本日8月23日より、今季のグランツールを締めくくるブエルタ・ア・エスパーニャが開幕する。イタリア・トリノを起点にフランス、アンドラ、スペインの4ヶ国を巡り、初日の平坦ステージからチームTT、山岳ステージなどバラエティに富んだ1週目をプレビューする。



2025年ブエルタ・ア・エスパーニャコースマップ image:Unipublic

1935年に初開催され、90周年、第80回大会を迎えたブエルタ・ア・エスパーニャは今年、イタリアでスタートを切る。栄えある史上6度目の国外スタートの地はトリノ。イタリア国内で3日間を過ごした後、フランス、アンドラを経由して5日目にようやくスペインに入国する。その後はピレネー山脈に沿うように西へと向かい、例年通りマドリッドで幕を閉じる。

コース全体図が示す通り、今年はスペインの北部を中心に走り、最終日のマドリッドがコース最南端となるレイアウトだ。

全21ステージの内訳は下記の通りで、特筆すべきは10回設定された山頂フィニッシュだ。しかし、4つの平坦ステージなどスプリンターにも勝利のチャンスは用意されている。マイヨロホを巡る総合争いのポイントは、第5ステージのチームタイムトライアルと、終盤の第18ステージに設定された個人TTとなるだろう。また、最大勾配24%の超級山岳アングリル(距離12.4km/平均9.7%)にフィニッシュする第13ステージも見逃せない。

ステージカテゴリー内訳
平坦ステージ:6(うち山頂フィニッシュ1)
丘陵ステージ:8
山岳ステージ:5
個人タイムトライアル:1
チームタイムトライアル:1

今大会のクイーン(最難関)ステージと目されるのは、超級山岳ボラ・デル・ムンド(距離12.3km/平均8.6%)にフィニッシュする最終日前日の第20ステージだ。その頂上でマイヨロホの最終的な所有者が決定する。



8月日(土)第1ステージ
トリノ〜ノヴァーラ 186.1km(平坦)
獲得標高差1,337m

第1ステージ トリノ〜ノヴァーラ image:A.S.O.

イタリア第4の都市トリノで始まるブエルタ・ア・エスパーニャは、集団スプリントが濃厚な平坦ステージで幕を開ける。つまり、2007年以来18年ぶりにスプリンターに総合リーダーの証であるマイヨロホ着用のチャンスが訪れるのだ。

トリノを出発してからの63.3kmまでは丘1つない平坦路。そして今大会1つめの山岳である3級ラ・セッラは登坂距離6.4kmに平均5.3%と、マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を争うにはふさわしい難易度。残り90.6km地点の中間スプリントでスプリンターが前哨戦を繰り広げ、ミラノ〜サンレモでもお馴染みノヴァーラで白熱の集団スプリントが見られるだろう。



8月日(日)第2ステージ
アルバ〜リモーネ・ピエモンテ 159.6km(平坦/山頂フィニッシュ)
獲得標高差1,884m

第2ステージ アルバ〜リモーネ・ピエモンテ image:A.S.O.

引き続きイタリアが舞台のブエルタ第2ステージは、アルバを出発して2級山岳リモーネ・ピエモンテ(距離9.8km/平均5.1%)を駆け上がる山頂フィニッシュだ。これは今大会10度の山頂フィニッシュのうちの1つだが、平均勾配も緩やかな2級山岳で、なおかつコース距離も159.6kmと短いため、ステージの難易度は低い。

そのためクライマーによる独走勝利は難しく、絞られた小集団でのスプリントが大方の予想。しかし、総合優勝の有力候補がいきなり遅れてタイムを失う可能性もある、大会史上初のアルプス山脈を舞台とした絶妙なレイアウトといえる。



8月日(月)第3ステージ
サン・マウリーツィオ・カナヴェーゼ〜チェーレス 134.6km(丘陵)
獲得標高差1,996m

第3ステージ サン・マウリーツィオ・カナヴェーゼ〜チェーレス image:A.S.O.

今大会最後のイタリア・フィニッシュとなる3日目は、トリノ空港のあるサン・マウリーツィオ・カナヴェーゼを出発する僅か134.6kmの丘陵ステージ。設定されたカテゴリー山岳は、コース中央の2級山岳イッシリオ(距離5.5km/平均6.5%)とラストの4級山岳チェーレス(距離2.6km/平均3.6%)の2つだけ。それゆえ獲得標高差は1,996mと控えめだ。

総合争いが動くような難易度ではなく、集団スプリントの可能性もあるだろう。しかし主催者を含めた大方は、逃げた選手たちが躍動するレース展開になると予想する。



8月日(火)第4ステージ
スーザ〜ヴォワロン 206.7km(丘陵)
獲得標高差2,919m

第4ステージ スーザ〜ヴォワロン image:A.S.O.

