9月1日(火)、川崎競輪場にて競輪ワールドシリーズの決勝戦が行われた。8月30日(日)から始まった3日間の戦いは、今季のシリーズ最終節でもあり、世界のスピードを目に焼き付けようと、平日にもかかわらず多くの観客を集めた。

この日の川崎は、曇り時々晴れの過ごしやすい気候。ガールズL級決勝でマチルド・グロ(フランス)がヘティ・ファンデルワウ(オランダ)とのマッチレースを制すると、男子S級決勝ではケイリン世界王者ハリー・ラブレイセン(オランダ)がバンクレコードタイとなる上がり10.5秒の走りで駆け抜け、表彰式では祝福とともに名残を惜しむファンの熱い声援が飛んだ。

曇り基調も、時折晴れ間も見られた9月1日の川崎競輪場 photo: Yuichiro Hosoda

川崎が誇る2人の2025グランプリ覇者、郡司浩平と佐藤水菜の等身大パネルとチャンピオンジャージが飾られていた西スタンド1階 photo: Yuichiro Hosoda
場内のガイダンスコーナーには、昨年のKEIRINグランプリ覇者・郡司浩平の父・盛夫さん(神奈川、元50期)もいらした photo: Yuichiro Hosoda


競輪ワールドシリーズに参加した海外選手達の等身大パネル photo: Yuichiro Hosoda
男子選手の向かい側には海外のガールズ選手達の等身大パネルも photo: Yuichiro Hosoda


第10レースのA級決勝、優勝した真船圭一郎(福島) photo: Yuichiro Hosoda



L級決勝 グロがファンデルワウとの踏み合いを制し完全優勝

7月末の立川開催と同じく海外勢からはマチルド・グロ(フランス)、ヘティ・ファンデルワウ(オランダ)の2名が参戦した当開催。L級ガールズ決勝は男子S級の1つ前となる第11レースに行われた。

スタートから動いたのは石井貴子(東京)と五味田奈穂(千葉)。そこからより強く前に出ていったのは石井で、先頭誘導員の後ろを取った。続く五味田が2番手を確保すると、後ろで那須萌美(宮崎)と並走していた髙橋梨香(埼玉)が車を上げて3番手、那須は4番手となる。そこから車間を空けながらグロが5番手に収まる。最後方からはファンデルワウが外から上げてグロの後ろを取ろうとするも、グロにピタリと付いた西脇美唯奈(愛知)がこれを譲らず、2コーナーで再び後ろに下げる。

3番車・石井貴子(東京)と2番車・五味田奈穂(千葉)が先頭を狙っていく photo: Yuichiro Hosoda

石井貴子(東京)を先頭に、1列で周回を消化していく photo: Yuichiro Hosoda

③石井貴子、②五味田奈穂、④髙橋梨香、①那須萌美、⑤グロ、⑥西脇、⑦ファンデルワウで整った隊列は、4周回のうち2周をこの状態で終える。残り2周となる赤板のバックストレッチで先頭誘導員が離れると、先頭の石井が後ろを一瞥した後、そのまま先行。2番手の五味田は、車間を空けながら後方を2度3度と警戒しながらそれに付いていく。

打鐘が鳴る中、最終周回へと向かう直線に入ると石井が加速。後方ではファンデルワウが最終1コーナーで西脇をかわしてグロの後ろを取る。石井との車間を切っていた五味田も踏み上げて再び石井の直後に付くと、3番手の髙橋も追従、前3人が1列で脚を合わせるような形に。

3番車の石井貴子(東京)が先行して最終周回へと突入 photo: Yuichiro Hosoda

後方ではマチルド・グロ(フランス)とヘティ・ファンデルワウ(オランダ)が、踏み込みを開始 photo: Yuichiro Hosoda
2コーナーでマチルド・グロ(フランス)が那須萌美(宮崎)に並びかけていく photo: Yuichiro Hosoda


しかし2コーナー出口からバックストレッチにかけて踏み上げていったグロが、4番手の那須をまず捲ると、これを追うファンデルワウとともに3コーナーまでに一気に先頭へ躍り出る。2センター手前で完全に出切った後は、外のファンデルワウ、内のグロ、2人が競り合いながら後続を引き離していく。

