5月18日(日)、富士山麓エリアで第1回「富士グラベル supported by Panaracer」が初開催された。静岡県と富士市の後援のもと、普段は走れないエリアの林道がサイクリストたちに開放された。グラベルイベントならではの楽しい雰囲気に満ちた初〜中級者に優しいファンライドだ。

参加者は150人。いよいよ富士グラベルのスタートだ photo:Makoto AYANO
グラベルイベントに荒天はつきものなのか。台風が襲ったグラインデューロ初回大会や昨年のやくらいグラベルクラシックetc....。振り返れば過去のグラベルイベントは開催が危ぶまれる悪天候に見舞われるのがお約束のように、大会前日の富士山麓一帯は嵐のような荒天になった。
大雨と嵐で会場設営はかなり難航したと聞く。そしてこれまたお約束のように関係車両のワンボックスカーがスタックしてレッカー車が出動したというから、グラベルイベントに発生するお決まりのトラブルは、もはやデジャヴだ。

グラベルマスターの先導スタッフたち 
静岡を拠点にサイクリングの楽しさを伝える主催者トム・ボシスさん
初回大会にもかかわらず、富士グラベルへの参加申し込みはネットエントリー開始からわずか数時間で定員に達したという。もちろん世界遺産の富士山エリアでの開催ということも一因だろう。定員150人と少ない募集ではあったが、エントリー状況からわかる人気ぶりは、まだ数が少ないグラベルイベントへの期待度の高さが窺える。イベント主催は株式会社テラインコグニタ。普段はサイクリングツアーを企画・催行する会社で、静岡を拠点に活動する在日フランス人のトム・ボシスさんが主催者だ。

舗装路で林道入り口へと向かう photo: 
先導リーダーがゲートを開けながら進んでいく
富士グラベルのコースは2つ。ショートコースは約25km・獲得標高約500m・定員50名。ミドルコースは約45km・獲得標高約950m・定員100名。未舗装路率はともに約7割。当初はロングコースも用意される予定だったが、第1回のため2コースのみで開催し、ロングコースは2年目以降に導入していくことになった。

林道入り口で富士山をバックに記念撮影! このときはくっきり晴れた photo:Makoto AYANO
メイン会場となったのは「富士山こどもの国」の駐車場エリア。前夜に降り続いた大雨は止んだが、大会日の朝は深い霧に包まれていた。会場には多くのブランドブースが立ち並び、関係者の期待度の高さが窺える。

霊峰富士山を眼前に見ながら進む photo:Makoto AYANO
朝8時過ぎにスタート。走り方はショートコースがフリーライド(自由走行)、ミドルコースは参加者10名にガイド1名がつくガイド付きツアー形式だ。ガイドをつとめるライドリーダーにはグラベルに覚えのあるサイクリストがつく。この日までにコース試走をこなし、走り方とルートを熟知したグラベルライダーが一緒に走ってくれることになる。パンクなどのトラブル対応はあくまで「セルフ」が原則だが、実際はチームで協力しあって直すし、ガイドリーダーも助けてくれるので安心だ。

いよいよ富士山麓のグラベルへとジャリジャリ進んでいく photo:Makoto AYANO
各グループが間隔をおいてスタートしていく。会場を出てすぐに林道入り口があり、さっそく富士山が眼前に姿を表す。実はこの場所がもっとも開けた富士山が望めるスポットで、参加者のグループはここでまずは富士山を背景に記念撮影を行った(それが良かったことは後で判ることになる)。

濃霧の林へ進んでいく、幻想的な風景 photo:Makoto AYANO
先導して走るガイドリーダーが林道ゲートの鍵を持ち、ルート上に数箇所あるゲートをオープンしながら進む。今回のイベントはこのエリアの管理者から特別許可をもらって開催されており、普段は自由に立ち入ることができないエリアとなっている。そんなエリアを自転車で走る特権が今日の参加者には与えられるのだ。

ボランティアさんも随所で声をかけてくれた 
分岐点でガイドしてくれます
富士山麓の火山性の土質は水捌けが良く、大雨によるぬかるみや水たまりは少なかった。グラベルは砂利の林道が大半で、ときどき土や芝まじりの路面も出てくる。概ねグラベルは整っていて走りやすいが、それでも流水でえぐれた箇所や大きめの石のガレた路面が出てくるので油断はできない。

