富士山5合目まで登るツアー・オブ・ジャパン第6ステージは、JCL TEAM UKYOのナホム・ゼライ・アラヤが優勝し、アレッサンドロ・ファンチェルが2位。ファンチェルが再び総合首位に立った。日本人選手では、金子宗平(日本ナショナルチーム)が2分44秒遅れの12位、森田叶夢(日本ナショナルチーム)が3分19秒遅れの17位だった。


スタート前に各選手のバイク計量が行われた photo:Satoru Kato
スタート前に催されたチームプレゼンテーション photo:Satoru Kato


第6ステージのスタートラインに揃った4賞ジャージ photo:Satoru Kato

ツアー・オブ・ジャパン6日は、富士山の静岡県側でのレース。富士スピードウェイ西ゲート前をパレードスタートし、東京五輪の個人タイムトライアルに使用された周回コースを4周。その後平均勾配10%、最大勾配22%のふじあざみラインを登り、超級山岳が設定された富士山五合目にフィニッシュする。文字通りツアー・オブ・ジャパンの山場となるステージで、ここを制した者が総合優勝に大きく近づく。

小山町の小学生らがスタートを見送る photo:Satoru Kato

前日まで30℃前後の暑さの中でのレースが続いてきたが、この日は一転。スタート地点の富士スピードウェイでも20℃未満、フィニッシュの富士山五合目付近では10℃前後と、夏から一気に冬に戻ったような寒さを感じる中でのレース。残念ながら富士山は雲に覆われて姿を見せることはなかった。

スタート直後から先行した5名の先頭集団 photo:Satoru Kato

メイン集団はふじあざみラインに備えてかゆっくりとしたペースで進む photo:Satoru Kato

周回コース2周目、リーダージャージのシモーネ・ラッカーニはチームメイトのニコロ・ガリッポに続く photo:Satoru Kato

スタート直後から5名が先頭集団を形成する。メンバーは、メトケル・イヨブ(トレンガヌ・サイクリングチーム)、ヴァウター・トゥーサン(、ワンティ・NIPPO・リユーズ)、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックス・パワータグ)、岡篤志(宇都宮ブリッツェン)、レオン・ピカー(チームブッファーズ・ジェスチョンド・パトリモワンヌ)。

5名は後続のメイン集団に2分差をつけて先行する中、周回コースに2回設定された中間スプリントポイントは全て岡が先頭通過。これでポイント賞首位のアレッサンドロ・ファンチェル (JCL TEAM UKYO)との差を2ポイントまで縮めた。

ふじあさみライン序盤はキナンレーシングチームが集団を牽引 ©︎TOJ2025

旧馬返しまでに集団の人数が絞られた ©︎TOJ2025

ふじあざみライン後半、先行する3名 ©︎TOJ2025

周回コースを離れると、先頭集団とメイン集団との差は徐々に縮まり始める。ふじあざみラインに入ると先頭集団は徐々に人数を減らし、遅れた選手をキナンレーシングチームが牽引する集団が次々と吸収していく。最後まで残ったイヨブを吸収した時点で、集団はすでに10名ほどまでに絞られた状態。そしてふじあざみラインの中間点となる旧馬返しに差し掛かると、ファンチェル、ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)、ヨハネス・アダミエツ(レンべ・ラド・ネット)ら3名が先行する。

フィニッシュ目前、先頭で姿を表したJCL TEAM UKYOの2人 photo:Satoru Kato

ナホム・ゼライ・アラヤを先頭に残り300mに差しかかったJCL TEAM UKYOの2人 photo:Satoru Kato

マヌエーレ・ボアロ監督(JCL TEAM UKYO)がフィニッシュ直前で檄をとばす photo:Satoru Kato

12位の金子宗平(日本ナショナルチーム)が日本勢最高位 photo:Satoru Kato
新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)は5分35秒遅れの23位 photo:Satoru Kato


残り5kmを過ぎ、後方でリーダージャージを着るシモーネ・ラッカーニをアシストしていたナホム・ゼライ・アラヤ(JCL TEAM UKYO)が先行する3名に合流すると、ファンチェルがペースアップして単独先行。遅れたダイボールをマークしていたアラヤだが、ペースが上がらないと見るとファンチェルのところまでジャンプして合流。JCL TEAM UKYOの2人が後続との差を広げて登っていく。最後はアラヤが先行してフィニッシュ。ファンチェルが続き、2022年以来となる1-2フィニッシュを決めた。

