チリで開催されたトラック世界選手権に出場した日本ナショナルチームが10月30日に帰国。メダルを獲得した佐藤水菜と窪木一茂が記者会見に臨んだ。ケイリンで連覇を果たした佐藤は「嬉しさは昨年の方が上だが、今回は満足感が大きい」と語り、オムニアム銀メダルの窪木は「今回と同じ力を出せれば金メダルは近いと思う」と語った。

共に世界選を戦った2人のヘッドコーチ、小野口副会長とともに記念撮影に応じる窪木一茂と佐藤水菜 photo: Yuichiro Hosoda
南米チリの首都サンティアゴで開催された今年のトラック世界選手権。出場した日本ナショナルチームは10月26日までの日程を終え、10月30日早朝に帰国した。

それぞれが獲得したメダルを掲げてフォトセッションを行う窪木一茂と佐藤水菜 photo: Yuichiro Hosoda
今大会では、佐藤水菜がケイリンで金メダル、スプリントで銀メダルを獲得。窪木一茂がオムニアムで銀メダルを獲得し、計3つのメダルがもたらされた。そのメダルを獲得した2人と日本ナショナルチームのコーチが、東京都内で記者会見に臨んだ。
佐藤水菜 勝てると思っていなかったケイリン、決勝を走れて嬉しかったスプリント

佐藤は、記者からの質問に都度「難しい」と悩みながらも、非常に丁寧な受け答えをしていた photo: Yuichiro Hosoda
―決勝レースの展開を振り返って
決勝で飛び出したのは行くしかなかったから。とにかく前にという気持ちで、イギリスのエマ選手がタイミングよく出てこられたらイヤだなと思っていたが、自分が速ければ問題ないと思っていた。バックストレートでイタリアの選手を抜いた後、コロンビアの選手がとても強いので後ろに着いているだろうと考え、フィニッシュラインを切るまでは誰が勝つかもわからず気を抜けなかった。

2大会連続となる金メダルを獲得した佐藤水菜 photo:UCI
勝てると思っていなかったし、体調もふくめ気持ち的にもうまく持っていけなかった。でも決勝に残れたから獲れたら良いなと思っていたくらい。ジェイソンコーチにコミットしろと言われて、意味がわからず「OK」と答えていたけれど、表彰終わったあとに「覚悟しろ」という意味だと知った(笑)。
―最初のメダルと今回との違いは?
昨年の金メダルはラッキーチャンピオン。良い場所にいられたから勝てた。1年間成長し続けなければいけないと考えていた。4度目のチャレンジで優勝出来た昨年の方が喜びは大きかったが、喜びは少ないけれどやりたいことをできたという安心感と言うか、満足感は今年の方が大きい。
―スプリント銀メダルの結果について
スプリントでトップ4に入ることは今年の目標だった。1/4決勝は直近2回負けている相手だったのでどうしようと思っていたが、1本目で思ったよりうまく走れている手応えがあった。2本目を取られてしまったけれど、修正してしっかり勝ち上がることが出来て、自分が向上していることを実感できた。
翌日はリセットして1/2決勝、決勝と勝ち上がり、金メダルを取りたいというよりも決勝のスタートラインに残れたことが嬉しく、不思議な感覚だった。こんな強い選手と戦えて嬉しかったし、負けて悔しいという思いもあった。その夜、大会期間中初めてコーチと乾杯して、「これを飲んだらケイリン勝たねばならない」とプレッシャーをかけられ、リフレッシュしてケイリンに臨めたと思う。

新型のTCM-3でスプリントを走る佐藤水菜 photo:JCF
―新機材のTCM-3について
重量が軽くなった。TCM-1(初期生産型)に近く、操作性などがクイックになった。TCM-2の良さを残したまま1の良いところが目立つようになった。海外選手にも好評で、写真を撮ったり友好的な関係を築くのに役立った。
―ロス五輪に向けて
五輪はみんな人が変わったようなパフォーマンスを出してくる。自分達はいつも良い状態を作っているが、それを超えてくるからメダル争いにはまだ入れないし、危機感を持っている。メダルを取ったことで気が引き締まるし、ロスまで2年でどれだけ仕上げられるかはなかなか厳しいと思うけれど、しっかり築き上げていきたい。
窪木一茂 もう一回今のパフォーマンスを出すことが出来れば金メダルは近い

