途中の落車をものともせず、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)が2級山岳の登坂スプリントで勝利。ブエルタ2日目にして、早くもマイヨロホに袖を通した。



8月24日(日)第2ステージ
アルバ〜リモーネ・ピエモンテ 159.5km(平坦)
獲得標高差1,910m


「チャンスがあれば獲る」と語るヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

第2ステージ アルバ〜リモーネ・ピエモンテ image:A.S.O.

イタリア・ピエモンテ州を駆け抜けるブエルタ・ア・エスパーニャ第2ステージ。大会2日目にして早速最初の登りバトルがやってきた。

コースはワインの名産地アルバを出発し、リモーネ・ピエモンテに至る全長159km。序盤は穏やかな平坦区間を駆け抜けるものの、ゴール直前に待ち受けるのは2級山岳の登坂フィニッシュ。しかも天候は雨。路面は滑りやすく、視界は悪く、シーズン終盤のグランツール序盤戦らしからぬ厳しいサバイバルが選手たちを待ち受けた。

全身マイヨロホで登場したヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:Unipublic
調子を上げるエガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) photo:Unipublic


スタート直後に逃げが形成。リアム・スロック(ベルギー、ロット)が牽引する photo:Unipublic

「総合を狙う上では間違いなく大切なステージになる。今日マイヨロホを獲得できたら最高だけど、今日勝てなくても後日チャンスを待つこともできる」と、スタート前に話したのはヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)。アルバを出発すると、すぐにアタック合戦の口火が切って落とされた。

あまり時間を要さずにニコ・デンツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とガル・グリヴァル(スロベニア、アルペシン・ドゥクーニンク)、リアム・スロック(ベルギー、ロット)、ヤコブ・オトルバ(チェコ、カハルラル・セグロスRGA)がスルスルと集団を置き去りにして先行。ワイルドカード枠出場チームとして、何としても逃げに乗りたいブルゴス・ブルペレット・BHはメイン集団から何度もカウンターアタックを仕掛けた末に、シヌヘ・フェルナンデス(スペイン)を逃げに合流させることに成功した。

フェルナンデスは1分45秒差を一人で詰め、遅れたデンツに代わって逃げグループに合流する。逃げとメイン集団はタイム差2分、平均46km/hというハイペースでステージ中盤戦までの平坦区間を駆け抜けていく。途中の中間スプリントではイーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック)がメイン集団内先頭通過(5番手/+10pts)を果たし、ポイントランキング首位のヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)に10pts差まで詰め寄った。

ヤスペル・フィリプセン(ベルギー)を守って隊列を組むアルペシン・ドゥクーニンク photo:CorVos

ピエモンテ州のワイン生産で知られる土地。コース中盤の小さな丘を越えていく。 photo:CorVos

トーマス・ピドコック(イギリス)のステージ優勝を目論むQ36.5が牽引し、フィニッシュまでの距離を縮める中で雨が降り始める。残り30kmを切ったタイミング、滑りやすいアスファルトでフロントタイヤのグリップを失ったヴィンゲゴーが落車し、ほとんどのヴィスマ勢を含む大落車に繋がった。

滑りやすい路面だったせいか、左足大腿部から着地したヴィンゲゴーやピドコックを含め、ほとんどの選手たちは幸いなことに大きな怪我なく無事にレースへ復帰。落車した選手たちの復帰を待って再加速したメイン集団が、登坂距離9.8km/平均勾配5.1%の2級山岳に向けてポジション争いを繰り広げながら猛進する。登り始めて暫くして、それまで逃げ続けていたスロックらはあえなく吸収された。

ヴィスマや、ジュリオ・チッコーネ(イタリア)のステージ優勝に燃えるリドル・トレックが緩斜面の序盤を飛ばし、ラスト2kmから始まる勾配区間に突入。大人数のままラスト1kmを越え、フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)の早駆けも引き戻される。マイヨロホ着用権利が掛かったステージ勝負は霧の中の登坂スプリントに委ねられた。

ラスト50m、先頭で粘るチッコーネにヴィンゲゴーが並びかける photo:CorVos

2月以来となる勝利をマークしたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

ラスト200m、背後から踏み込んだチッコーネに合わせて、ピドコックとヴィンゲゴーが横並びでスプリントを開始する。先頭で踏み抜いたチッコーネに対してピドコックは遅れ、背後に付けるのはヴィンゲゴーただ一人。落車の影響を感じさせないヴィンゲゴーは、「直感的に飛び出したけれど、少し早すぎたかもしれない。持ちこたえるのは難しかった」と悔やむチッコーネを最終盤で追い込み、フィニッシュライン上でハンドルを投げ込んで僅かに先着。落車の影響を感じさせない力強い走りでブエルタでのステージ3勝目を掴み取った。

「本当に嬉しいよ。それにマイヨロホも獲得できたのでさらに特別な気持ちだ。チームは素晴らしい走りを見せてくれましたし、こうやって得た勝利は本当に素晴らしい」と喜ぶヴィンゲゴー。2月のアルガルヴェ以来勝てていなかった悔しさを、総合2位に甘んじたツールから調整を経て臨んだブエルタで晴らすことになった。

マイヨロホを手に入れたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

「最終コーナーの前ではチッコーネを抜けないと思っていたよ。でも、幸いフィニッシュは予想よりも遠かった(ので間に合った)。グランツールで勝つチャンスを逃してはいけない。だから今日は全力を尽くしたんだ。落車は結構激しかったけれど、いくつか擦り傷を作っただけで済んだので良かったよ」と、自身初となるマイヨロホに袖を通したヴィンゲゴーは加えている。

第3ステージはサン・マウリッツィオ・カナヴェーゼからセレスを目指す139kmの短距離中級山岳コース。序盤からアップダウンが続き、最後は登坂フィニッシュではないものの、総合系選手や逃げ屋にとってチャンスが広がるレイアウトだ。ヴィンゲゴーが早くも主導権を握る展開の中、ライバル勢はどのタイミングで揺さぶりをかけていくのか。大会序盤からスリリングな攻防が続きそうだ。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2025第2ステージ
1位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 3:47:14
2位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)
3位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)
4位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)
5位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) +0:02
6位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロン・AG2Rラモンディアル)
7位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
8位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)
9位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)
10位 トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 7:56:16
2位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) +0:04
3位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) +0:06
4位 エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) +0:10
5位 トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) +0:12
6位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロン・AG2Rラモンディアル)
7位 サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)
9位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)
10位 マルク・ソレル(スペイン、モビスター)
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) 50pts
2位 イーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック) 40pts
3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 30pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 5pts
2位 アレッサンドロ・ヴェッレ(イタリア、アルケア・B&Bホテルズ) 3pts
3位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) 3pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) 7:56:28
2位 ウィリアムジュニア・ルセルフ(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
3位 ヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ)
チーム総合成績
1位 ヴィスマ・リースアバイク 23:49:22
2位 UAEチームエミレーツXRG
3位 XDSアスタナ
text:So.Isobe
photo:Unipublic, CorVos