直線に入ってその差をさらに広げると、前に出たのはマチルド・グロ。ファンデルワウに3/4車身差を付けてフィニッシュ。ワールドシリーズ最後の開催を3連勝で締め括り、笑顔を見せた。2人と3着に入ったベテラン髙橋梨香との差は、実に6車身。「これが世界の走り」と言わんばかりの2人のマッチレースだった。

3コーナー入口、前を行く2車をかわしにかかるマチルド・グロ(フランス)とヘティ・ファンデルワウ(オランダ) photo: Yuichiro Hosoda
マチルド・グロ(フランス)とヘティ・ファンデルワウ(オランダ)が、最終コーナーで後続との差を開いていく photo: Yuichiro Hosoda


内のマチルド・グロ(フランス)がヘティ・ファンデルワウ(オランダ)を下してL級優勝 photo: Yuichiro Hosoda

2019年の国際競輪でも走ったグロは、かねてからその人柄を知るファンにも大人気。優勝インタビューの場で祝福や「また来てね!」の声が飛ぶと、何度も手を振り、「来年もまた来たい」と笑顔で応えていた。

3着に入った髙橋梨香(埼玉)。ガールズケイリン最年長優勝記録を持つ46歳の大ベテラン photo: Yuichiro Hosoda
祝福に手を振りながら優勝インタビューの場に登壇するマチルド・グロ(フランス) photo: Yuichiro Hosoda


「来年もまた来たいです」と手を振り、喝采を浴びるマチルド・グロ(フランス) photo: Yuichiro Hosoda
L級ガールズ決勝 結果
車番 選手名 級班 着差 上りタイム
1着 5 マチルド・グロ(フランス) L1 11.6秒
2着 7 ヘティ・ファンデルワウ(オランダ) L1 3/4車身 11.6秒
3着 4 髙橋梨香(埼玉) L1 7車身 12.3秒
4着 2 五味田奈穂(千葉) L1 1車身 12.5秒
5着 1 那須萌美(宮崎) L1 1/8車輪 12.2秒
6着 6 西脇美唯奈(愛知) L1 1車身1/2 12.3秒
7着 3 石井貴子(東京) L1 3/4車身 12.8秒


S級決勝 ラブレイセンがFI戦全勝でシリーズを締める

競輪ワールドシリーズ2026最後のレースを制したのは、やはりこの男、ハリー・ラブレイセン――。ガールズ決勝を終え、いつもより間が空いた第12レースは16時24分にスタートし、計5周、総距離2025mで争われた。

号砲鳴って1番車の佐々木眞也(神奈川)が踏み出して先頭に出ると、2番車・中川誠一郎(熊本)もそれに続く。そこから2〜3車身空けて齋藤雄行(神奈川)、桑原大志(山口)が追い、さらに車間を空けながらラブレイセンが5番手、佐藤一伸(福島)、渡邊雅也(神奈川)がひと塊で最初のコーナーを抜けていく。

1番車・佐々木眞也(神奈川)がSを取りに出る。2番車・中川誠一郎(熊本)がそれに続く photo: Yuichiro Hosoda

車間を大きく開いてハリー・ラブレイセン(オランダ)が前4車を追走 photo: Yuichiro Hosoda
佐々木眞也(神奈川)が齋藤雄行(神奈川)を前に迎え入れ、隊列は一列棒状に photo: Yuichiro Hosoda


バックストレッチで先頭の佐々木に齋藤が追いつくと、これを前に呼び入れ、神奈川2車が前受け。同じ南関東で別線を選択してラブレイセンと組んだ渡邊は、2センターまでに車を1つ上げてラブレイセンの番手に。入れ替わった単騎の佐藤が最後方で構えることとなった。

4コーナーで整った並びは、⑥齋藤雄行―①佐々木眞也、②中川誠一郎、⑤桑原大志、⑦ラブレイセン―④渡邊雅也、③佐藤一伸の順で2周目へと入ると、先頭誘導員のペースに合わせて一本棒でレース前半をこなして行く。

1列となって周回を重ねる選手達 photo: Yuichiro Hosoda

神奈川の2人が後ろを警戒しながら赤板周回へ photo: Yuichiro Hosoda
ハリー・ラブレイセン(オランダ)が前との車間を空け始める photo: Yuichiro Hosoda


