混沌の展開が続く第112回ツール・ド・フランスは、総合優勝の行方を決する最終週に突入する。「魔の山」モンヴァントゥーからアルプス山脈ロズ峠でのクイーンステージなど、過酷な山岳決戦を経て選手たちはパリへ。マイヨジョーヌを巡る争いが、いよいよクライマックスを迎える。



7月22日(火)第16ステージ
モンペリエ〜モンヴァントゥー 171.5km(山岳)
獲得標高差2,950m

第16ステージ モンペリエ〜モンヴァントゥー image:A.S.O.

モンペリエ〜モンヴァントゥー 171.5km(山岳) image:A.S.O.
第112回ツール・ド・フランスも最後の3週目に突入。その初日は、「魔の山」と呼ばれる超級山岳モンヴァントゥーにフィニッシュするシンプルな山岳ステージだ。

地中海に面するモンペリエからモンヴァントゥーまでは155.8kmの平坦路。丘一つないレイアウトだが、フランス南部に吹く北風「ミストラル」には要注意。そして挑む「プロヴァンスの巨人」こと超級山岳モンヴァントゥーは登坂距離15.7km、平均勾配8.8%を誇る。主催者が「全区間がアタックポイント」と評する厳しい登りの山頂には、象徴的な天文台が待つ。

2021年にはモンヴァントゥーを2度登坂するステージが登場したものの、山頂にフィニッシュするのはクリストファー・フルーム(イギリス)が勝利した2013年以来、12年ぶりのこと。2016年に強風でフィニッシュが中腹に変更された際の、落車したフルームの「ラン」は記憶にも新しい。

フィニッシュ予定時刻:午後11時57分頃(日本時間)




7月23日(水)第17ステージ
ボレーヌ〜ヴァランス 160.4km(平坦)
獲得標高差1,650m

第17ステージ ボレーヌ〜ヴァランス image:A.S.O.

ボレーヌ〜ヴァランス 160.4km(平坦) image:A.S.O.
モンヴァントゥーでの山岳決戦を終えた翌日は、典型的な移動日ステージが設定された。翌日から最終決戦まで険しい山岳が続くため、これがパリでの最終決戦を前に、スプリンターに残された最後のチャンスとなる。

登場するカテゴリー山岳は中盤に設定された2つの4級山岳のみ。どちらも難易度は低く、逃げ切りには厳しいレイアウトだと予想される。しかし、これまでのステージで疲弊したスプリントチームに、逃げとのタイム差をコントロールできるアシストは残っているだろうか。

最終ストレートは残り600mの左コーナーを抜けた先にある。直近でヴァランスにフィニッシュしたのはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)が勝利した2021年。この時のように、マイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を纏う選手が勝利を飾るか。

フィニッシュ予定時刻:午前0時19分頃(日本時間)




7月24日(木)第18ステージ
ヴィフ〜ラ・ロズ峠 171.5km(山岳)
獲得標高差5,450m

第18ステージ ヴィフ〜ラ・ロズ峠 image:A.S.O.

ヴィフ〜ラ・ロズ峠 171.5km(山岳) image:A.S.O.
第112回ツール・ド・フランスの戦いはついに、第18ステージにしてアルプス山脈へ。その舞台は171.5kmの距離に獲得標高差5,450mを詰め込み、3つの超級山岳がそびえる、今大会の正真正銘の最難関(クイーン)ステージだ。

ヴィフを出発後、40kmの登り基調の平坦区間を終えると、ここから地獄のアップダウンが始まる。まず超級山岳グランドン(距離21.7km/平均5.1%)を越え、約20kmの下りを経て休みなく超級山岳マドレーヌ(距離19.2km/平均7.9%)へ。再び25kmのダウンヒルをこなし、15kmの平坦路で束の間の休息を取ったのち、大会史上3度目の登場となる超級山岳ラ・ロズ峠(距離26.4km/平均6.5%)に突入する。

2023年にタデイ・ポガチャル(スロベニア)が失速し、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)が総合優勝を引き寄せた時とは反対側から登るため、距離と平均勾配は異なる。全体的には緩やかだが、山岳飛行場を通過してからのラスト4kmは、勾配が不規則に変化する厳しい区間だ。フィニッシュ地点は今大会の最高標高である2,304m。ここに先頭で到達した選手には「アンリ・デグランジュ記念賞」と、通常の倍となる40ポイントが与えられる。

フィニッシュ予定時刻:午前0時28分頃(日本時間)




7月25日(金)第19ステージ
アルベールヴィル〜ラ・プラーニュ 129.9km(山岳)
獲得標高差4,550m

第19ステージ アルベールヴィル〜ラ・プラーニュ image:A.S.O.

