チューブレスレディがすっかり定着し、ハイエンドタイヤは軒並み「TLR」表記が並ぶ。だが一方で「シーラント管理が億劫」と感じているユーザーも少なくない。そんな中、ヴィットリアが満を持して投入したのが、あのCORSA PROのクリンチャーモデルだ。乗り味や重さ、TLRとの違いは?実走テストをお届けする。

5月に追加されたCORSA PROのクリンチャーモデル。28Cを実際に試してみた photo:So Isobe
誰がなんといっても間違いなく、現代のロードバイク界はチューブレス(レディ)タイヤ全盛期だ。
ほとんどのタイヤメーカーのハイエンドモデルが「TLR」表記になって久しく、欧州もアジアも日本でも、トップ選手たちが使うタイヤの中にチューブが入っている確率はほぼ0%に近い。シーラント不要なリアル・チューブレスタイヤもディスコンになりかけている状況で、「せっかくなら良いタイヤで走りたいけど、シーラント運用が基本になるTLRはめんどくさすぎる」という声を上げるユーザーは少なくない。ところが最近、その状況が少し変わりつつある。
2025年の5月頃から、まずはヴィットリアが、続いてピレリが、市況を鑑みてハイエンドのクリンチャータイヤをリリースしたのだ。上質なクリンチャータイヤの選択肢が増え、一般ユーザーにとって朗報と言える「クリンチャー復権、TLRとの共存」時代へと移ろうとしている。
特にヴィットリアが誇るCORSA PROシリーズに加わったクリンチャーモデルは、乗り心地に優れるコットンケーシング採用のクリンチャータイヤとして唯一無二の存在だ。自社工場に低温成形を可能にする電気釜(従来は高温の蒸気釜)を新規開発・導入し、古から存在するコットンタイヤを業界最高水準のCORSA PROに仕立てるなど、コットンケーシングにこだわり続ける(シクロクロス分野では絶大な信頼を得るデュガスを買収し、ヴィットリアの最新技術をミックスしてタイヤラインナップをリニューアルしてしまったほどに)ヴィットリアならではのハイスペックタイヤと言えるだろう。

ヴィットリアの誇る320TPIコットンケーシング。TLR版よりもサイドは薄く柔らかい。ビード素材はTLRから変更されている photo:So Isobe

実測重量は2本とも259g。カタログ値の255gから+4gだ photo:So Isobe 
内幅23mmリムに取り付けた際の実測値は28.8mm弱 photo:So Isobe
さて、新登場したクリンチャーのCORSA PROが早速編集部に届いたので、ファーストインプレッションをお届けしようと思う。試すのはいつもお馴染みの高木...ではなく、普段CORSA PROのTLRをチューブレス運用しているCWスタッフの磯部。先代CORSAやスペシャライズドのTURBO COTTONなど、気づけばずっとコットンケーシングのタイヤを使っていて、マイバイクを縦剛性の高いファクターONEに切り替えてからは、特にCORSA PROならではの柔らかい乗り味を気に入って使ってきた。
届いたCORSA PROクリンチャーは28Cで、手持ちのTLR版とサイズは同じ。重量を測ると2本とも259g(カタログ値255g)で、28CのTLRはカタログ値295gと、タイヤ単体で見ればクリンチャーのほうが40gほど軽い計算だ。せっかくの乗り味を損ねないように、ヴィットリアがレコメンするCompetition Latex Tube(85g)を用意して、内幅23mmのエンヴィホイール(SES6.7)に取り付けてみた。トータル重量で見比べると、今回の「クリンチャー+Competition Latex Tube」のセットと「TLR+ヴィットリア純正シーラント(適量は40cc)+バルブ」を比べると、クリンチャー仕様はおおよそ40g、前後で合計80gほど重い、という計算だ。
ちなみにタイヤのつけ外し作業が楽なように、クリンチャーのビード部分はTLRのザイロンからケブラーに変更されているとのことで、3.5気圧くらいまで空気を充填したらパチン!とビードが収まり作業性も二重丸。そのうえ28Cと30Cはフックレス対応なので、エンヴィやジップなどの最新モデルにも取り付けられるのだ。有能!