大会4日目を迎えてもまだ、ブエルタはスペインに至らない。イタリアのスーザをスタートし、アルプスを越えてフランスのヴォワロンに至る丘陵ステージ。しかし山岳(3級、2級、2級)が登場するのは前半だけで、その後は約80kmにわたる長い下りを経て、フィニッシュまで平坦路が続いていく。

そのためステージ前半をスプリンターチームがコントロールし、集団スプリントでのステージ優勝を狙ってくる可能性が高い。反対に逃げ集団は前半でできる限りリードを拡げ、その貯金を使いながらフィニッシュを目指したいところ。つまり、前半から逃げによる激しい展開が予想される。



8月日(水)第5ステージ
フィゲレス〜フィゲレス 24.1km(チームTT)
獲得標高差86m

第5ステージ フィゲレス〜フィゲレス image:A.S.O.

ようやくスペインに入国したブエルタは、その本国初日に、グランツールで近年稀なチームタイムトライアルを持ってきた。グランツールの1週目に設定されるのは稀なチームTTの舞台は、スペイン本土の最北東部の街フィゲレス。スタート直後に下り、フィニッシュまで緩斜面の登り坂が続くが、波乱を誘発するようなレイアウトではない。

有利なのは24.1kmという距離を安定して牽引できる、ルーラーとTTスペシャリストを多く抱えるチーム。ここでのタイム差が3週目までの総合争いに影響を与えうる、気の抜けない戦いだ。



8月日(木)第6ステージ
ウロット〜パル(アンドラ) 170.3km(山岳/山頂フィニッシュ)
獲得標高差3,475m

第6ステージ ウロット〜パル(アンドラ) image:A.S.O.

今大会最初の本格山岳ステージは、ウロットから多くの選手が暮らすアンドラのパルを目指す。ピレネー山脈に設定された合計4つ山岳は、スタート直後の3級山岳から始まり、続く1級山岳を経てアンドラに入国。終盤に2級山岳コメジャ(距離4.2km/平均8%)を越え、1級山岳パル(距離9.6km/平均6.3%)の頂上にフィニッシュする。

注目は逃げに乗った選手たちが狙ってくるマイヨモンターニャ(山岳賞)争い。そしてもちろん、マイヨロホ(個人総合成績)を巡る総合エースたちによるクライミングバトルだ。



8月日(金)第7ステージ
アンドラ・ラ・ベリャ〜セルレル・ウエスカ・ラ・マージャ 188km(山岳/山頂フィニッシュ)
獲得標高差4,211m

第7ステージ アンドラ・ラ・ベリャ〜セルレル・ウエスカ・ラ・マージャ image:A.S.O.

ピレネー山脈を舞台にした2日連続の山岳&山頂フィニッシュの2日目は、アンドラのアンドラ・ラ・ベリャをスタートし、直後にスペインへ再入国する。獲得標高差4,211mのコースはまず、登坂距離24.7km(平均4.4%)と長大な1級山岳から始まる。その後2つの2級山岳を越え、最後の1級山岳セルレル・ウエスカ・ラ・マージャ(距離12.1km/平均5.8%)に臨む。

1990年代にブエルタの常連だったセルレルの平均勾配が5.8%と比較的低いのは、途中2か箇所の下り区間があるため。後半よりも前半部が厳しいため、タイム差を稼ぐためのアタックは麓近くで起こるかもしれない。



8月日(土)第8ステージ
モンゾン・テンプラリオ〜サラゴサ 163.5km(平坦)
獲得標高差1,236m

第8ステージ モンゾン・テンプラリオ〜サラゴサ image:A.S.O.

2日連続の山岳ステージから一転、この日はスプリンターが主役の平坦ステージだ。モンゾン・テンプラリオを出発後、アラゴン州の平原を横切り州都サラゴサと向かう。横風による集団分断(エシュロン)が起こらなければ、2023年の第12ステージと同じく集団スプリントが予想される。

この時はアルペシン・ドゥクーニンクの強固なリードアウトトレインを、フィニッシュ手前の緩い左コーナーでUAEチームエミレーツ(当時)の隊列が追い抜き、フアン・モラノ(コロンビア)が勝利した。再び白熱のハイスピードバトルが期待される。



8月日(日)第9ステージ
アルファロ〜エスタンシオン・デ・エスクイ・デ・ヴァルデズカレイ 195.5km(丘陵/山頂フィニッシュ)
獲得標高差3,311m

第9ステージ アルファロ〜エスタンシオン・デ・エスクイ・デ・ヴァルデズカレイ image:A.S.O.

開幕地イタリアから4ヶ国を経由してたどり着いた1週目を締めくくるのは、1級山岳ヴァルデズカレイ・スキー場(距離13.2km/平均5%)への山頂フィニッシュだ。とは言ってもコース距離195.5kmの大部分は平坦路で、最終山岳はタイム差が生まれるほどの難易度ではない。それゆえプロトンが許せば逃げ切りでのステージ優勝が生まれる可能性が高いレイアウトだ。

逃げ集団に入り、短い距離を爆発的なスピードで登るパンチャーが有利だろう。そのためスプリンターや総合上位の選手たちにとっては、休息日前の比較的イージーなステージとなるかもしれない。

そしてフィニッシュした選手たちは、チームバスで北東にあるパンプローナに移動。そこで1度目の休息日を送る。



9月1日(月)休息日 パンプローナ



text:Sotaro.Arakawa
image:A.S.O.
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