残り2周の標識が出てホームストレッチを過ぎると、ラブレイセンが前を行く桑原との車間を取り始める。バックストレッチに入る頃にはその差を3車身以上取ると、先頭の齋藤も同様に先頭誘導員との車間を空けて、後方を振り返りながら警戒。

打鐘が鳴り出しても誘導が残っている状態で3コーナーに突入すると、内を空けたラブレイセンと渡邊の隙を突いて佐藤が上昇。外並走となったラブレイセンにブロックを仕掛けつつ前へ駆け出す。4コーナーでようやく先頭誘導員が離脱すると、最前列の神奈川ラインも加速、齋藤が風を切って最終周回へと入っていった。

先頭誘導員が離脱しかける中、3番車の佐藤一伸(福島)が内を捌いてラブレイセンを外へと追いやる photo: Yuichiro Hosoda

最終周回へ、齋藤雄行(神奈川)が佐々木眞也(神奈川)を連れてペダルを踏み込む photo: Yuichiro Hosoda
ハリー・ラブレイセン(オランダ)が佐藤一伸(福島)を捲り返す photo: Yuichiro Hosoda


佐藤のブロックにより一旦後れを取ったラブレイセンだが、1コーナーから巻き返して佐藤とその前にいた桑原を捲っていく。2コーナーでは前を駆ける齋藤を援護すべく佐々木が外へと車を振ると、並びかけていた中川が外へと膨れ、中川を抜かんとしていたラブレイセンもイエローラインの外へと押し出される。

だが、ラブレイセンはこれも諸共せず2コーナー出口から再び加速。神奈川2車を捲った中川をも飲み込むと、3コーナーで先頭に。コンビを組んだ渡邊もそれに遅れることなく追従すると、4コーナー半ばでこの2車が完全に前へと出切った。

2番手を行く佐々木眞也(神奈川)が車を外へ振り、中川誠一郎(熊本)とハリー・ラブレイセン(オランダ)を牽制 photo: Yuichiro Hosoda

3コーナーでハリー・ラブレイセン(オランダ)が中川誠一郎(熊本)の前に出切る photo: Yuichiro Hosoda
番手から渡邊雅也(静岡)が追いすがるもハリー・ラブレイセン(オランダ)が1着フィニッシュ photo: Yuichiro Hosoda


フィニッシュ後、ハリー・ラブレイセン(オランダ)が勝利のガッツポーズを繰り出す photo: Yuichiro Hosoda

直線向いてラブレイセンが先頭で駆け上がると、渡邊が外からこれを差すべく踏み上げるも、ラブレイセンには4分の3車身及ばず。しかし3着中川には4車身差をつける圧勝劇でラインワン・ツー、優勝したラブレイセンの強さとともに、追走しきって前をも狙った渡邊の勝負根性も光るレースとなった。

ラブレイセンが刻んだ上がり10.5秒は、2025年4月20日に脇本雄太が川崎記念2日目第11Rで記録したバンクレコードに並ぶ高速タイム。後続の選手がハンドルを投げる中、顔を上げ余裕を持ってのフィニッシュで世界王者の貫禄を見せつけた。8月の和歌山GIII「ワールドサイクリスト支援競輪」こそ、ジョセフ・トゥルーマン(イギリス)に直線かわされ3着に沈んだラブレイセンだが、5場所参戦したFI戦は予選から決勝まで全て勝ち抜き完全優勝。初めて走った漢字の「競輪」は、1着18回、3着1回と言う圧巻の成績で自らの実力を示し、幕を下ろした。

カメラマンに向け、ガッツポーズを見せるハリー・ラブレイセン(オランダ) photo: Yuichiro Hosoda
観客の声援にガッツポーズで応じるハリー・ラブレイセン(オランダ) photo: Yuichiro Hosoda


多くの観衆が残り、ハリー・ラブレイセン(オランダ)の優勝を祝福した photo: Yuichiro Hosoda
S級決勝 結果
車番 選手名 級班 着差 上りタイム
1着 7 ハリー・ラブレイセン(オランダ) S2 10.5秒
2着 4 渡邊雅也(静岡) S1 3/4車身 10.4秒
3着 2 中川誠一郎(熊本) S1 4車身 10.9秒
4着 1 佐々木眞也(神奈川) S1 2車身 11.1秒
5着 3 佐藤一伸(福島) S2 1車身 10.9秒
6着 5 桑原大志(山口) S1 1/2車輪 11.1秒
7着 6 斎藤雄行(神奈川) S2 5車身 11.7秒
レース後、今回参戦した海外選手達に、この日のレース展開や当シリーズを通して経験した日本や競輪の印象を尋ねた。