もともと縦剛性の高いマイバイクにCORSA PROを組み合わせていた私イソベ。クリンチャーでも性格は変わらずフィーリングは◎ photo:Naoki Yasuoka
実際に走ってみると、その乗り味はCORSA PROというネームバリューに期待するものと全く同じだった。320TPIを誇るヴィットリアのコットンケーシングならではの、とてもしっとりとして、路面を包み込むような優しい乗り味はTLR版同様で、舗装状態が良くない場所でも神経質になることが少ない。
自分がCORSA PROをずっと使っている理由が、特に下りコーナーでの安心感を気に入っているから。コーナーのキャパシティに対してある一定以上のスピードで突っ込んでも、結構なバンク角を付けても、路面に凹凸があっても、コットンケーシングならではの柔らかさでスルッとこなしてしまう(それは雨でも一緒。去年参加したウィリエールの海外発表会で、30CのCORSA PRO TLRをつけたバイクで雨の峠を攻めた時、うっかりブレーキが普段と左右逆なのを忘れて相当ヤバい領域で高速コーナーを曲がったものの、何事もなかったようにクリアできた)。

走行フィールはチューブレスモデルよりも僅かに硬い。それでもコットンケーシングならでは、CORSA PROならではの乗り味は共通 photo:Naoki Yasuoka

少し荒れた路面でも問題ナシ。凹凸をいなすように走る、CORSA PROならではの乗り味が光る photo:Naoki Yasuoka 
インプレ撮影コーナーの最速ラインにピッタリ沿うひび割れ。結構嫌な挙動をするので敬遠していたが、CORSA PROの乗り味なら特に恐怖感なく走ることができた。優秀。 photo:Naoki Yasuoka
厳密に言えば、チューブが入っているためか、乗り味自体はクリンチャーモデルの方が僅かに硬いようだが、TLRと比べてタイヤ側で空気を保持する必要がなく、そのぶん手で触って分かるほどケーシングが薄く仕上げられているので、CORSA PRO特有のしなやかさがほぼ維持されているのだろう。硬くダイレクトな反応をタイヤに求めるレーサーなら別の選択肢があるはずだが、特にフレームが高剛性化している現代では、距離を重ねても疲れにくいCORSA PROの乗り味は大きなメリットになると思う。
耐久性に関しても、CORSA PROのTLRモデルを使っているぶんには特に問題を感じていない(トレッド面に金属片が刺さってパンクしたことは1度)が、タイヤサイドはどうしても紫外線で変色したり、トレッド面のゴムの劣化が少し早いという宿命はある。ヴィットリアの輸入販売を行うVTJによれば、タイヤサイドのコーティング素材が変色しているだけで性能低下は起こらないというものの、あまりにもカスカスになって防護機能が無くなれば当然ケーシングにダメージを与えてしまうので、窓の近くなど、屋内保管であっても直射日光が当たりやすい場所は避けるべきだろう。

既に大人気だというCORSA PROクリンチャー。上質な走りのクリンチャータイヤを求めている方にはぜひオススメ photo:Naoki Yasuoka
CORSA PROのクリンチャーは、既に28Cや30Cといったワイドサイズがスタンダード化したロードタイヤ界における、他に類を見ないコットンケーシングのプロスペックモデル。TLRと比べて装着段階ではやや重量増になるものの、CORSA PROならではの乗り味はほぼそのままで、シーラント作業の手間も無いとあれば、使いたいと思う方も少なくないはず。しなやかで速く、上質なクリンチャータイヤを求めている方には是非試してもらいたい。
ヴィットリア Corsa Proチューブタイプ
タイプ:チューブタイプ、フォールディング
ケーシング:Cotton Corespun 320 TPI
コンパウンド:Race Formulation Graphene + Silica、
サイドウォールカラー:Cotton tan
サイズ(重量):26c(245g)、28c(255g)、30c(265g)
価格:12,980円(税込)
text:So Isobe

誰がなんといっても間違いなく、現代のロードバイク界はチューブレス(レディ)タイヤ全盛期だ。
ほとんどのタイヤメーカーのハイエンドモデルが「TLR」表記になって久しく、欧州もアジアも日本でも、トップ選手たちが使うタイヤの中にチューブが入っている確率はほぼ0%に近い。シーラント不要なリアル・チューブレスタイヤもディスコンになりかけている状況で、「せっかくなら良いタイヤで走りたいけど、シーラント運用が基本になるTLRはめんどくさすぎる」という声を上げるユーザーは少なくない。ところが最近、その状況が少し変わりつつある。
2025年の5月頃から、まずはヴィットリアが、続いてピレリが、市況を鑑みてハイエンドのクリンチャータイヤをリリースしたのだ。上質なクリンチャータイヤの選択肢が増え、一般ユーザーにとって朗報と言える「クリンチャー復権、TLRとの共存」時代へと移ろうとしている。
特にヴィットリアが誇るCORSA PROシリーズに加わったクリンチャーモデルは、乗り心地に優れるコットンケーシング採用のクリンチャータイヤとして唯一無二の存在だ。自社工場に低温成形を可能にする電気釜(従来は高温の蒸気釜)を新規開発・導入し、古から存在するコットンタイヤを業界最高水準のCORSA PROに仕立てるなど、コットンケーシングにこだわり続ける(シクロクロス分野では絶大な信頼を得るデュガスを買収し、ヴィットリアの最新技術をミックスしてタイヤラインナップをリニューアルしてしまったほどに)ヴィットリアならではのハイスペックタイヤと言えるだろう。



