世界選手権1週間前のワールドカップ。アドリアン・ボワシ(フランス、スペシャライズド・ファクトリーレーシング)がMTB復帰したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)を退けて「キャリア最高の勝利」を挙げた。女子レースではシーナ・フレイ(スイス、スペシャライズド・ファクトリーレーシング)がXCC、XCO制覇。



2026年WHOOP UCI MTBワールドシリーズ、ヨーロッパラウンド最終戦の舞台となったのはフランスの聖地レジェ(オート=サヴォワ県)。世界選手権を1週間後に控える重要な一戦であり、男子エリートには待望の世界選手権優勝を目指すマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)が参戦を果たしたほか、アジア王者に輝いた北林力(UNNO FACTORY RACING)も久々の欧州レースに挑んだ。

女子エリート:フレイが勝利、リスヴェッズとの総合争いに望みをつなぐ

先頭グループを引っ張るシーナ・フレイ(スイス、スペシャライズド・ファクトリーレーシング) photo:UCI

女子エリートレースはお馴染みの展開で幕を開けた。序盤の登りで新欧州女王となったシーナ・フレイ(スイス、スペシャライズド・ファクトリーレーシング)と世界女王ジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン、キャニオンXCレーシング)が競り合う中、リスヴェッズは前年の同会場優勝時と同じように、最初の下りまでに12秒のリードを築く。しかしサヴィリア・ブランク(アメリカ、デカトロン・フォードレーシングチーム)が追走して1周目のうちに現世界女王を引き戻した。

フレイとマルティナ・ベルタ(イタリア、オリジン・レーシングディヴィジョン)も合流して先頭は4名。ペースが上がるにつれてベルタがフレイのプレッシャーに耐えきれず脱落すると、代わってアレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン)が表彰台圏内に浮上する。ケラーは登りのたびに苦しめられながらも、持ち前の下りのテクニックで何度も差を取り戻し、結果として4名が最終ラップまで揃って優勝の可能性を残す展開となった。

XCC/XCO制覇を遂げたシーナ・フレイ(スイス、スペシャライズド・ファクトリーレーシング) photo:UCI

UCI MTBワールドシリーズ2026 第7戦 女子エリート表彰台 photo:UCI

終盤、主導権を握ったのはフレイだった。最終ラップ最初の登りで猛烈なペースを刻んでケラーとブランクを突き放し、森の中を抜ける最後の急な登りでリスヴェッズを引き剥がす。リスヴェッズも最後まで食い下がったが、フレイは2秒差を守り切ってフィニッシュ。韓国モナ・ヨンピョンでのXCC・ XCO2冠に続く、フレイにとって今シーズン2度目のXCOワールドカップ制覇だ。

なお、この日はサマラ・マクスウェル(ニュージーランド、デカトロン・フォードファクトリーレーシング)のXCO復帰戦でもあった。2025年シリーズ総合王者は摂食障害によって暫くレースを離れていたが、1周目15位からごぼう抜きの追い上げを見せて6位でフィニッシュする印象的な復帰を果たしている。



男子エリート:ボワシが「キャリア最高の勝利」でファンデルプールを退ける

MTB復帰戦のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)。序盤から先頭グループに加わり、積極的にレースを展開した photo:UCI

男子エリートの2列目グリッドからスタートしたファンデルプールは、開始直後の登りで早くも先頭集団に追い付き、一気に優勝候補としての存在感を示す。一方、体調不良を抱えていた新フランス王者マティス・アザロ(フランス、オリジン・レーシングディヴィジョン)はリタイアを強いられた。

レース中盤、先頭でペースを作り続けたアドリアン・ボワシ(フランス、スペシャライズド・ファクトリーレーシング)によって、レースの折り返し地点までに5名の先頭集団が形成される。メンバーはボワシ、今季待望のW杯優勝を挙げた前フランス王者のルカ・マルタン(フランス、キャノンデール・ファクトリーレーシング)、シモーネ・アヴォンデット(イタリア、ウィリエール・ヴィットリア・ファクトリーレーシング)、ファンデルプール、そしてマルティン・ヴィダウレ(チリ、スペシャライズド・ファクトリーレーシング)。7年ぶりとなるXCOワールドカップ優勝、そして世界選手権の優勝を狙うファンデルプールは、ラスト2周回でアタックして主導権を握ろうとする。ツール・ド・フランスで総合4位に入ったポール・セイシャス(フランス、デカトロン・CMA CGM)が鳴らす鐘の音とともに5名は最終ラップへ突入した。