霧は深いけど楽しんでます 
注意喚起の看板の先には難しいセクションがある
序盤からアップダウンを繰り返すが、登りは勢いで行けて、下りはスピードが出て楽しめる。あちこちで「イャッホー!」といった歓声があがる。荒れた路面の走行感を楽しむのがグラべルライドの醍醐味だ。

深くえぐれた谷をバイクを押して渡る photo:Makoto AYANO
ルートの多くは林の中。途中に自転車を降りてよじ登るように越える段差もあった。乗り始めに晴れていた天気も、すぐに霧が立ち込め、次第に霧雨が漂うようになる。

乗って行く人も居ましたが、難しいセクション photo:Makoto AYANO
ルート上の危険箇所には「注意」の看板。そして「絶景」看板が霧の中にポツンと見えるのはなんともシュール。本当なら富士山が望めるポイントなのだ。とはいえレインジャケットを羽織るほどではない。

林道の入り口で。ボランティアのお姉さんもノリがいい photo:Makoto AYANO

霧に包まれた絶景スポット。本当は富士山が臨めるポイントです 
エイドは深い霧の中。でも雨ではないのがラッキー
16kmすぎにエイドに到着。まだ1時間半しか経っていないのに、パスタランチが食べられるようだ。

つけナポリタンいただきます 
新しいご当地グルメ「つけナポリタン」
丸太の椅子が用意されたこのエイドで供されるのは、つけ麺ならぬ「つけナポリタン」。太麺のパスタを鶏ガラスープベースのトマトソースにつけて食べるのだが、これがなんとも美味しかった。ちなみにB級グルメとして有名な富士宮焼きそばに対抗して、富士市のご当地グルメとして考案されたのだそうだ。

ちょっと早いけどつけパスタランチいただきます photo:Makoto AYANO
24km地点でいったん国道に出て、ショートコースとミドルコースの分かれる分岐点に出る。ミドルコースの参加者はいったんここでグループを再編成。ここまで走ってきたことでわかる、脚の揃ったメンバー同士にグループを組み直して走ることに。

濡れた深い砂利はなかなか手強い photo:Makoto AYANO

舗装路に出るポイントではしっかり誘導してくれます 
班分けしなおした新グループで出発
ここからのミドルコースは愛鷹山の斜面に向かう。つまりアップダウンが今までに増して繰り返すことになる。長めの登りも登場することに。クレーン車などが並ぶ林道をループして走る。とはいえ勾配はキツすぎないのがいい。

林業で使われている林道とあって貯木場があちこちに photo:Makoto AYANO
2つめのエイドでは富士のお茶とほうじ茶餡の団子が供された。先ほどのパスタから時間も経っていないのでお腹は減っていないのだが、自然に囲まれた屋外でいただく濃いお茶と香ばしいスウィーツはなんとも美味しかった。

第2エイドに登場の静岡のお茶娘さん。気さくな方でした 
ほうじ茶餡の団子と緑茶をいただきます

ダブルトラックの林道をジャリジャリ進むグループ photo:Makoto AYANO
グラベルイベントといえば定番の渡渉(としょう=川渡り)も登場。富士の雪解け水の流れを、勢いをつけて突っ切って走り抜ける! 濡れるもまた楽し、だ。

軽い渡渉(川渡り)も登場。勢いをつけて一気に渡る! photo:Makoto AYANO
終盤に登場したガレた林道はラインどりを考えて進まないとスタックする難しさがあって、これまた楽しかった。そして最終盤には長い舗装の登りも登場し、皆が肩を並べながらのヒルクライム。林道にはほとんど車が入ってこないので、おしゃべりしながら走れるのが楽しい。

えぐれた林道は走行ラインを慎重に見極めて photo:Makoto AYANO

最終盤には長い舗装路の登りが。もうひと頑張りです 
最終エイドではエナジージェルでチャージ!
速い班のフィニッシュは昼頃。会場ではブランドブースの他に、数々のフードトラックの出店があって、好きなグルメを楽しめる。筆者は富士宮焼きそばにハーブフランクをいただきました。帰りに運転が無い人はビールもいいでしょう!

