最大勾配23%の激坂アングリルにフィニッシュしたブエルタ第13ステージ。残り4.5kmで先頭に立ったジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)が、一度もヴィンゲゴーに前を譲ることなくフィニッシュに先着。自身初のステージ優勝を得ると共に、ヴィンゲゴーとのタイム差を46秒に縮めた。



スタート前に表彰された前日勝者のフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

9月5日(金)第13ステージ
カベソン・デ・ラ・サル〜アングリル 202.7km(山岳/山頂フィニッシュ)
獲得標高差 3,964m

第13ステージ カベソン・デ・ラ・サル〜アングリル image:A.S.O.

今大会のハイライトであり、同時に最長ステージでもある第13ステージは激坂アングリルにフィニッシュする山岳決戦。 海岸線に沿う約147kmの平坦路を経て最初に臨むのは1級山岳モスケタ(距離6.3km/平均8.4%)で、その後、急勾配の下りと僅かな平坦区間を進み、1級山岳コルダル(距離5.5km/平均8.8%)を駆け上がる。

そして選手たちの前に立ちはだかるのが、超級山岳アングリル(距離12.4km/平均9.7%)だ。登坂距離12.4kmの平均勾配が9.7%という数字からでもその難易度がわかるが、特に急勾配なのはラスト6.5kmから。たびたび20%オーバーの区間が登場し、平均約14%、最大23%というプロ選手でも蛇行して登るほどの激坂区間が待ち受ける。

この日はスタート直後にベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)がリタイア。ツール・ド・フランスで区間優勝し、その勢いのまま総合上位を目指したものの、第10ステージでの落車で肋骨を痛め、回復しなかったためレースを去った。

カベソン・デ・ラ・サルを出発した選手たち photo:A.S.O.

海岸線沿いの平坦路で、逃げを目指す激しい戦いが勃発した photo:A.S.O.

最初の2時間が時速51km/hというハイスピードで繰り広げられたアタック合戦の末、25名の逃げ集団が形成される。この逃げにはマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)が4日連続で加わり、マイヨプントスのリード拡大を狙った。 一方、逃げとの差を3分前後でコントロールしたプロトンはヴィスマ・リースアバイクが先導し、レース後半に入るとQ36.5プロサイクリングも前に出た。

147kmに及ぶ平坦路を終え、逃げ集団はニコラス・ヴィノクロフ(カザフスタン、XDSアスタナ)を先頭に1級山岳モスケタをクリア。プロトンではアントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)がメカトラに見舞われ、アンテルマルシェ・ワンティの選手と2名で集団復帰を目指すところに、リードと椅子につながれた犬がコース上に飛び出すハプニングがあったものの、間一髪で回避した。

4分弱とリードを拡げた逃げ集団は、続く1級山岳コルダル(距離5.5km/平均8.8%)の手前に設定された中間スプリントをピーダスンが狙い通り先頭通過する。これによりランキング2位のイーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック)との差を81ポイントまで拡大。その後ピーダスンは脚を緩めてプロトンへ戻り、レース先頭はヴィノクロフ、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、イネオス・グレナディアーズ)、ジェフェルソン・セペダ(エクアドル、モビスター)の3名に絞られた。

メイン集団はヴィスマ・リースアバイクがペースメイクした photo:A.S.O.

この日も沿道には多くのガザの旗が振られた photo:CorVos

一方のプロトンは再びヴィスマ・リースアバイクが主導権を握り、1級山岳を使って徐々に先頭とのタイム差を縮めていく。頂上はここもヴィノクロフがトップで通過して下りをクリア。いよいよアングリルに突入した直後、ガザの旗を持つ抗議者がコースを塞ぎ、先頭3名が足止めされるアクシデントが発生。約20秒を失ったが、すぐにレースは再開された。

プロトンはマイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を着るジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG)の先導で、約2分遅れでアングリルに入る。先頭ではセペダが遅れ、ギヤトラブルに苦しむヴィノクロフをユンゲルスが背中を叩いて落ち着かせる場面も。 その2名をUAEチームエミレーツXRGがハイペースで追走し、残り7kmでユンゲルスが単独先頭に立った。

超級山岳アングリルに突入したボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、イネオス・グレナディアーズ)ら3名 photo:A.S.O.

長時間にわたり先頭を引いたヴァインが役割を終えると、フェリックス・グロスシャートナー(オーストリア)が引き継ぐ。このペースで総合3位トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)が後退し、総合5位フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール)も遅れはじめる。 そしてグロスシャートナーが残り6km地点を過ぎて離れ、ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)が先頭に出た精鋭集団には、ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)、そしてマイヨロホをアシストするセップ・クス(アメリカ)の4名が残った。

アルメイダの作るペースは残り5.4kmでユンゲルスを抜き去り、残り4.5kmでヒンドレーとクスがドロップ。激坂アングリル決戦はアルメイダとヴィンゲゴーの一騎打ちとなった。

淡々と激坂を進んでいくジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)とヴィンゲゴー photo:CorVos

単独で追走するトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) photo:CorVos

ヴィンゲゴーはクスの合流待ちのためか前を引かず、アルメイダも先頭交代を求めずに淡々と踏み続ける。 残り1km地点を過ぎても2名の間に差は生まれず、激坂区間を終え、霧の立ち込める残り500mを共に通過。緩斜面のスプリントに持ち込まれるとアルメイダが先着し、ステージ優勝を決めた。

ヴィンゲゴーに前を譲ることなく、フィニッシュに飛び込んだジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

ブエルタで初勝利を飾ったジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

4度目の出場で、これがブエルタ初のステージ優勝となったアルメイダ。「チームメイトに感謝している。彼らがこの勝利の鍵を握っていた。麓から自分のペースで登り、ベストを尽くしただけだ。ヨナス(ヴィンゲゴー)は常に背後についたが、ラスト1kmは自分も限界だった。常に彼のアタックに備え、フィニッシュ手前で差されると思っていた。だが2年前の経験でコースを熟知しており、最終コーナーを先頭で抜ければ勝てると分かっていた。素晴らしい日だ」 と語った。ボーナスタイム10秒を加算し、総合首位ヴィンゲゴーとの差は50秒から46秒に縮まった。

3位には28秒遅れでヒンドレーが入り、総合順位は8位から4位にジャンプアップ。4位はクスで、追走から遅れたピドコックは粘りを見せて7位(1分16秒遅れ)でフィニッシュし、辛くも総合3位を守った。

チームに2日連続、6勝目をもたらしたジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

勝利は逃しながらも、マイヨロホを守ったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.
ブエルタ・ア・エスパーニャ2025第13ステージ
1位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) 4:54:15
2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)
3位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:28
4位 セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +0:30
5位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) +0:52
6位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +1:11
7位 トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) +1:16
8位 マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)
9位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) +2:15
10位 アベル・バルデルストーネ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) +3:06
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 49:30:54
2位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) +0:46
3位 トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) +2:18
4位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +3:00
5位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) +3:15
6位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +4:01
7位 マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) +4:33
8位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) +4:54
9位 トースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス) +5:21
10位 セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +5:26
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 192pts
2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 122pts
3位 イーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック) 111pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) 46pts
2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 33pts
3位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) 26pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) 49:34:55
2位 マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) +0:32
3位 ウィリアムジュニア・ルセルフ(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +4:22
チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツXRG 147:40:07
2位 ヴィスマ・リースアバイク +7:32
3位 XDSアスタナ +40:01
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.