ナホム・ゼライ・アラヤ(エリトリア、JCL TEAM UKYO)が富士山を制した ©︎TOJ2025

第5ステージ優勝 ナホム・ゼライ・アラヤ(エリトリア、JCL TEAM UKYO) photo:Satoru Kato

ナホム・ゼライ・アラヤ コメント

「ファンチェルのアシストをして引いていったが、上まで引いてくれたら勝って良いと言われて前に出た。第3ステージで単独アタックをしてみたけれど成功せず、以降のステージはタイム差がついて難しいレースになってしまった。それが無ければ総合上位に残れていたかもしれないとは思うけど、今日勝てて良かったと思う。同じエリトリア出身でツール・ド・フランスでマイヨヴェールを獲得したビニヤム・ギルマイは、アフリカ勢として素晴らしい成績を挙げた選手で尊敬している」

総合首位に返り咲いたアレッサンドロ・ファンチェル (イタリア、JCL TEAM UKYO) photo:Satoru Kato

個人総合首位はファンチェルが返り咲き。ラッカーニが21秒差の2位につけ、個人総合順位でもJCL TEAM UKYOが1位、2位を占めた。ダイボールが1分13秒差の3位に浮上。4位にはマーク・スチュワート(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)が続く。日本勢では金子宗平(日本ナショナルチーム)がポジションをひとつ下げ、3分25秒差の10位となった。
ツアー・オブ・ジャパン2025 第6ステージ富士山 結果(66.6km)
1位 ナホム・ゼライ・アラヤ(エリトリア、JCL TEAM UKYO) 2時間9分48秒
2位 アレッサンドロ・ファンチェル(イタリア、JCL TEAM UKYO) +6秒
3位 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、ヴィクトワール広島) +23秒
4位 シモーネ・ラッカーニ(イタリア、JCL TEAM UKYO) +36秒
5位 レオネル・キンテロ・アルテアガ (ベネズエラ、ヴィクトワール広島) +1分25秒
6位 マーク・スチュワート(イギリス、ソリューションテック・ヴィーにファンティーニ) +1分39秒
7位 マティアス・ブレンホイ(デンマーク、トレンガヌ・サイクリングチーム) +1分44秒
8位 ヨハネス・アダミエツ (ドイツ、レンべ・ラド・ネット) +1分55秒
9位 アドネ・ヴィレムヤン・ファン・エングレン(オランダ、トレンガヌ・サイクリングチーム) +2分1秒
10位 マクサンス・プラス(ベルギー、ワンティ・NIPPO・リユーズ) +2分23秒
個人総合順位(第6ステージ終了時)
1位 アレッサンドロ・ファンチェル (イタリア、JCL TEAM UKYO) 14時間7分42秒
2位 シモーネ・ラッカーニ (イタリア、JCL TEAM UKYO) +21秒
3位 ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、ヴィクトワール広島) +1分13秒
4位 マーク・スチュワート (イギリス、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) +1分26秒
5位 マティアス・ブレンホイ (デンマーク、トレンガヌ・サイクリングチーム) +1分54秒
6位 レオネル・キンテロ・アルテアガ (ベネズエラ、ヴィクトワール広島) +2分7秒
7位 ヨハネス・アダミエツ(ドイツ、レンべ・ラド・ネット) +2分46秒
8位 アドネ・ヴィレムヤン・ファン・エングレン(オランダ、トレンガヌ・サイクリングチーム) 2分51秒
9位 マクサンス・プラス(ベルギー、ワンティ・NIPPO・リユーズ) +3分4秒
10位 金子 宗平 (日本、日本ナショナルチーム) +3分25秒
山岳賞 ニコロ・ガリッボ (イタリア、JCL TEAM UKYO) photo:Satoru Kato
新人賞 マクサンス・プラス(ベルギー、ワンティ・NIPPO・リユーズ) photo:Satoru Kato


ポイント賞 アレッサンドロ・ファンチェル (イタリア、JCL TEAM UKYO)
山岳賞 ニコロ・ガリッボ (イタリア、JCL TEAM UKYO)
新人賞 マクサンス・プラス(ベルギー、ワンティ・NIPPO・リユーズ)
RTA賞 森田 叶夢(日本、日本ナショナルチーム)
チーム総合首位 JCL TEAM UKYO 42時間24分25秒



明日5月23日は、神奈川県相模原市での第7ステージ。ファンチェルが首位を守り切れば、個人総合優勝に大きく近づくことになる。

また、山岳賞ポイントが設定される最後のステージでもある。山岳賞ジャージ争いは10ポイント差以内に4名。そのうちトップのガリッポをふくむ3名がJCL TEAM UKYOのメンバーであり、ガリッポが守り切るのか、チーム内移譲があるのか、あるいはテグシュバヤール・バッサイカン(ルージャイ・インシュアランス)が逆転するのか見ものだ。

一方ポイント賞争いは、トップのファンチェルに対し2ポイント差まで詰めた岡に逆転の可能性が高まった。あるいは最終日の東京まで争うことになるのか、注目したい。


text&photo:Satoru Kato

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