最後の「モンマルトルの丘」でタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)と共に逃げたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)が劇的な最終ステージ優勝。ポガチャルは自身5度目の総合優勝を達成し第113回ツール・ド・フランスが閉幕した。



7月26日(日)第21ステージ
シャンゼリゼ〜シャンゼリゼ 走行距離88.7km/獲得標高1,028m(平坦)


最後のツール参戦であることを明かしたジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダープロサイクリング) photo:A.S.O.
前日に区間2勝目を掴み、山岳賞を確定させたリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.


マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が握手 photo:A.S.O.

前日のフィニッシュ地点であるアルプ・デュエズから下山し、その日のうちに600kmの長距離移動をこなしたのは過酷な20日間を戦い抜いた158名の選手たち。主催者はフランス南部で発生した山火事にコース警備を担当する予定だった憲兵隊が派遣されたことを受け、前半のパレードラン区間をカットし、シャンゼリぜの周回コースだけを走る88.7kmコースへの短縮を決めた。

選手たちはパリ西郊のトワリーで予定通りチームプレゼンテーションを行い、一般車両を堰き止めた予定コースをチームバスで移動したのちにパリに入った。危険を回避するためにこの日の総合タイム差は付かないことが決まり、5勝目を手中に収めたマイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)と、マイヨヴェール(ポイント賞)のマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)、マイヨアポワ(山岳賞)のリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)、そしてマイヨブラン(ヤングライダー賞)のイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG)を先頭にパレードランが始まった。

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)と総合2位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が談笑 photo:CorVos

チーム総合成績で優勝したリドル・トレックが並んでパレード走行 photo:A.S.O.
マイヨブラン(ヤングライダー賞)を射止めたイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG)をベルナルが祝福 photo:A.S.O.


シャンゼリゼ通りをパレードする選手たち photo:A.S.O.

凱旋門やコンコルド広場、ルーブル美術館といったパリを代表する建築物を含んだシャンゼリゼ周回コースを、沿道埋め尽くした観客の声援に応えながらゆったりと走行。「5勝クラブ」入りを果たしたポガチャルとマイヨブランのデルトロを祝う特別ジャージで揃えたUAEチームエミレーツXRGが、続いてチーム総合成績優勝を決めたリドル・トレックが、さらにEFエデュケーション・イージーポストやデカトロンCMA CGM、ウノエックス・モビリティが横一列に並んで完走を祝うシーンも。

シャンゼリゼの小周回コースを6周回してから「モンマルトルの丘(登坂距離700m/平均勾配9.7%)」を含む約16kmのコースを3周回する88.7kmコース。4級山岳が設定されているモンマルトルの丘からフィニッシュ地点までのレイアウトは昨年の6.1kmから10.3kmに延長されたことで、スプリンターにもチャンスが見出された最終ステージの「レース」が、バティスト・ヴェストロフール(フランス、ロット・アンテルマルシェ)たちのアタックと共に始まった。

単独で走ったヴェストロフールは一旦吸収され、短いアタック合戦を経て逃げを決めたのはシャビエル・アスパレン(スペイン、ピナレロQ36.5プロサイクリング)とティボー・ゲルナレック(フランス、トタルエネルジー)の2人。20秒リードでこの日最初の「モンマルトルの丘」に入ったものの、この日のステージ優勝狙いを公言していたピーダスンが麓区間から猛烈にペースアップし、観客を盛り上げながら走っていたアスパレンをぶち抜いた。

観客で埋め尽くされた4級山岳「モンマルトルの丘」 photo:A.S.O.

最初のモンマルトルでアタックしたマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.

ファンデルプールの動きを見ながらピーダスンに続くタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)がモンマルトルでアタック photo:A.S.O.