アルベールヴィル〜ラ・プラーニュ 129.9km(山岳) image:A.S.O.
獲得標高差は前日よりも1,000m少ない4,550mだが、129.9kmという短いコース距離がかえってその過酷さを際立たせる。事実上、マイヨジョーヌ争いの最終日である第19ステージは、超級2つを含む5つの山岳を超える厳しい山岳ステージだ。

フランス・アルプスの中心部アルベールヴィルを出発し、1つめの2級山岳はわずか7km地点から始まる。その後平坦区間を挟むことなく1級、超級、2級と厳しい山岳が連続。約33kmの下り&平坦路をクリアし、最後には超級山岳ラ・プラーニュ(距離19.km/平均7.2%)が待ち構える。

2002年以来23年ぶりに登場するこの峠は、山頂標高2,052m。第3週の終盤で、選手たちにどれだけの力が残っているかが試される。1987年には一度遅れたステファン・ロシュ(アイルランド)が、霧の中から現れてタイムロスを食い止め、結果的にトリプルクラウン(ジロ、ツール、世界選手権の同年制覇)へと繋げた伝説的な舞台でもある。

フィニッシュ予定時刻:午前0時32分頃(日本時間)




7月26日(土)第20ステージ
ナンテュア〜ポンタルリエ 184.2km(丘陵)
獲得標高差2,900m

第20ステージ ナンテュア〜ポンタルリエ image:A.S.O.

ナンテュア〜ポンタルリエ 184.2km(丘陵) image:A.S.O.
パリに凱旋する前日は、個人TTでも山頂フィニッシュでもない、逃げ向きの丘陵ステージが用意された。第20ステージはスイス国境に近いナンテュアから丘陵地帯を繋ぎ、ポンタルリエに向かう184.2km。カテゴリー山岳は4つだが、コース全体に渡ってアップダウンが連続するため平坦区間はほとんどない。

中でも注目はコース中盤の2級山岳テジー(距離3.6km/平均8.9%)で、その勾配は険しく、パンチャーやクライマーでなければ生き残るのは難しいだろう。3週間走り続け、また2日連続の山岳ステージを経た選手たちは消耗しきっているため、集団のコントロールは困難を極める。そのため多くの選手が最後の力を振り絞り、逃げ切り勝利を狙うはずだ。また同様の理由で、前日までに決したはずのマイヨジョーヌや総合トップ10争いが、再び勃発する可能性も秘めている。

フィニッシュ予定時刻:午後11時23分頃(日本時間)




7月27日(日)第21ステージ
マント・ラ・ヴィル〜パリ・シャンゼリゼ 132.3km(平坦)
獲得標高差1,100m

第21ステージ マント・ラ・ヴィル〜パリ・シャンゼリゼ image:A.S.O.

マント・ラ・ヴィル〜パリ・シャンゼリゼ 132.3km(平坦) image:A.S.O.
昨年は五輪のためニースにフィニッシュしたツールが、2年ぶりにパリへ帰還する。しかも、シャンゼリゼ通りで初めてツールがフィニッシュしてから、今年でちょうど50年の節目。この記念すべき大会の最終日に、主催者は「パレード走行〜集団スプリント」という近年の定石にひねりを加えてきた。

パリ西部のマント・ラ・ヴィルをスタートし、前半に2つの4級山岳をクリア。その後はルーヴル美術館の中庭などパリの観光地を巡り、凱旋門やコンコルド広場、ルモニエトンネルなどを通過する馴染みの6.8kmコースを3周する。しかしその後は中間スプリントを挟み、パリ五輪にも使用されたモンマルトルの丘(距離1.1km/平均5.9%)を含む、より難易度の高い16.8kmコースを3周するレイアウトだ。

フィニッシュ地点はいつものシャンゼリゼ通りだが、3度にわたるモンマルトルの丘の登りでピュアスプリンターが生き残るのは難しいか。そのため、独走や小集団での決着、あるいは登坂力のあるスプリンターを含めた集団スプリントでの決着など、予測不能な展開が期待される。

フィニッシュ予定時刻:午前2時35分頃(日本時間)


text:Sotaro.Arakawa
image:A.S.O.
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