マシュー・リチャードソンが、トルコ・コンヤで行われた200mFTT(フライングタイムトライアル)の記録挑戦で8秒941をマーク。それまでの世界記録9秒088を上回り、人類で初めて9秒の壁を破った。



200mFTTで8秒941をマシュー・リチャードソン (c)British Cycling

200mFTT(フライングタイムトライアル)で世界新記録となる8秒941を記録し、9秒を突破することにも成功したのはマシュー・リチャードソン。8月14日、標高1,200mの高地に位置するトルコ・コンヤのベロドロームで挑戦を成功させた。平均スピードは80.5km/hだった。

200mFTTとは、助走をつけた状態から200mの計測区間をどれだけ速く走れるかという競技。トラック競技ではスプリント種目の予選として実施され、競輪では「上がりタイム」として記録される。日本記録は男子が太田海也の9秒350、女子が佐藤水菜の10秒170だ。

長年記録達成を狙っていたというリチャードソン。2024年パリオリンピックでは9秒091を叩き出して新記録を打ち立てたものの、その数分後にオランダのハリー・ラブレイセンが9秒088をマーク。今年初めにコンヤで行われたネイションズカップでも9秒041というタイムを出したものの、走行ラインに問題があったとして取り消されるなど、紆余曲折を経ての記録達成だ。

世界記録を達成したマシュー・リチャードソン (c)British Cycling

「やり遂げたんだ。9秒切りのためにここに来たんだ。ここに来た目的を達成できて本当に最高だよ。少しホッとした」と言うリチャードソンは、9歳でオーストラリアに移住してからオーストラリアナショナルチームのメンバーとして走り、パリ五輪では2つの銀メダルと1つの銅メダルを獲得。五輪後に母国イギリスチームに復帰した際には無断で国籍変更をしたとしてオーストラリア車連から反発を受けていた。

「(これまで乗ったことのあるコースよりも)ずっと速かった。バイクに少し指示を出せば、ほとんど勝手にハンドルが切れるような、いわば僕は乗客のような感じだった。スプリントレーンの外側をかなり走ったからもっと余裕があるって分かっている。このトラックはコーナーの立ち上がりがかなり難しいと分かっていたので、そういう場面では慎重に走ったけれど、それ以外はとにかく全力だったよ」と加えている。



text:So Isobe