その強さはまさに圧倒的。リドル・トレックのお膳立てを受けたジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)がジャパンカップクリテを制圧。平均50.7km/hという歴代最速レースを制した。



寺田吉騎をメンバー入りさせたバーレーン・ヴィクトリアス photo:Yuichiro Hosoda

ファンの声援に応える新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo:Yuichiro Hosoda
大声援に応えるAstemo 宇都宮ブリッツェンのメンバー photo:Yuichiro Hosoda



まさに無敵、まさに圧勝。リドル・トレックの鉄壁アシストがジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)の勝利を導いた。

宇都宮の目抜き通りを駆けるジャパンカップクリテリウム。2010年に初開催されたハイスピードレースもコロナ禍での2度の中止を挟みつつ今年で14回目。市中心部を貫く宇都宮大通りを規制した往復コースを走る短距離高強度レースで、世界からやってきたトップ選手たちがスピードを披露した。

オリオン通りと交差するシンボルロードから大通りに入り、大観衆の前をゆっくりとパレードラン。曇り空の下、15時40分に1周2.25kmの特設コースを15周回する合計33.75km。時間にして40分ほどのスピードレースが始まった。

スタートダッシュでレースに火をつけたマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) photo:Makoto AYANO

序盤に飛び出したレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)とライリー・シーアン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) photo:Makoto AYANO

ファーストアタックを決めたクリスツ・ニーランツ(ラトビア、イスラエル・プレミアテック)に対して孫崎大樹(ヴィクトワール広島)と寺田吉騎(バーレーン・ヴィクトリアス)が合流したものの、2周目にはメイン集団に引き戻される。続いてレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)とライリー・シーアン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)が飛び出し、さらには集団前方に位置取っていたミランも逃げに合流する展開に。さすがにメイン集団はミランの逃げを許すはずもなく吸収し、決定的な逃げが決まらないままレース時間の1/3を消化した。

イスラエル・プレミアテックが積極的にアタックを仕掛けるものの、集団前方にメンバーを配置したリドル・トレックがその全てをチェックし、追いかけ、潰していく。メタリックカラーの特別バイクをあつらえたメンバーが、ツール・ド・フランスのマイヨヴェール(ポイント賞)をイメージしたグリーンバイクに乗るミランを勝たせるために、そしてジャパンカップクリテのチーム6連勝を達成するために、徹底的な集団コントロールを続けた。

アタックを繰り返すイスラエル・プレミアテック。しかしそのいずれもが単発に終わった photo:Makoto AYANO

前日のクリテリウムで脚に刺激を入れるマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) photo:Makoto AYANO
メイン集団を徹底コントロールするリドル・トレック photo:Makoto AYANO


平均50km/hオーバーの超ハイスピードレース。隊列が長く伸びる photo:Makoto AYANO

クリテリウム特別チームとして走った織田聖は、「集団コントロールをしたいのはトレックだけ。他チームはその体制を崩したかった。トレックがコントロールしている時は少しだけペースが緩むけど、他チームが絶えず攻撃するとペースが上がる。終始アタックが掛かり続ける展開だったのでかなりキツかったです」と集団内の様子を振り返る。

9周目に入ると「明日に向けて脚の感触を確かめたかった」と言うシーアンが単独抜け出しに成功したものの、共に逃げる選手はなし。リドルが徹底コントロールするメイン集団は、他選手のアタックを許さずにシーアンを飲み込んだ。

12周終了時点のスプリントポイントを狙って織田がアタックをかけたものの、そのカウンターでマティアシュ・コペッキー(チェコ)が先着。続いてフェリックス・エンゲルハルト(ドイツ、ジェイコ・アルウラー)が単独アタックを仕掛けたものの、やはりリドル・トレックの牙城を崩すには至らなかった。

単騎逃げを試みるライリー・シーアン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) photo:Makoto AYANO
集団から飛び出すクリスツ・ニーランツ(ラトビア、イスラエル・プレミアテック) photo:Makoto AYANO


アタックを許さず、逃さず。リドル・トレックが徹底コントロールを披露した photo:Makoto AYANO

リドルのパトリック・コンラッド(オーストリア)とジュリアン・ベルナール(フランス)、マティアス・ヴァチェク(チェコ)が風を切ってミランをアシスト。最終周回を回ったタイミングでミランのアシストはチェコ王者ヴァチェク一人になっていたものの、高速レースで消耗していた集団に対しては十分だった。

一人で最終局面を牽ききったヴァチェクの背後から、ひときわ大柄なミランが発進。背後についたミカ・ヘミング(ドイツ、チューダープロサイクリング)を横に並ばせることなく、まさに圧倒的なスプリントでフィニッシュラインを駆け抜けた。

メタリックカラーのスペシャルバイクで集団を牽引するリドル・トレック勢 photo:Makoto AYANO

圧倒的なスプリントで勝利したジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo:Makoto AYANO

チームの連勝記録を6に伸ばしたジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo:Makoto AYANO

リドル・トレックにとっては2018年のジョン・デゲンコルプ(ドイツ)、2019年と中断を挟んでの2022年&2023年のエドワード・トゥーンス(ベルギー)、2024年のトムス・スクインシュ(ラトビア)に続くクリテリウム6連覇。またしてもそのチーム力を見せつける結果となった。

33.75kmを走り切るのに要した時間は僅か39分58秒。記録された平均スピード50.7km/hは2023年の49.4km/h(3番は2022年の49.0km/h)を遥かに凌いで歴代最速記録となった。

1位ミラン、2位ヘミング、3位ファンミヘレン photo:Makoto AYANO

柔らかな笑顔を見せる入部正太朗(シマノレーシング) photo:Makoto AYANO
日本人最高位の7位に食い込んだ岡篤志(Astemo 宇都宮ブリッツェン) photo:Makoto AYANO



クリテリウム表彰式 優勝はジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)、2位ミカ・ヘミング(ドイツ、チューダープロサイクリング)、3位フラット・ファンミヘレン(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:Makoto AYANO

優勝したジョナタン・ミラン(リドル・トレック)を祝福するファンたち photo:Makoto AYANO
ジャパンカップクリテリウム2025結果
1位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) 39:58
2位 ミカ・ヘミング(ドイツ、チューダープロサイクリング)
3位 フラット・ファンミヘレン(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)
4位 サイモン・クラーク(オーストラリア、イスラエル・プレミアテック)
5位 ルーカ・ファンボーヴェン(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)
6位 フィト・ブラーツ(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)
7位 岡篤志(Astemo 宇都宮ブリッツェン)
8位 ニコラス・ゴイコヴィッチ(クロアチア、ポギチーム・グスト・リュブリャナ)
9位 コルビー・シモンズ(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)
10位 マティアシュ・コペッキー(チェコ、チーム ノボ ノルディスク)
text&photo: So Isobe