時折、佐藤水菜を見やりながら、笑顔も交えて質問に答えていた窪木一茂 photo: Yuichiro Hosoda
―金メダルまであと2ポイントという差について
冗談を言わせてもらうと、TCM-3に乗れたら佐藤選手と同じ色のメダルを取れたかもしれない(笑)
練習はしっかりしていたが、体調を崩したり(出発前の日本で)転んだりして、ポイントレースは自分の走りが出来ず人の後ろを走ってずるく勝った。力を発揮できていないから2位でしょうがないと自分の中で言い聞かせている。今回と同じ過ちを繰り返さないようにして、もう一回今のパフォーマンスを出すことが出来れば金メダルは近いと思う。
来年が楽しみだが、日本のレベルが上がってきているから、代表に選ばれるかはわからない。国内の大会からまた頑張っていきたい。

トラック世界選手権2025男子オムニアム表彰台:2位窪木、1位トレス、3位デヴィルデル photo:JCF
―4年連続メダル4年間のモチベーションは?
自転車競技連盟やHPCJCが最新のコーチングなどで盛り上げてきてくれていることもあるが、4年前に競輪選手になって年上の選手が現役で活躍していることに良い刺激を受けている。自分では大器晩成型と思っているので、まだまだこれからだと思っている。
―ロス五輪に向けて
今までの経験を踏まえて、ロスに向けてもっと何が出来るか。それを体現していくことが楽しみ。ロスまで順調に行ければ良いと思うが、1年1年が勝負。最前線で世界のトップと戦いたいという気持ちがある限り、成長を続けていけると思う。

自身3度目となるアルカンシエルに袖を通したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア) photo:UCI ―ヴィヴィアーニ選手引退について
自転車を始めた頃から見ていた選手なので、引退は残念。日本は選手サポートが手厚くなってきて、選手が五輪に向けて取り組める環境がある。それをヴィヴィアーニ選手の引退で改めて感じた。だから感謝しなければいけないと思うし、それを表していかなければならないと思う。
他の競技で同世代で頑張っている人たちもいると思うので、良い刺激を与えられればいいなと思うし、続けていく意味はあると思った。
ジェイソン・ニブレット 短距離ヘッドコーチ

ジェイソン・ニブレット短距離ヘッドコーチ photo: Yuichiro Hosoda
佐藤選手の金メダルは今大会のハイライトではあるが、全選手のパフォーマンスの良かったところ悪かったところはあるので、チームで振り返る必要がある。
佐藤選手はケイリンでは良い成績を出してきたが、2024年スプリントで世界で戦えるようになってきた。それは戦略や走り方が大きな要因だったと思う。今回は1/4決勝でミスがあったが、しっかりと修正して翌日の1/2決勝、決勝を走れたと思う。
兒島選手、太田選手があと一歩だったが、メダルを獲れるパフォーマンスはあったと思う。6つのメダルを獲れた昨年の世界選手権は特別(レアケース)だった。チームとして次のステップに進むためにどう改善していくべきか考えていかねばならない。来年から国際競輪が再開されるので、そこから良い影響を受けられたら良いと思う。
ダニエル・ギジガー 中距離ヘッドコーチ

