1級山岳にフィニッシュしたブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージで、ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が残り3.5kmからアタック。牽制に入ったヴィンゲゴーらを振り切り、プロ初勝利を手に入れた。

マイヨモンターニャのヴァイン photo:A.S.O. 
レインウェアを着るマイヨロホのヴィンゲゴー photo:CorVos

スタート地点に並んだ4賞ジャージ photo:A.S.O.
9月10日(水)第17ステージ
オ・バルコ・デ・バルデオーラス〜エル・モレデロ 143.2km(丘陵)
獲得標高差 3,371m

第17ステージ オ・バルコ・デ・バルデオーラス〜エル・モレデロ image:A.S.O.
ブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージはコース中央に3級山岳をひとつ含むものの、全体は平坦基調から山頂フィニッシュへ至るブエルタらしいレイアウト。この日は今大会9度目の山頂フィニッシュであり、これを終えると山岳決戦は最終日前日の第20ステージのみとなる。
強風のためコース短縮の心配もされた最終1級山岳アルト・デ・エル・モレデロは、登坂距離8.8kmに平均勾配9.7%と過酷の一言。序盤で勾配は10%に達し、ラスト4kmでやや緩むが、最後までタイム差が広がりやすい勾配が頂上まで続く。
154名に減った選手たちは雨の降るオ・バルコ・デ・バルデオーラスを出発し、最初の1時間は時速50km/hを超えるハイペースで進行。総合上位が期待されながら不調なアントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)も入った12名の逃げ集団に、ピクニック・ポストNLはティモ・ローセンとハイス・レイムライゼ(共にオランダ)を送る。逃げグループで最も総合タイムの良いアロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ)でも11分48秒遅れだったものの、総合13位とトップ10の選手たちを脅かす存在であったこともあり、メイン集団は2分以上のリードを許さなかった。

序盤から約1時間にわたり激しいアタック合戦が繰り広げられた photo:A.S.O.

この日もパレスチナの旗を掲げたデモ隊がコースへの侵入を試みた photo:CorVos 
プロトンをハイペースで牽引したヴィスマ・リースアバイク photo:CorVos
雨が上がり、プロトンが何度か分裂しながらも大きな動きなく選手たちは3級山岳に到着。先頭は今大会7度目の逃げとなったジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)が先頭通過し、プロトンではマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)が遅れる。残り27km地点の中間スプリントでのポイント獲得も可能だったマイヨプントス(ポイント賞ジャージ)だが、ここまでの疲れか、チームメイトと共にグルペットを形成しフィニッシュした。
変わらずプロトンを牽引するヴィスマ・リースアバイクは、前日に体調不良でリタイアしたヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー)の分もディラン・ファンバーレとウィルコ・ケルデルマン(共にオランダ)が先頭交代しながら高速牽引。逃げとの差は2分を下回る水準で推移し、中間スプリントはルーカ・ファンボーヴェン(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)がローセンをスプリントで退け、先頭で通過。25歳にして初出場のグランツールで見せ場を作った。
最終山岳へと続く緩斜面の登りに入ると、フィニッシュまで23km地点で逃げからティベーリが早くも仕掛ける。そこに遅れたテハダとレイムライゼが合流。しかしレッドブル・ボーラ・ハンスグローエがハイペースを刻むプロトンが、残り12km地点で先頭3名を引き戻した。

先頭に立ったアントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)とアロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ) photo:A.S.O.

最終1級山岳で先頭は総合上位6名に絞られた photo:A.S.O.
そして、いよいよ1級山岳アルト・デ・エル・モレデロ(登坂距離8.8km/平均9.7%)での山岳バトルが幕を開ける。集団先頭はヴィスマ・リースアバイクへと戻り、早くも総合6位のフェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール)が遅れる。残り6km手前では総合4位ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が総合5位ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア)と共にアタック。これまでの疲れが蓄積したためか、アシスト全員が遅れ単騎での戦いを強いられたジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)も離されるが、マイペースで先頭集団に復帰した。
残り5km地点で形成された6名による精鋭集団
ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)
ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)
トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)
ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)
今年8月上旬の山火事で黒く焼けた山岳をヒンドレーが力強く牽引。レース前はヴィンゲゴーとアルメイダの一騎打ちと予想された山岳で、残り3.5kmからペリツァーリが繰り返しアタックの末に抜け出す。マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)を着ながらも4分21秒遅れと総合トップ3の争いに関与せず、またチームメイトであるヒンドレーの存在もあり、この動きは容認された。

残り3.5kmで集団を飛び出し、単独先頭に立ったジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.

マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)が追走集団の先頭を牽引する photo:A.S.O.
マイヨブランコのライバルであるリッチテッロが追ったものの、ペリツァーリが残り3kmを過ぎると後続は牽制に入り動きが止まる。そして最大34秒まで開いたリードを保ったペリツァーリがハイペースで踏み続け、フィニッシュに到達。ブエルタ初出場の21歳が、昨年のジロ・デ・イタリア第16ステージで僅かに勝利に届かなかった山頂フィニッシュで、グランツール初の区間優勝を果たした。

アタックを決め、プロ初勝利を手に入れたジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

2位でフィニッシュしたトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) photo:CorVos
区間2位に与えられるボーナスタイム6秒を賭けた争いは、爆発力を発揮したピドコックが獲得。3位にはヒンドレーが入り、総合3位ピドコックとのタイム差は縮められなかったものの、チームメイトとのワンスリーフィニッシュを達成。ヴィンゲゴーは20秒遅れの4位、アルメイダは22秒遅れの5位だった。
ブエルタの大舞台でプロ初勝利を飾ったペリツァーリ。「間違いなく選手キャリアで最高の瞬間だ。今日は奇妙な感覚があり、自分の日になるのではと思っていた。チームやジャイ(ヒンドレー)らチームメイトに感謝したい。麓からハイペースで牽引し、ピドコックに対して攻撃を仕掛けた。ラスト3kmは先頭集団に僕ら2名がいて、僕がアタックしても誰も追ってこないだろうと思った」とレースを振り返った。
ペリツァーリはイタリア中部マルケ州出身の21歳。18歳だった2022年に現在のVFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネでプロデビューを果たし、2024年に初出場したジロ第16ステージでは山頂フィニッシュで区間2位に入る。その実績と将来性が評価され、今年レッドブル・ボーラ・ハンスグローエに移籍し、期待どおりの走りを披露した。

勝利と共にマイヨブランコ獲得を大きく引き寄せたジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.



9月10日(水)第17ステージ
オ・バルコ・デ・バルデオーラス〜エル・モレデロ 143.2km(丘陵)
獲得標高差 3,371m

ブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージはコース中央に3級山岳をひとつ含むものの、全体は平坦基調から山頂フィニッシュへ至るブエルタらしいレイアウト。この日は今大会9度目の山頂フィニッシュであり、これを終えると山岳決戦は最終日前日の第20ステージのみとなる。
強風のためコース短縮の心配もされた最終1級山岳アルト・デ・エル・モレデロは、登坂距離8.8kmに平均勾配9.7%と過酷の一言。序盤で勾配は10%に達し、ラスト4kmでやや緩むが、最後までタイム差が広がりやすい勾配が頂上まで続く。
154名に減った選手たちは雨の降るオ・バルコ・デ・バルデオーラスを出発し、最初の1時間は時速50km/hを超えるハイペースで進行。総合上位が期待されながら不調なアントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)も入った12名の逃げ集団に、ピクニック・ポストNLはティモ・ローセンとハイス・レイムライゼ(共にオランダ)を送る。逃げグループで最も総合タイムの良いアロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ)でも11分48秒遅れだったものの、総合13位とトップ10の選手たちを脅かす存在であったこともあり、メイン集団は2分以上のリードを許さなかった。



雨が上がり、プロトンが何度か分裂しながらも大きな動きなく選手たちは3級山岳に到着。先頭は今大会7度目の逃げとなったジョエル・ニコラウ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)が先頭通過し、プロトンではマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)が遅れる。残り27km地点の中間スプリントでのポイント獲得も可能だったマイヨプントス(ポイント賞ジャージ)だが、ここまでの疲れか、チームメイトと共にグルペットを形成しフィニッシュした。
変わらずプロトンを牽引するヴィスマ・リースアバイクは、前日に体調不良でリタイアしたヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー)の分もディラン・ファンバーレとウィルコ・ケルデルマン(共にオランダ)が先頭交代しながら高速牽引。逃げとの差は2分を下回る水準で推移し、中間スプリントはルーカ・ファンボーヴェン(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)がローセンをスプリントで退け、先頭で通過。25歳にして初出場のグランツールで見せ場を作った。
最終山岳へと続く緩斜面の登りに入ると、フィニッシュまで23km地点で逃げからティベーリが早くも仕掛ける。そこに遅れたテハダとレイムライゼが合流。しかしレッドブル・ボーラ・ハンスグローエがハイペースを刻むプロトンが、残り12km地点で先頭3名を引き戻した。