さて、新登場したクリンチャーのCORSA PROが早速編集部に届いたので、ファーストインプレッションをお届けしようと思う。試すのはいつもお馴染みの高木...ではなく、普段CORSA PROのTLRをチューブレス運用しているCWスタッフの磯部。先代CORSAやスペシャライズドのTURBO COTTONなど、気づけばずっとコットンケーシングのタイヤを使っていて、マイバイクを縦剛性の高いファクターONEに切り替えてからは、特にCORSA PROならではの柔らかい乗り味を気に入って使ってきた。
届いたCORSA PROクリンチャーは28Cで、手持ちのTLR版とサイズは同じ。重量を測ると2本とも259g(カタログ値255g)で、28CのTLRはカタログ値295gと、タイヤ単体で見ればクリンチャーのほうが40gほど軽い計算だ。せっかくの乗り味を損ねないように、ヴィットリアがレコメンするCompetition Latex Tube(85g)を用意して、内幅23mmのエンヴィホイール(SES6.7)に取り付けてみた。トータル重量で見比べると、今回の「クリンチャー+Competition Latex Tube」のセットと「TLR+ヴィットリア純正シーラント(適量は40cc)+バルブ」を比べると、クリンチャー仕様はおおよそ40g、前後で合計80gほど重い、という計算だ。
ちなみにタイヤのつけ外し作業が楽なように、クリンチャーのビード部分はTLRのザイロンからケブラーに変更されているとのことで、3.5気圧くらいまで空気を充填したらパチン!とビードが収まり作業性も二重丸。そのうえ28Cと30Cはフックレス対応なので、エンヴィやジップなどの最新モデルにも取り付けられるのだ。有能!

実際に走ってみると、その乗り味はCORSA PROというネームバリューに期待するものと全く同じだった。320TPIを誇るヴィットリアのコットンケーシングならではの、とてもしっとりとして、路面を包み込むような優しい乗り味はTLR版同様で、舗装状態が良くない場所でも神経質になることが少ない。
自分がCORSA PROをずっと使っている理由が、特に下りコーナーでの安心感を気に入っているから。コーナーのキャパシティに対してある一定以上のスピードで突っ込んでも、結構なバンク角を付けても、路面に凹凸があっても、コットンケーシングならではの柔らかさでスルッとこなしてしまう(それは雨でも一緒。去年参加したウィリエールの海外発表会で、30CのCORSA PRO TLRをつけたバイクで雨の峠を攻めた時、うっかりブレーキが普段と左右逆なのを忘れて相当ヤバい領域で高速コーナーを曲がったものの、何事もなかったようにクリアできた)。



厳密に言えば、チューブが入っているためか、乗り味自体はクリンチャーモデルの方が僅かに硬いようだが、TLRと比べてタイヤ側で空気を保持する必要がなく、そのぶん手で触って分かるほどケーシングが薄く仕上げられているので、CORSA PRO特有のしなやかさがほぼ維持されているのだろう。硬くダイレクトな反応をタイヤに求めるレーサーなら別の選択肢があるはずだが、特にフレームが高剛性化している現代では、距離を重ねても疲れにくいCORSA PROの乗り味は大きなメリットになると思う。
耐久性に関しても、CORSA PROのTLRモデルを使っているぶんには特に問題を感じていない(トレッド面に金属片が刺さってパンクしたことは1度)が、タイヤサイドはどうしても紫外線で変色したり、トレッド面のゴムの劣化が少し早いという宿命はある。ヴィットリアの輸入販売を行うVTJによれば、タイヤサイドのコーティング素材が変色しているだけで性能低下は起こらないというものの、あまりにもカスカスになって防護機能が無くなれば当然ケーシングにダメージを与えてしまうので、窓の近くなど、屋内保管であっても直射日光が当たりやすい場所は避けるべきだろう。

CORSA PROのクリンチャーは、既に28Cや30Cといったワイドサイズがスタンダード化したロードタイヤ界における、他に類を見ないコットンケーシングのプロスペックモデル。TLRと比べて装着段階ではやや重量増になるものの、CORSA PROならではの乗り味はほぼそのままで、シーラント作業の手間も無いとあれば、使いたいと思う方も少なくないはず。しなやかで速く、上質なクリンチャータイヤを求めている方には是非試してもらいたい。
ヴィットリア Corsa Proチューブタイプ
タイプ:チューブタイプ、フォールディング
ケーシング:Cotton Corespun 320 TPI
コンパウンド:Race Formulation Graphene + Silica、
サイドウォールカラー:Cotton tan
サイズ(重量):26c(245g)、28c(255g)、30c(265g)
価格:12,980円(税込)
text:So Isobe
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