優勝候補たちが動かず、積極的に動いた精鋭集団から勝者が生まれたロード世界選手権女子エリートロードレース。24歳のマグドレーヌ・ヴァリエール(カナダ)が最後の石畳坂で仕掛け、キャリア最大の勝利と共にアルカンシエルを手に入れた。



フォレリングを擁するオランダ photo:CorVos
UCI会長に3期目の再選を果たしたラパルティアン氏 photo:CorVos


優勝候補筆頭のポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス) photo:UCI

女子エリートロードレースコースプロフィール image:UCI

2025年のロード世界選手権も残すところあと2日。9月27日は女子エリートのロードレースが行われ、103名の選手が世界王者の証であるアルカンシエルを目指して出場した。舞台はルワンダの首都キガリ。コースは距離164.6km、1周約15km×11周回で、獲得標高は約3,350mという過酷なレイアウトだ。

2連覇中のロッテ・コペッキー(ベルギー)を欠く集団は、最初の1周を探り合いのまま通過した。キガリ・ゴルフ峠(距離0.8km/平均8.1%)と石畳のミュール・ド・キミハーウラ(距離1.3km/平均6.3%)で脚の感触を確かめるように進むなか、まずはカリーナ・シュレンプ(オーストリア)が飛び出し、単独逃げを敢行。レースは1時間半が経過しても、シュレンプのリードは約3分を維持し続けた。

最大出場人数の7名を揃えたオランダがメイン集団を掌握するなか、レース半ばでようやく動きが出た。ウソア・オストラサ(スペイン)の加速を機にカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー)がアタック。単騎出場ながらツール・ド・フランス・ファムのステージ勝利を持つヴァシュの仕掛けでプロトンが活性化し、シュレンプとのタイム差は一気に縮小した。

1周目は誰も飛び出さない、静かな立ち上がりとなった photo:UCI

単独で逃げたカリーナ・シュレンプ(オーストリア) photo:CorVos

ヴァシュを捉え、シュレンプを30秒差にまで追い詰めた局面で、ベルギーからはジュリー・ファンデフェルデが発進する。32歳のベテランは先頭のシュレンプに合流し、続いてシリン・ファンアンローイ(オランダ)もブリッジに成功。イタリアが組織的にペースを上げてタイムギャップを管理し、同時にプロトンは人数を減らしていく展開となった。

やがて先頭からはシュレンプとファンデフェルデが遅れ、23歳のファンアンローイが単独で残り4周へ。しかし残り57km、約50名に絞られたプロトンがこれを吸収すると、すかさずミレイア・ベニト(スペイン)とノエミ・リュエッグ(スイス)が前へ。激しい追走の応酬の末、先頭には8名が加わり、計10名の強力な先頭集団が形成された。

この先頭グループにはプロトン最年長の41歳マビ・ガルシア(スペイン)や実力者ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド)らが名を連ねた。一方で、アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)は遅れ、約20名に縮小したプロトンには、優勝候補と目されたポーリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)、デミ・フォレリング(オランダ)、マーレン・ロイサー(スイス)らが含まれていたが、互いを牽制し合ったため、追走のペースは上がらなかった。

プロトンで様子を伺うフェランプレヴォやフォレリング photo:UCI

先頭は4名、後にヴァリエールやガルシアら3名に絞られた photo:UCI

先頭のリードがプロトンに対して1分47秒に達するなか、残り22kmのキガリ・ゴルフ峠でガルシアが揺さぶりをかける。これにフィッシャーブラックとマグドレーヌ・ヴァリエール(カナダ)が対応し、各国のエースが揃う3人の先頭が誕生。さらにミュール・ド・キミハーウラでアントニア・ニーダーマイヤー(ドイツ)とリーアンヌ・マルクス(オランダ)が合流して5人となり、勝負は最終周へ雪崩れ込んだ。

プロトンではエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)が反撃に打って出たが、協調は整わず速度は上がらない。先頭でもローテーションが噛み合わず、まずマルクスがドロップし、続いてニーダーマイヤーも遅れ、勝負はガルシア、フィッシャーブラック、ヴァリエールの3名に絞られた。

そして11度目のミュール・ド・キミハーウラの石畳の急坂に入るや、ヴァリエールが間髪入れず加速する。フィッシャーブラックとガルシアはそのスピードに反応しきれず、ヴァリエールは単独で頂上をクリア。大観衆が待つフィニッシュへと駆け抜け、最後の緩斜面もダンシングで押し切り、何度も後方を確認しながら勝利を確定させた。

最後の石畳坂で仕掛け、独走勝利したマグドレーヌ・ヴァリエール(カナダ) photo:CorVos

フィニッシュ地点でヴァリエールを待ち受けていたアリソン・ジャクソン photo:UCI

「仲間が私を信じてくれたからこそ、私も自分を信じることができた。本気で挑み、そのための準備もしてきた。調子が良かったので仕掛け、後悔だけはしたくなかった。スプリントでニアム(フィッシャーブラック)に勝てないことは分かっていた。だから彼女が少し垂れたのを見て『今しかない』と自分に言い聞かせて仕掛けたら、うまくいった。来年はモントリオールで世界選手権が開催されるので完璧な形になった。これを勝つのが夢で、それが叶い、いまはただただ信じられない気持ち」とヴァリエールは語った。

カナダ・ケベック州シェルブルック出身のヴァリエールは、UCI(国際自転車競技連合)が運営するWCCチームでキャリアをスタートさせた24歳。その後2022年から現チームのEFオートリー・キャノンデールに所属し、プロ初勝利にして唯一の勝利は昨年1月のトロフェオ・パルマ・フェミナ(UCI1.1)だった。

2位はフィッシャーブラック、3位には41歳のベテランであるガルシア。新星ヴァリエールとともに表彰台を分け合い、キガリでの激戦が幕を閉じた。

ロード世界選手権2025女子エリートロードレース表彰台:2位フィッシャーブラック、1位ヴァリエール、3位ガルシア photo:UCI

チームメイトたちと優勝を喜ぶマグドレーヌ・ヴァリエール(カナダ) photo:UCI
ロード世界選手権2025 女子エリートロードレース結果
1位 マグドレーヌ・ヴァリエール(カナダ) 4:34:48
2位 ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド) +0:23
3位 マビ・ガルシア(スペイン) +0:27
4位 エリーズ・シャベイ(スイス) +0:41
5位 リーアンヌ・マルクス(オランダ) +0:57
6位 アントニア・ニーダーマイヤー(ドイツ) +1:17
7位 デミ・フォレリング(オランダ) +1:34
8位 キンバリー・ルコート(モーリシャス)
9位 マーレン・ロイサー(スイス)
10位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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