そして、いよいよ1級山岳アルト・デ・エル・モレデロ(登坂距離8.8km/平均9.7%)での山岳バトルが幕を開ける。集団先頭はヴィスマ・リースアバイクへと戻り、早くも総合6位のフェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール)が遅れる。残り6km手前では総合4位ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が総合5位ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア)と共にアタック。これまでの疲れが蓄積したためか、アシスト全員が遅れ単騎での戦いを強いられたジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)も離されるが、マイペースで先頭集団に復帰した。
残り5km地点で形成された6名による精鋭集団
ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)
ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)
トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)
ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)
今年8月上旬の山火事で黒く焼けた山岳をヒンドレーが力強く牽引。レース前はヴィンゲゴーとアルメイダの一騎打ちと予想された山岳で、残り3.5kmからペリツァーリが繰り返しアタックの末に抜け出す。マイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)を着ながらも4分21秒遅れと総合トップ3の争いに関与せず、またチームメイトであるヒンドレーの存在もあり、この動きは容認された。


マイヨブランコのライバルであるリッチテッロが追ったものの、ペリツァーリが残り3kmを過ぎると後続は牽制に入り動きが止まる。そして最大34秒まで開いたリードを保ったペリツァーリがハイペースで踏み続け、フィニッシュに到達。ブエルタ初出場の21歳が、昨年のジロ・デ・イタリア第16ステージで僅かに勝利に届かなかった山頂フィニッシュで、グランツール初の区間優勝を果たした。


区間2位に与えられるボーナスタイム6秒を賭けた争いは、爆発力を発揮したピドコックが獲得。3位にはヒンドレーが入り、総合3位ピドコックとのタイム差は縮められなかったものの、チームメイトとのワンスリーフィニッシュを達成。ヴィンゲゴーは20秒遅れの4位、アルメイダは22秒遅れの5位だった。
ブエルタの大舞台でプロ初勝利を飾ったペリツァーリ。「間違いなく選手キャリアで最高の瞬間だ。今日は奇妙な感覚があり、自分の日になるのではと思っていた。チームやジャイ(ヒンドレー)らチームメイトに感謝したい。麓からハイペースで牽引し、ピドコックに対して攻撃を仕掛けた。ラスト3kmは先頭集団に僕ら2名がいて、僕がアタックしても誰も追ってこないだろうと思った」とレースを振り返った。
ペリツァーリはイタリア中部マルケ州出身の21歳。18歳だった2022年に現在のVFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネでプロデビューを果たし、2024年に初出場したジロ第16ステージでは山頂フィニッシュで区間2位に入る。その実績と将来性が評価され、今年レッドブル・ボーラ・ハンスグローエに移籍し、期待どおりの走りを披露した。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2025第17ステージ
1位 | ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 3:37:00 |
2位 | トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) | +0:16 |
3位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +0:18 |
4位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:20 |
5位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) | +0:22 |
6位 | マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) | +0:26 |
7位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) | +0:53 |
8位 | トースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
9位 | セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:58 |
10位 | マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:44 |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 64:53:55 |
2位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) | +0:50 |
3位 | トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) | +2:28 |
4位 | ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +3:04 |
5位 | ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +3:51 |
6位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) | +4:57 |
7位 | マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) | +4:59 |
8位 | セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +6:24 |
9位 | トースタイン・トレーエン(ノルウェー、バーレーン・ヴィクトリアス) | +7:06 |
10位 | マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +10:16 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 237pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 153pts |
3位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | 115pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) | 61pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 41pts |
3位 | ルイス・フェルヴァーケ(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 32pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 64:57:46 |
2位 | マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) | +1:08 |
3位 | ウィリアムジュニア・ルセルフ(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +8:01 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツXRG | 193:33:00 |
2位 | ヴィスマ・リースアバイク | +27:58 |
3位 | デカトロンAG2Rラモンディアール | +1:06:07 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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