石畳登坂を駆け上がったピーダスンに同調したのはマイヨジョーヌのポガチャルやマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)といった、やはり最終ステージ狙いを公言していた選手たち。一旦ペースダウンしてメイン集団に戻ったものの、2回目のモンマルトルに入ると今度はポガチャル自らアタックした。

石畳の名手ティム・ウェレンスのリードアウトから発射したポガチャルに食らいついたのはファンデルプール。下り区間では総合2位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が、続いてピーダスンが追いついて先頭は4名。全員が元/現世界王者という超豪華な先頭グループだったものの、オラフ・コーイ(オランダ)の集団スプリント勝利を狙うデカトロンCMA CGMが、開催国チームの威信を見せるように総力を上げて引き戻した。

パンクで遅れたデルトロを大きく引き離した(総合タイムの計測はこの時点で終了しているため成績に変動なし)メイン集団が、ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)の先導でラストのモンマルトルに突入した。落車痕が残るイギリスチャンピオンのフレッド・ライト(ピナレロQ36.5プロサイクリング)が好ペースを刻んだものの、登坂手前でポジションを下げていたポガチャルと、その背後でマークしていたファンデルプールが強烈な追い上げで先頭に立った。

合計3回登るモンマルトルの丘。地鳴りのような声援が響き渡る photo:A.S.O.

2周目のモンマルトルで飛び出したエヴェネプール、ファンデルプール、ポガチャル、ピーダスン。この後吸収された photo:CorVos

最後のモンマルトルでアタックを仕掛けるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)とタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

必死に追走するピーダスンを大きく引き離して、ポガチャルとワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が逃げ切った昨年の焼き直しのような展開でポガチャルとファンデルプールがモンマルトル頂上をクリア。木っ端微塵になったメイン集団から抜け出した追走グループを7秒、ピーダスンを含むスプリンター集団を15秒引き離した2人のの逃避行が始まった。

これまでの2周回と異なり、頭を下げたエアロポジションで踏み込んだポガチャルとファンデルプール。少数逃げには厳しいコースだったが、エトワール凱旋門が建つシャルル・ド・ゴール広場(ラスト5km)をぐるっと3/4周回した時点では追走グループとの差はむしろ広がり、シャンゼリゼの緩やかな下り勾配でもそのスピードは緩まない。やはりデカトロン勢が牽引するスプリンター集団は追走グループを捉えたものの、ラスト1.8kmのジャンヌダルク像でもタイム差はまだ7秒で、ラスト1kmのフラムルージュでは5秒。逃げ切りも、集団スプリントもありうる絶妙なタイム差で2グループが追走劇を繰り広げる。

デカトロンに代わりNSNサイクリングチームやコフィディスが牽引するメイン集団がぐいぐいと差を縮めて、フィニッシュラインが用意されたシャンゼリゼ大通りに突入。集団有利の緩斜面登坂で、追い上げてくる集団の様子と、そしてポガチャルの脚が売り切れたことを確認したファンデルプールがさらにもう一発踏みを入れる。

強烈な加速で逃げるファンデルプールと、ピーダスンがロングスプリントを開始するメイン集団の差が急速に縮まりながらフィニッシュラインへ。ファデルプールが捕まった際のプランBとしてヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)がスプリントでピーダスンを交わし、ファンデルプールの逃げ切りを確認したフィリプセンが踏み込みを調整したことでアルペシン・プレミアテックによる最終ステージのsワンツーフィニッシュが決まった。

逃げるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)が僅かに先着 photo:CorVos

チームのワンツーフィニッシュを祝うヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) photo:CorVos

総合5勝をアピールしながらフィニッシュするタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

もはやこれ以上あり得ないような、劇的すぎるツール・ド・フランス最終日の幕切れ。ガッツポーズを出す余裕もなく、しばらく路上に倒れ込んでいたファンデルプールにとって、昨年体調不良で逃したモンマルトル込みのシャンゼリゼステージは是非とも勝ちたい場所だった。「昨年はこのステージをテレビで見ることしかできなかった。その時からこの瞬間を思い描いてきた。まるで夢のような展開だ。集団に飲み込まれると思ったが、勝利のことだけを考えて踏み続けた。ラスト500mは頭を下げて、限界までペダルを踏み込んだ。誰かに横から抜かれるのを覚悟していたが、そうはならなかった」と優勝シーンを振り返る。「チームとしてシャンゼリゼを含む区間3勝を挙げた。かなり良い結果だと思う」とも加えている。