走り終えてこの笑顔。皆さん満足そうです photo:Makoto AYANO

背中に「大勝利です」なチーム 
新型Topstoneに試乗した参加者はその性能に感動していた
ミドルコースの実測の獲得標高は1,070mでした。グラベルイベントでよく見る顔の人たちは「もう一周行けるな」と言う人も居たけれど、初級〜中級者にとっては十分な走りごたえがあったようだ。

PasNormalStudio女性グループも完走してこの笑顔! photo:Makoto AYANO
ライドが終わってからも会場では「バイク相撲」などの面白アトラクションが開催。バイクブランドの最新グラベルバイク試乗会も人気で、参加者は皆が興味津々だった。

余興のバイク相撲。相手を押し出したりすれば勝ち photo:Makoto AYANO
けっきょく富士山はコースに入るときに見えただけで、後は一度も姿を見せず。霧の中を走った時間が長かったが、参加者は皆が笑顔で、本当に楽しかったと口を揃える。グラベルイベントはまだまだ少ないが、どの大会も主催者と参加者が一体となって楽しい雰囲気づくりを大切にしているので、その笑顔はグラベルイベント共通だ。

最新グラベルバイクの試乗会も好評 photo:Makoto AYANO 
キャノンデール新型Topstenoも実物が見れた。旧モデルから大きく変わっている photo:Makoto AYANO
林道の管理者である富士市の後援のもと、「最高のグラベルがあるから、まずはやってみよう」で始まった大会は定番化するのは確実で、これからが楽しみなイベントになった。主催者側に余裕ができたらロングコースも追加、あるいはロングコースのみでの開催も視野にあるという。それもまた楽しみだ。
photo&text:Makoto.AYANO

グラベルイベントに荒天はつきものなのか。台風が襲ったグラインデューロ初回大会や昨年のやくらいグラベルクラシックetc....。振り返れば過去のグラベルイベントは開催が危ぶまれる悪天候に見舞われるのがお約束のように、大会前日の富士山麓一帯は嵐のような荒天になった。
大雨と嵐で会場設営はかなり難航したと聞く。そしてこれまたお約束のように関係車両のワンボックスカーがスタックしてレッカー車が出動したというから、グラベルイベントに発生するお決まりのトラブルは、もはやデジャヴだ。


初回大会にもかかわらず、富士グラベルへの参加申し込みはネットエントリー開始からわずか数時間で定員に達したという。もちろん世界遺産の富士山エリアでの開催ということも一因だろう。定員150人と少ない募集ではあったが、エントリー状況からわかる人気ぶりは、まだ数が少ないグラベルイベントへの期待度の高さが窺える。イベント主催は株式会社テラインコグニタ。普段はサイクリングツアーを企画・催行する会社で、静岡を拠点に活動する在日フランス人のトム・ボシスさんが主催者だ。


富士グラベルのコースは2つ。ショートコースは約25km・獲得標高約500m・定員50名。ミドルコースは約45km・獲得標高約950m・定員100名。未舗装路率はともに約7割。当初はロングコースも用意される予定だったが、第1回のため2コースのみで開催し、ロングコースは2年目以降に導入していくことになった。

メイン会場となったのは「富士山こどもの国」の駐車場エリア。前夜に降り続いた大雨は止んだが、大会日の朝は深い霧に包まれていた。会場には多くのブランドブースが立ち並び、関係者の期待度の高さが窺える。

朝8時過ぎにスタート。走り方はショートコースがフリーライド(自由走行)、ミドルコースは参加者10名にガイド1名がつくガイド付きツアー形式だ。ガイドをつとめるライドリーダーにはグラベルに覚えのあるサイクリストがつく。この日までにコース試走をこなし、走り方とルートを熟知したグラベルライダーが一緒に走ってくれることになる。パンクなどのトラブル対応はあくまで「セルフ」が原則だが、実際はチームで協力しあって直すし、ガイドリーダーも助けてくれるので安心だ。

各グループが間隔をおいてスタートしていく。会場を出てすぐに林道入り口があり、さっそく富士山が眼前に姿を表す。実はこの場所がもっとも開けた富士山が望めるスポットで、参加者のグループはここでまずは富士山を背景に記念撮影を行った(それが良かったことは後で判ることになる)。

先導して走るガイドリーダーが林道ゲートの鍵を持ち、ルート上に数箇所あるゲートをオープンしながら進む。今回のイベントはこのエリアの管理者から特別許可をもらって開催されており、普段は自由に立ち入ることができないエリアとなっている。そんなエリアを自転車で走る特権が今日の参加者には与えられるのだ。