ファンデルプールとの勝負を繰り広げるアドリアン・ボワシ(フランス、スペシャライズド・ファクトリーレーシング) photo:UCI

ファンデルプールを抑えて勝利したアドリアン・ボワシ(フランス、スペシャライズド・ファクトリーレーシング) photo:UCI

インタビューで「いつか憧れのマチューとW杯の先頭争いをするのが夢」と語っていたボワシは、最終ラップ最初の急な登りで強烈なアタックを仕掛けた。ファンデルプールとヴィダウレは反応したものの、それまでシリーズランキング首位を守ってきたマルタンとアヴォンデットは対応できずに脱落。ボワシの容赦ないペースにヴィダウレもやがて力尽き、優勝争いはファンデルプールとの一騎打ちに絞られる。ボワシは登りのたびにプレッシャーをかけ続けたが、最終的な決め手となったのはダウンヒル。徐々にファンデルプールとの差を開き、短いペダリング区間でも必死に追いかけるファンデルプールと同じスピードを維持し、フィニッシュラインまで駆け降り勝利した。

「間違いなく、自分のキャリアで一番美しい勝利だ。レースがどれだけ厳しかったか、この戦いがどれだけ激しかったかを考えると、一生忘れられないものになると思う。僕はマチューの大ファンとして育ったし、今でもそうだ。今日、彼や他の選手たちと渡り合えたということ自体、一生の記憶に残る出来事だ」と、今季3度目のW杯XCO勝利を掴んだボワシは言う。「レースにプランを持ち込むタイプではなくて、その日の脚の感覚次第で走っている。今はただ、とても幸せだ。明日からはまたゼロからのスタートで、世界選手権に向けた準備に集中するけれど、今日はこの瞬間を楽しみたい」とも加えている。

一方、ファンデルプールは「最初の3,4周はペースに付いていくのが大変だったけど、徐々に調子が良くなっていって、最後はかなり良かったけれどミスで取り返しのつかない差をつけられてしまった。でも今日はアドリアンが最強だったし、来週に向けていいリハーサルにもなった。去年も世界選手権前はいい感触だったけれど、本番ではダメだった。同じ状況にならないことを願っているよ」と話している。

また、後方スタートだった北林は87位で完走には繋がらず。4位に入ったマルタンはシリーズランキングでのリードは残り2戦を前にボワシとの差わずか15ポイントにまで縮まっている。

ダウンヒルの男子エリートを初制覇した最終走者のマックス・アルラン(フランス、コメンサル・マックオフ)。無数の母国ファンがフィニッシュ地点に殺到した photo:UCI

熱狂するファンに応えるマックス・アルラン(フランス、コメンサル・マックオフ) photo:UCI
UCI MTBワールドシリーズ2026 第7戦 女子エリート結果
1位 シーナ・フレイ(スイス、スペシャライズド・ファクトリーレーシング) 1:22:48
2位 ジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン、キャニオンXCレーシング) +0:02
3位 サヴィリア・ブランク(アメリカ、デカトロン・フォードレーシングチーム) +1:07
4位 アレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン) +1:32
5位 ニコール・コラー(スイス、ラピエール・PXRレーシング) +1:45
6位 サマラ・マクスウェル(ニュージーランド、デカトロン・フォードファクトリーレーシング) +1:52
7位 マルティナ・ベルタ(イタリア、オリジン・レーシングディヴィジョン) +2:05
8位 プック・ピーテルセ(オランダ、アルペシン・プレミアテック) +3:01
9位 グウェンダリン・ギブソン(アメリカ、トレック・アンブロークンXC) +3:36
10位 ラウラ・スティガー(オーストリア、スペシャライズド・ファクトリーレーシング) +3:57
UCI MTBワールドシリーズ2026 第7戦 男子エリート結果
1位 アドリアン・ボワシ(フランス、スペシャライズド・ファクトリーレーシング) 1:19:48
2位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック) +0:07
3位 マルティン・ヴィダウレ(チリ、スペシャライズド・ファクトリーレーシング) +0:32
4位 ルカ・マルタン(フランス、キャノンデール・ファクトリーレーシング) +0:36
5位 シモーネ・アヴォンデット(イタリア、ウィリエール・ヴィットリアファクトリーチーム) +0:45
6位 マティアス・フルッキガー(スイス、トムス・マクソン) +1:00
7位 デヴィッド・ラスト(ドイツ、デカトロン・フォードレーシングチーム) +1:09
8位 ダリオ・リロ(スイス、ジャイアントファクトリーオフロードチーム) +1:57
9位 コール・プンチャード(カナダ、キャノンデールファクトリーレーシング) +2:06
10位 ルカ・ブライド(イタリア、ウィリエール・ヴィットリアファクトリーチーム) +2:10

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