2人の戦略

昨年、初出場ながら区間1勝を挙げ、総合3位&マイヨブラン(ヤングライダー賞)を獲得したレムコ・エヴェネプール(ベルギー)。オフシーズンのトレーニング中の事故で大怪我を負ったものの、驚異的な回復力で4月に復帰した。するとツール・ド・ロマンディとドーフィネの個人TTで勝利、さらに直前のTTベルギー選手権でも優勝。今大会2つある個人TTでどれだけタイムを稼ぐことができるかが鍵となる。
ただエヴェネプールの懸念点は、今年メンバーにエーススプリンターのティム・メルリール(ベルギー)がいること。つまり平坦ステージではエヴェネプールに割くアシストが手薄になる可能性がある。また重要な山岳アシストにはヴァランタン・パレパントル(フランス)やマキシミリアン・シャフマン(ドイツ)などがいるが、UAEやヴィスマと比べると見劣りする。

昨年落車リタイアしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は、その無念を払拭すべく今年も参戦。だが、こちらもスプリンターのヨルディ・メーウス(ベルギー)がステージ優勝を狙う。またパリ〜ニースで総合2位、ドーフィネで総合3位に入った若きエース候補、フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ)の走りが注目される。
その他の総合上位候補は、カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)やベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)、エンリク・マス(スペイン、モビスター)、オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL)といった選手たち。また今年アムステルゴールドレースを制し、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合5位のマティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック)にも注目だ。
歴代のツール総合優勝者
2024年 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) |
2023年 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク) |
2022年 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク) |
2021年 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) |
2020年 | タデイ・ポガチャル(スロベニア) |
2019年 | エガン・ベルナル(コロンビア) |
2018年 | ゲラント・トーマス(イギリス) |
2017年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2016年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2015年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2014年 | ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア) |
2013年 | クリストファー・フルーム(イギリス) |
2012年 | ブラドレー・ウィギンズ(イギリス) |
2011年 | カデル・エヴァンス(オーストラリア) |
2010年 | アンディ・シュレク(ルクセンブルク)※コンタドール失格による繰り上げ |
2009年 | アルベルト・コンタドール(スペイン) |
2008年 | カルロス・サストレ(スペイン) |
2007年 | アルベルト・コンタドール(スペイン) |
2006年 | オスカル・ペレイロ(スペイン)※ランディス失格による繰り上げ |
2005年 | |
2004年 | |
2003年 | |
2002年 | |
2001年 | |
2000年 | |
1999年 | |
1998年 | マルコ・パンターニ(イタリア) |
1997年 | ヤン・ウルリッヒ(ドイツ) |
1996年 | ビャルヌ・リース(デンマーク) |
1995年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1994年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1993年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1992年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1991年 | ミゲル・インドゥライン(スペイン) |
1990年 | グレッグ・レモン(アメリカ) |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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