L級ガールズ1着、マチルド・グロ

終始笑顔で囲み取材を受けていたマチルド・グロ(フランス) photo: Yuichiro Hosoda

3番車の石井選手は先行型だと分かっていたし、後ろについたへティにも注意を払いながらレースを進めていました。いいレースになったと思います。

最初は失格となったり最も起伏のあるシリーズとなったけれど、最後にこうして優勝で締めくくることができて本当に嬉しい。日本にいる間は全部のレースを楽しんで走ることができたし、素晴らしい日本の人達と交流することができて、いい気分のまま世界選手権に向けて準備することができそう。また来年競輪を走りたいし、選手として全てのレースで勝ちたいと思う。



L級ガールズ2着、ヘティ・ファンデルワウ

記者の質問に答えるヘティ・ファンデルワウ(オランダ) photo: Yuichiro Hosoda

日本のレースをすごく楽しむことができたし、特別な思い出になりました。来日前は日本に対してお互いを尊重する文化がある、というイメージを抱いていて、実際に体験してみると、競輪イベントのオーガナイズも素晴らしいし、たくさんの選手同士の友達を作ることができて良かった。みんなとは競輪シールを交換したり、特に最終レースとなった今回は、たくさんの人達と会話を楽しむことができました。

今後は帰国した後に1週間をおいて、世界選手権に向けたトレーニングキャンプに参加します。3つのタイトル防衛がかかっているので集中していきたいし、今回日本で得たものがどうキャリアに活きるか楽しみにしたい。



S級1着、ハリー・ラブレイセン

笑顔で囲み取材に応じるハリー・ラブレイセン(オランダ) photo: Yuichiro Hosoda

2番車が僕の後ろについていて、何か動いてくるとは思っていたよ。かなり厳しくブロックされたけど、うまく自分のレースに集中できたことは良かったと思う。何度も何度もブロックされて自分のタイミングが狂ったけれど、幸い脚はあったんだ。

(上がりタイムのバンクレコードが10.5秒と聞いて)悔しいけれど、来年更新したいね!

日本で競輪を走れてとても楽しかった。ファンもたくさん応援してくれたし、たくさんの日本の選手たちと友達になることができた。彼らに対してすごくリスペクトしているし、日本という場所で競輪競技に参戦できて本当に嬉しかったよ。

「ジャパニーズ・ケイリン・レジェンド」中川誠一郎(熊本)と肩を組むハリー・ラブレイセン(オランダ) photo: Yuichiro Hosoda
ラインを組んだ渡邊雅也(静岡)とラブレイセンが健闘を称え合う photo: Yuichiro Hosoda


19戦18勝という結果には満足しているけれど、和歌山で落とした一つは惜しかったね。もう少し早めに仕掛けていれば全勝優勝できたかもしれないね。「トゥルー・ラブ・ライン」だったから彼が勝てて良かったとは思う。

一番思い出になっているのは先日の岐阜かな。トゥルーマン選手と、山口選手と一緒に走ることができた。今回ブロック有りの日本の競輪を体験できたので、国際競技だったり、次日本のレースを走る時にその経験は活かすことができるかもしれない。とにかくいい収穫になったと思う。

両手を振りながらステージを去るハリー・ラブレイセン(オランダ) photo: Yuichiro Hosoda



世界の走り再び――2027年も競輪ワールドシリーズ開催

8月25日(火)、公益財団法人JKAは、2027年の競輪ワールドシリーズについて、開催決定を告知した。全8節で実施期間は9〜11月と、秋口からのスタートとなる。

海外選手も参加する4日制のグレードレース「ワールドサイクリスト支援競輪(GIII)」は、2027年10月16日(土)〜19日(火)に別府競輪場での開催を予定。今年参戦した海外選手達の再来日とともに、新たなワールドクラスの選手達の招聘にも期待したい。

止まぬ声援に手を振るマチルド・グロ(フランス) photo: Yuichiro Hosoda

text: Yuichiro Hosoda (Race), So Isobe (Interview)
photo: Yuichiro Hosoda

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