本日行われるジャパンカップに初参戦のマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)。5月の勝利から一転、ツール出場前に突如肺の病に襲われ、一時は現役引退も過ぎったという。本人が「壮絶だった」と語る、2025年シーズンを振り返ってもらった。



ジャパンカップのため、15年ぶりに来日したマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) photo:Yuichiro Hosoda

─前回、日本に来たのはいつですか?

マシューズ:最後に来たのはU23の時に出場したツアー・オブ・ジャパンだ。そこでは良い成績(プロローグで優勝)を挙げた良い思い出がある。その時(2010年)以来、日本に来ることができて嬉しい。

─今年は5月1日のエシュボルン=フランクフルトを初優勝しましたが、その後、肺の血管(肺動脈)が血栓などで詰まる疾患、肺血栓塞栓症を患いました。

それで合計4か月間もレースから離れなければならなかった。5月のレースから1か月後、ツール・ド・フランスに向けた高地トレーニングを行っている最中だった。うまく呼吸ができず、まるでずっと水の中で呼吸しているような感覚だった。最初はアレルギー反応だと思い病院に駆け込んだが、すぐに肺の血栓が見つかり恐怖を感じた。あの時の気持ちは人生で2度と体験したくない。

その後は3か月間、抗凝固薬を服用し、幸い、いまは完全に回復している。

今年5月のエシュボルン・フランクフルトでスプリント勝利を挙げたマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) photo:CorVos

─その後のインタビューでは、その時「引退も考えた」と答えています。

原因がわかるまでの間は様々な思いが頭を駆け巡った。健康が第一で、スポーツはその次にくる。だからこの病を治すことに専念し、その後の状態を見て、今後の人生については考えようと思っていた。

─復帰レースとなった8月31日のブルターニュクラシック・ウェストフランスでは、いきなり8位入賞と好走。また連覇のかかったグランプリ・シクリスト・ド・ケベックでも9位など、すぐにトップコンディションの走りを見せました。

本当につらいトレーニングを乗り越えたからね。これまでの選手生活で、あそこまで自分を追い込んだことはない。それに、勝利を争える状態でレースに戻ってきたかった。決してチームの人数合わせになりたくなかった。レースを走るならば、勝利を目指すのが僕のスタイル。幸い復帰初戦から勝利争いに絡むことができ、継続的とはならなかったが、努力が実ったと大きな安堵感があった。

bling! マイケル・マシューズの応援フラッグ photo:Makoto AYANO

─直近のイタリアのワンデーレース(コッパ・ベルノッキとグラン・ピエモンテ)では共に5位入賞。イル・ロンバルディアでは序盤から逃げたのにもかかわらず、後半も粘って21位で終えました。現在はトップコンディションにありますか?

まだその途中という感じ。数値的には目指していたところに来ている。だけど決して現状に満足せず、常に高みを目指している。今のところは現状のコンディションに満足しているよ。

─チームとの契約延長、それも複数年でとの噂も囁かれていますが、来シーズンへの目標を教えてください。

今年目指しながらも、勝てなかったクラシックレースなどだ。

─チームからは今年限りでディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)が退団し、エーススプリンターが不在となります。昔のように集団スプリントを争う考えはありますか?

純粋な集団スプリントでエースを務めることはおそらくない。そこに耐えうるスピードはもうないし、いままでも決して自信がある分野ではなかった。厳しい局面からスプリントで勝つことはあっても、自分をスプリンターだと思ったことはない。

フリーランでファンと一緒に走るマイケル・マシューズ photo:Makoto AYANO

─最後に一つ。親友であるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)の活躍についてはどう思っていますか?

素晴らしいの一言だ。あれだけのレースを勝ちながら、いまだにハングリー精神を失っていない。彼の勝利への飽くなきモチベーションは、僕ら選手にとって良いロールモデルになっている。彼は何より、バイクで走ることや勝利へのプロセス、選手であることを心から楽しんでいる。それが選手として何よりも心に留めておくべきこと。特に近年は楽しむ気持ちがないと続けられないほど、(競技レベルが上がり)辛いことの連続だからね。

text:Sotaro.Arakawa
photo:Kei Tsuji, Yuichiro Hosoda, Makoto AYANO

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