アメリカに場所を移したUCI MTBワールドカップ第9戦。XCCとXCOを制覇したクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング)が1991年以来となるアメリカ人選手によるシリーズ総合優勝を確定させている。



女子エリートのXCCレースを制したジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン、キャニオン・CLLCTV XCO) photo:UCI
男子エリートのXCCを制したクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング) photo:UCI



MTBレースの最高峰、UCI MTBワールドカップ(W杯)はヨーロッパラウンドと世界選手権を終えて北米大陸での最終ラウンド2連戦へ。10月3日-5日間日程で、従来開催地となってきたスノーシューから場所を変え、アメリカはニューヨーク州北東部にあるレイク・プラシッドでシリーズの第9戦が開催された。

3日に開催されたのが短距離高強度のXCC(クロスカントリーショートトラック)。女子ではジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン、キャニオン・CLLCTV XCO)が世界女王アレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン)をロングスパートで破って勝利。男子は開幕5戦を制したものの、パル・アリンサル(アンドラ)で連勝記録が途絶えて以来調子を落としていたクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング)が序盤から圧倒的なパワーを見せつけて母国で復活勝利を遂げている。

序盤から独走したジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン、キャニオン・CLLCTV XCO) photo:UCI

本戦となるXCO(クロスカントリーオリンピック)の女子レースでは、世界選手権で初のエリートタイトルを奪ったリスヴェッズが序盤から飛ばしに飛ばした。スタートループの登坂区間でスルスルと先頭に立ち、食い下がるラウラ・スティガー(オーストリア、スペシャライズドファクトリーレーシング)を切り離して独走体制に持ち込んだ。

序盤からの独走という得意の勝ちパターンに持ち込んだ世界女王に対し、2番手グループを組むW杯ランキングリーダーのサマラ・マクスウェル(ニュージーランド、デカトロン・フォードレーシングチーム)やイヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシング・ピレリ)、ケラーたちのタイム差は全7周回の3周目で1分以上に到達。彼女たちは2番手争いに甘んじることしかできなかった。

熾烈なアタック合戦を繰り返す2番手グループを、大きく引き離したリスヴェッズがアルカンシエルでの初勝利を達成した。

2番手グループを牽引するイヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシング・ピレリ) photo:UCI
アルカンシエルでの初勝利を挙げたジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン、キャニオン・CLLCTV XCO) photo:UCI


XCO女子エリート表彰台 photo:UCI

2016年リオ五輪で女子クロスカントリー金メダルを獲得して一躍スター選手になったものの、家族の死とチームとの確執、精神的なストレスからの活動休止からの復活劇。レース直後のインタビューで、アップダウンのキャリアにどんな意味があるのかを聞かれたリスヴェッズは「まず健康でいることが第一で、毎日を楽しむように努めること。辛い時も、色々な感情もあって当然。サスティナブルな形でスポーツを続けることが本当に大切だと思う」と答えている。

XCOを制したクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング)。1-1勝利で総合優勝を確定させた photo:UCI

男子エリートレースを掌握したのはスペシャライズドファクトリーレーシングの面々だった。母国レースでXCCを制して波に乗るブレヴィンスや若手のアドリアン・ボワシ(フランス)が主導権を握り、現役引退したニノ・シューター(スイス)の代わりにスコット・スラムMTBレーシング入りしたファビオ・プントナー(スイス)や、マティス・アザロ(フランス、オリジンレーシングチーム)、ルカ・マルタン(フランス、キャノンデールファクトリーレーシング)が食いついてトップグループが形成された。

後半戦に入ると第2グループが合流したものの、やはりブレヴィンスとボワシがライバル勢のアタックを許さず、最終周回にブレヴィンスがアタック。他チームで唯一追従できたアザロを振り落とし、勝負は序盤からレースを引っ張り続けてきたチームメイトどうしの一騎打ちに持ち込まれた。

めきめきと頭角を現したアドリアン・ボワシ(フランス、スペシャライズドファクトリーレーシング) photo:UCI

母国開催のW杯で記録を達成したクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング) photo:UCI

牽制からのゴールスプリントを制したのは馬力に勝るブレヴィンス。ショートトラックからの1-1勝利を達成し、来週末の最終戦を待たずしてシリーズランキングの総合優勝を確定させた。

アメリカ人選手がワールドカップの総合優勝を達成したのは1991年のジョン・トマック以来34年ぶり。シーズン序盤は絶好調だったものの、そこから不調に苦しんでいたブレヴィンスにとって完全復活をアピールする形となった。「支えてくれたみんなに感謝を。本気でこのスポーツを好きだと思っているし、素晴らしいレースだった。シーズン中は何度も自分を信じ直す必要もあったけれど、最終的にチームメイトとスプリントで勝つことができただなんて本当に素晴らしいことだ」と母国大会で歴史を書き換えたブレヴィンスは話している。


UCI MTBワールドカップ2025 第9戦 XCO女子エリート結果
1位 ジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン、キャニオン・CLLCTV XCO) 1:20:15
2位 イヴィ・リチャーズ(イギリス、トレックファクトリーレーシング・ピレリ) 1:22:31
3位 サマラ・マクスウェル(ニュージーランド、デカトロン・フォードレーシングチーム) 1:22:46
4位 サヴィリア・ブランク(アメリカ、デカトロン・フォードレーシングチーム) 1:22:51
5位 アレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン) 1:23:50
UCI MTBワールドカップ2025 第9戦 XCO男子エリート結果
1位 クリストファー・ブレヴィンス(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング) 1:19:54
2位 アドリアン・ボワシ(フランス、スペシャライズドファクトリーレーシング) 1:19:54
3位 マティス・アザロ(フランス、オリジンレーシングチーム) 1:19:56
4位 マルティン・ヴィダウレ(チリ、スペシャライズドファクトリーレーシング) 1:19:54
5位 シモーネ・アヴォンデット(イタリア、ウィリエール・ヴィットリアファクトリーレーシング) 1:19:58
text:So Isobe
photo:UCI