日本ナショナルチームにおけるベテラン窪木一茂の重要性について語るダニエル・ギジガー中距離ヘッドコーチ photo: Yuichiro Hosoda
アジア選手権では日本が全種目で上位の成績を挙げられた。世界選手権はチームパシュートは良くなかったが、全体としてレベルが上がったと思う。
窪木選手は選手の中でも多くの経験を持ってモチベーション高く臨んでいる。4年連続でメダルを取れていることも凄いことだが、今年のオムニアムは最後のスプリントの瞬間まで誰が勝つかわからないレベルの高いレースだった。その中で2位となったことは素晴らしいし嬉しく思う。窪木はたくさんの経験を持っていて、チームに対して影響を持っている。ボス的存在で良い影響をチームに与えている。

女子マディソン5位の内野艶和と垣田真穂 photo:JCF
女子のマディソンは過去最高の結果となり、兒島選手はレースの動きを読めていたと思う。チームパーシュートでは女子が5位という結果は良かった。男子は橋本英也が怪我をして、競輪養成所からは兒島選手のみが参加という形になり、メンバーが集まらなかったこともあって残念な結果になってしまった。
text:Satoru Kato
photo:Yuichiro Hosoda, JCF

南米チリの首都サンティアゴで開催された今年のトラック世界選手権。出場した日本ナショナルチームは10月26日までの日程を終え、10月30日早朝に帰国した。

今大会では、佐藤水菜がケイリンで金メダル、スプリントで銀メダルを獲得。窪木一茂がオムニアムで銀メダルを獲得し、計3つのメダルがもたらされた。そのメダルを獲得した2人と日本ナショナルチームのコーチが、東京都内で記者会見に臨んだ。
佐藤水菜 勝てると思っていなかったケイリン、決勝を走れて嬉しかったスプリント

―決勝レースの展開を振り返って
決勝で飛び出したのは行くしかなかったから。とにかく前にという気持ちで、イギリスのエマ選手がタイミングよく出てこられたらイヤだなと思っていたが、自分が速ければ問題ないと思っていた。バックストレートでイタリアの選手を抜いた後、コロンビアの選手がとても強いので後ろに着いているだろうと考え、フィニッシュラインを切るまでは誰が勝つかもわからず気を抜けなかった。

勝てると思っていなかったし、体調もふくめ気持ち的にもうまく持っていけなかった。でも決勝に残れたから獲れたら良いなと思っていたくらい。ジェイソンコーチにコミットしろと言われて、意味がわからず「OK」と答えていたけれど、表彰終わったあとに「覚悟しろ」という意味だと知った(笑)。
―最初のメダルと今回との違いは?
昨年の金メダルはラッキーチャンピオン。良い場所にいられたから勝てた。1年間成長し続けなければいけないと考えていた。4度目のチャレンジで優勝出来た昨年の方が喜びは大きかったが、喜びは少ないけれどやりたいことをできたという安心感と言うか、満足感は今年の方が大きい。
―スプリント銀メダルの結果について
スプリントでトップ4に入ることは今年の目標だった。1/4決勝は直近2回負けている相手だったのでどうしようと思っていたが、1本目で思ったよりうまく走れている手応えがあった。2本目を取られてしまったけれど、修正してしっかり勝ち上がることが出来て、自分が向上していることを実感できた。
翌日はリセットして1/2決勝、決勝と勝ち上がり、金メダルを取りたいというよりも決勝のスタートラインに残れたことが嬉しく、不思議な感覚だった。こんな強い選手と戦えて嬉しかったし、負けて悔しいという思いもあった。その夜、大会期間中初めてコーチと乾杯して、「これを飲んだらケイリン勝たねばならない」とプレッシャーをかけられ、リフレッシュしてケイリンに臨めたと思う。

―新機材のTCM-3について
重量が軽くなった。TCM-1(初期生産型)に近く、操作性などがクイックになった。TCM-2の良さを残したまま1の良いところが目立つようになった。海外選手にも好評で、写真を撮ったり友好的な関係を築くのに役立った。
―ロス五輪に向けて
五輪はみんな人が変わったようなパフォーマンスを出してくる。自分達はいつも良い状態を作っているが、それを超えてくるからメダル争いにはまだ入れないし、危機感を持っている。メダルを取ったことで気が引き締まるし、ロスまで2年でどれだけ仕上げられるかはなかなか厳しいと思うけれど、しっかり築き上げていきたい。
窪木一茂 もう一回今のパフォーマンスを出すことが出来れば金メダルは近い

