コースレコードが生まれた乗鞍男子チャンピオンクラス、上位入賞バイクにフォーカス。悲願の初優勝を遂げた田中裕士を筆頭に、トップスリーの愛車を紹介してもらった。それぞれのバイクへのこだわりに注目です。



田中裕士/スコット ADDICT RC

チャンピオンクラス1位、田中裕士スコットとADDICT RC photo:So Isobe

11回目の乗鞍チャンピオンクラス挑戦で初優勝、しかも、これまでのコースレコードを1分近く更新する53分46秒で距離20.5km/獲得標高1,260mの乗鞍エコーラインを駆け上がったのが田中裕士。「無冠の強豪ヒルクライマー」が、ライバル全員に「あのキツいタイミングから先行されたらもう無理だった」と言わしめる走りで悲願の優勝をかっさらった。

乗鞍新チャンピオンのバイクは、スコットが昨年11月末に発表したばかりの新型ADDICT RCだ。これまでスペシャライズドのAethosに乗っていたが、「ピドコックのストラーデビアンケの走りに憧れて。下り上手い選手は憧れますよね」と今年春に乗り換え。「そこまで硬すぎることもなくて、平坦も速くて良いバイクです。下りも安定していて怖くないんです。流石ピドコックが乗るバイクだけありますね」と気に入って乗り込んでいるとのこと。

富士ヒルよりも軽さが問われる乗鞍だけに、フロントチェーンリングはシングル仕様に変更。サドルは乗り慣れたS-WORKSを使い続けており、ホイールは知り合いに借りたというアライズの軽量ホイールで、タイヤはコンチネンタルのGRANDPRIX5000。軽量のTT TRではなく通常品のS TRでサイズは28だ。ディスクローターはガルファー製で、これまた軽さを求めた使用だ。完成車重量は5.7kgに留められているという。

「ピドコックに憧れて...」と購入したADDICT RC。カラーリングもお気に入りとのこと(台湾KOMのボトルにも注目) photo:So Isobe

ウルフトゥースのチェーンリングでフロントシングルに。トータル重量は5.7kgだという photo:So Isobe
アライズのカーボンホイールに、コンチネンタルのGRANDPRIX5000をセット。ブレーキローターも軽さ重視でガルファー製だ photo:So Isobe



「昔はボトル無しで登っていたんですが、ここ最近はボトル付きです。途中で水を入れた方がパフォーマンスが安定しますから」とのこと。

もっとも田中はここ数年ヒルクライムのみならず、ロードレースにも積極的に参戦中。ADDICT RCをロードレース仕様に組み替えて、今週末のツール・ド・ふくしま、そしてツール・ド・おきなわに参戦するという。「ヒルクライムも、ロードレースもどちらでも武器になるバイクなので優秀ですね。見た目もカッコいいし、まだまだずっと乗り続けたいな、と思っています」。



成田眸(mkw)/キャノンデール SuperSix EVO Hi-MOD

チャンピオンクラス2位、成田眸(mkw)とキャノンデール SuperSix EVO Hi-MOD photo:So Isobe

富士ヒルクライムの男子選抜3位に続く、乗鞍チャンピオンクラス2位。今シーズン、国内を代表する2つのヒルクライムで自身最高の成績を出したのが成田眸(mkw)。富士ヒルに続く2度目のご登場頂くこととなりました。

バイクは変わらずキャノンデールの軽量オールラウンドモデルであるSuperSix EVO Hi-MOD。富士ヒルからの変更点はホイールをアライズ製に変えたことだと言う。「あまり硬いホイールは苦手なので、剛性を調整できるこのブランドにしました。以前のものよりも柔らかいんですが、後半戦に脚を残すことができるので自分には合っていましたね」と言う。

富士ヒルの際と比べてホイールをアライズに変更。自分の好みに合わせたセットアップだという photo:So Isobe

「今年はだいぶ調子良く走れています。去年までは、ただがむしゃらに練習していただけだったんですが、今年はオフシーズンから計画を立てて、上手くレストも組み込みながらスケジュールを作ったのが大きいかな、と思っています」と好記録の理由を言う。ロードレース参戦は今のところ予定になく、来月末には信州高山のヒルクライムに参戦予定。「でも、優勝した田中さんも出るらしいんです。今回はとても強かったですから、今から緊張しています」と笑いながら話してくれた。



玉村喬(天照CST)/ルック 785 HUEZ RS

チャンピオンクラス3位、玉村喬(天照CST)とルック 785 HUEZ RS photo:So Isobe

「レース状況を見つつ、自分から仕掛けられるタイミングがあれば攻めようと思っていた」という目論見通り、再三に渡るアタックでレースを作り、最後は残り1km区間でパスされた成田を追い込み3位に滑り込んだのが玉村喬(天照CST)。積極的な走りを自身の国内メジャーヒルクライム最高リザルトに繋げた。

「今回3位だったので、来年は勝ちたいという気持ちがより強くなりました。次戦は去年優勝したまえばし赤城山ヒルクライムなので、連覇を狙っていきたいと思います」と意気込む玉村のバイクは、ルックの785 HUEZ RS(リムブレーキモデル)。2019年に購入してからずっとヒルクライムの相棒として峠を駆け上がってきた。「ルックというブランドに憧れていましたし、その時から登りが好きだったので軽いモデルが欲しかったんです。この(モンドリアン)カラーも凄く気に入っていて、勢いで買ってしまいました」と購入動機を話す。何台か他のバイクも所有しているが、その中でも思い入れが強いのだそう。

アクションカメラでオンボード映像を撮影 photo:So Isobe
ブレーキキャリパーはヒルクライマー御用達のeeブレーキ photo:So Isobe


コンポーネントは初代RED、ルックのZEDクランクでフロントシングル化 photo:So Isobe

パーツ構成は「ザ・ヒルクライムマシン」そのものだ。コンポーネントは軽さを重視してスラムの初代RED eTAPで、ブレーキは多くのヒルクライマーから愛されたeecycleworksの逸品。クランクはルックのZEDだが、乗鞍に合わせてフロントシングルギア(36T)に変更したという。ホイールも軽さ重視で普段のカンパニョーロ・ZONDAからアライズのチューブラーに履き替えたとのこと。完成車重量は5.6kgに抑えられている。

「もちろん富士ヒルも上位、できれば優勝を狙いたいと思っていますが、個人的には乗鞍の方が格式高いイメージです。来年はぜひ表彰台の真ん中に立てるように頑張ります」と意気込みを話してくれた。

text&photo:So Isobe

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