2年連続でステージ優勝に一歩手が届かなかったポガチャルだったが、最後はペースを緩めて、笑顔で5勝をアピールしながらフィニッシュラインに到達。ジャック・アンクティル、エディ・メルクス、ベルナール・イノー、そしてミゲル・インドゥラインに続くツール・ド・フランス5勝クラブ入りを達成した。27歳10ヶ月5日という若さでの樹立は「カンニバル」と呼ばれたメルクスをも上回る最年少記録だ。

スーパー敢闘賞はリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)の手に渡った photo:A.S.O.
チーム総合成績で圧勝したリドル・トレック photo:A.S.O.


今大会区間2勝目を掴んだマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック) photo:A.S.O.

イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG)はマイヨブランと総合3位を獲得 photo:A.S.O.

史上6人目となる3大グランツールでのポイント賞獲得を叶えたマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.

2024年大会に続く2回目のマイヨアポワを獲得したリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.

2026年ツール覇者に輝いたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

「なんて素晴らしい日なのだろう。素晴らしすぎて言葉がない。雰囲気も最高で、無事にレースが終わり、5度目の総合優勝を果たせて嬉しいよ。どの勝利も特別だ。ツール出場7回で、7度目のパリの表彰台だ。ツールの歴史に刻まれるような記録で本当に信じられない」と、レース直後の公式インタビューで素直な気持ちを語ったポガチャル。「今大会は素晴らしいライバルたちと戦うことができた。ヨナス(ヴィンゲゴー)や他の選手たちが落車によってリタイアしたのは悲しいが、一日も早い回復を願っている。そして来年、また彼らと一緒に戦いたい」とライバルを称えるコメントも残している。

ピーダスンは史上6人目となる3大グランツールでのポイント賞獲得を叶え、カラパスは2024年大会に続く2回目のマイヨアポワを獲得。マイヨブラン争いではデルトロに敵わなかったものの、総合4位で終えたポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM)は1904年の記録を塗り替え、グランツール史上最年少(19歳10ヶ月2日)でトップ5入りを果たすこととなった。

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)を筆頭に総合トップスリーが表彰台に上がる photo:A.S.O.

特別ジャージを獲得した4選手。最終ステージ時点で今大会での繰り下がり着用はなかった photo:A.S.O.

タデイ・ポガチャル(スロベニア)と、総合優勝に導いたUAEチームエミレーツXRGの選手たち photo:A.S.O.

ツール・ド・フランス2026第21ステージ結果
1位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック) 1:58:49
2位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)
3位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)
4位 マックス・カンター(ドイツ、XDSアスタナ)
5位 オラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM)
6位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 リック・プルイマース(オランダ、チューダープロサイクリング)
8位 アントニー・テュルジス(フランス、トタルエネルジー)
9位 ミラン・フレティン(ベルギー、コフィディス)
10位 クレマン・リュソ(フランス、グルパマFDJユナイテッド)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 73:56:26
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +6:26
3位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) +9:42
4位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) +11:56
5位 レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) +13:02
6位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) +14:59
7位 フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) +17:48
8位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) +20:00
9位 トーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング) +29:28
10位 ジョルダン・ジェガット(フランス、トタルエネルジー) +33:21
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 559pts
2位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) 475pts
3位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム) 367pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) 156pts
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 100pts
3位 ヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ) 99pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) 74:06:08
2位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) +2:14
3位 レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) +3:20
チーム総合成績
1位 リドル・トレック 224:57:43
2位 UAEチームエミレーツXRG +36:57
3位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +1:06:22
text:So Isobe
photo:CorVos, A.S.O.

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