富士山麓の火山性の土質は水捌けが良く、大雨によるぬかるみや水たまりは少なかった。グラベルは砂利の林道が大半で、ときどき土や芝まじりの路面も出てくる。概ねグラベルは整っていて走りやすいが、それでも流水でえぐれた箇所や大きめの石のガレた路面が出てくるので油断はできない。


序盤からアップダウンを繰り返すが、登りは勢いで行けて、下りはスピードが出て楽しめる。あちこちで「イャッホー!」といった歓声があがる。荒れた路面の走行感を楽しむのがグラべルライドの醍醐味だ。

ルートの多くは林の中。途中に自転車を降りてよじ登るように越える段差もあった。乗り始めに晴れていた天気も、すぐに霧が立ち込め、次第に霧雨が漂うようになる。

ルート上の危険箇所には「注意」の看板。そして「絶景」看板が霧の中にポツンと見えるのはなんともシュール。本当なら富士山が望めるポイントなのだ。とはいえレインジャケットを羽織るほどではない。



16kmすぎにエイドに到着。まだ1時間半しか経っていないのに、パスタランチが食べられるようだ。


丸太の椅子が用意されたこのエイドで供されるのは、つけ麺ならぬ「つけナポリタン」。太麺のパスタを鶏ガラスープベースのトマトソースにつけて食べるのだが、これがなんとも美味しかった。ちなみにB級グルメとして有名な富士宮焼きそばに対抗して、富士市のご当地グルメとして考案されたのだそうだ。

24km地点でいったん国道に出て、ショートコースとミドルコースの分かれる分岐点に出る。ミドルコースの参加者はいったんここでグループを再編成。ここまで走ってきたことでわかる、脚の揃ったメンバー同士にグループを組み直して走ることに。



ここからのミドルコースは愛鷹山の斜面に向かう。つまりアップダウンが今までに増して繰り返すことになる。長めの登りも登場することに。クレーン車などが並ぶ林道をループして走る。とはいえ勾配はキツすぎないのがいい。

2つめのエイドでは富士のお茶とほうじ茶餡の団子が供された。先ほどのパスタから時間も経っていないのでお腹は減っていないのだが、自然に囲まれた屋外でいただく濃いお茶と香ばしいスウィーツはなんとも美味しかった。



グラベルイベントといえば定番の渡渉(としょう=川渡り)も登場。富士の雪解け水の流れを、勢いをつけて突っ切って走り抜ける! 濡れるもまた楽し、だ。

終盤に登場したガレた林道はラインどりを考えて進まないとスタックする難しさがあって、これまた楽しかった。そして最終盤には長い舗装の登りも登場し、皆が肩を並べながらのヒルクライム。林道にはほとんど車が入ってこないので、おしゃべりしながら走れるのが楽しい。



速い班のフィニッシュは昼頃。会場ではブランドブースの他に、数々のフードトラックの出店があって、好きなグルメを楽しめる。筆者は富士宮焼きそばにハーブフランクをいただきました。帰りに運転が無い人はビールもいいでしょう!



ミドルコースの実測の獲得標高は1,070mでした。グラベルイベントでよく見る顔の人たちは「もう一周行けるな」と言う人も居たけれど、初級〜中級者にとっては十分な走りごたえがあったようだ。

ライドが終わってからも会場では「バイク相撲」などの面白アトラクションが開催。バイクブランドの最新グラベルバイク試乗会も人気で、参加者は皆が興味津々だった。

けっきょく富士山はコースに入るときに見えただけで、後は一度も姿を見せず。霧の中を走った時間が長かったが、参加者は皆が笑顔で、本当に楽しかったと口を揃える。グラベルイベントはまだまだ少ないが、どの大会も主催者と参加者が一体となって楽しい雰囲気づくりを大切にしているので、その笑顔はグラベルイベント共通だ。


林道の管理者である富士市の後援のもと、「最高のグラベルがあるから、まずはやってみよう」で始まった大会は定番化するのは確実で、これからが楽しみなイベントになった。主催者側に余裕ができたらロングコースも追加、あるいはロングコースのみでの開催も視野にあるという。それもまた楽しみだ。
photo&text:Makoto.AYANO
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