―金メダルまであと2ポイントという差について
冗談を言わせてもらうと、TCM-3に乗れたら佐藤選手と同じ色のメダルを取れたかもしれない(笑)
練習はしっかりしていたが、体調を崩したり(出発前の日本で)転んだりして、ポイントレースは自分の走りが出来ず人の後ろを走ってずるく勝った。力を発揮できていないから2位でしょうがないと自分の中で言い聞かせている。今回と同じ過ちを繰り返さないようにして、もう一回今のパフォーマンスを出すことが出来れば金メダルは近いと思う。
来年が楽しみだが、日本のレベルが上がってきているから、代表に選ばれるかはわからない。国内の大会からまた頑張っていきたい。

―4年連続メダル4年間のモチベーションは?
自転車競技連盟やHPCJCが最新のコーチングなどで盛り上げてきてくれていることもあるが、4年前に競輪選手になって年上の選手が現役で活躍していることに良い刺激を受けている。自分では大器晩成型と思っているので、まだまだこれからだと思っている。
―ロス五輪に向けて
今までの経験を踏まえて、ロスに向けてもっと何が出来るか。それを体現していくことが楽しみ。ロスまで順調に行ければ良いと思うが、1年1年が勝負。最前線で世界のトップと戦いたいという気持ちがある限り、成長を続けていけると思う。

自転車を始めた頃から見ていた選手なので、引退は残念。日本は選手サポートが手厚くなってきて、選手が五輪に向けて取り組める環境がある。それをヴィヴィアーニ選手の引退で改めて感じた。だから感謝しなければいけないと思うし、それを表していかなければならないと思う。
他の競技で同世代で頑張っている人たちもいると思うので、良い刺激を与えられればいいなと思うし、続けていく意味はあると思った。
ジェイソン・ニブレット 短距離ヘッドコーチ

佐藤選手の金メダルは今大会のハイライトではあるが、全選手のパフォーマンスの良かったところ悪かったところはあるので、チームで振り返る必要がある。
佐藤選手はケイリンでは良い成績を出してきたが、2024年スプリントで世界で戦えるようになってきた。それは戦略や走り方が大きな要因だったと思う。今回は1/4決勝でミスがあったが、しっかりと修正して翌日の1/2決勝、決勝を走れたと思う。
兒島選手、太田選手があと一歩だったが、メダルを獲れるパフォーマンスはあったと思う。6つのメダルを獲れた昨年の世界選手権は特別(レアケース)だった。チームとして次のステップに進むためにどう改善していくべきか考えていかねばならない。来年から国際競輪が再開されるので、そこから良い影響を受けられたら良いと思う。
ダニエル・ギジガー 中距離ヘッドコーチ

アジア選手権では日本が全種目で上位の成績を挙げられた。世界選手権はチームパシュートは良くなかったが、全体としてレベルが上がったと思う。
窪木選手は選手の中でも多くの経験を持ってモチベーション高く臨んでいる。4年連続でメダルを取れていることも凄いことだが、今年のオムニアムは最後のスプリントの瞬間まで誰が勝つかわからないレベルの高いレースだった。その中で2位となったことは素晴らしいし嬉しく思う。窪木はたくさんの経験を持っていて、チームに対して影響を持っている。ボス的存在で良い影響をチームに与えている。

女子のマディソンは過去最高の結果となり、兒島選手はレースの動きを読めていたと思う。チームパーシュートでは女子が5位という結果は良かった。男子は橋本英也が怪我をして、競輪養成所からは兒島選手のみが参加という形になり、メンバーが集まらなかったこともあって残念な結果になってしまった。
text:Satoru Kato
photo:Yuichiro Hosoda, JCF
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