様々なスマートデバイスを展開するマージーンが、カーボンクランク+スパイダー型パワーメーターのTEO P515をリリースした。パワーメーター込みで430gという軽量性を達成した新モデルをインプレッション。



マージーン TEO P515 スパイダー型パワーメーターカーボンクランクセット

マージーン TEO P515(チェーンリングはQED スプリットチェーンリングセット)

マージーンから発売されたTEO P515は、カーボンクランクを採用したスパイダー型パワーメーターセットだ。アルミクランク採用モデルのPES-P515から大幅な軽量化を果たし、シリアスなサイクリストに向けたプロダクトとして洗練されている。

TEO P515はカーボンクランクを採用したことにより、クランク単体(170mmサイズ、カタログ重量)で325gという軽量性を実現。スパイダー付きは430g(実測、チェーンリング抜き)とされており、625gのアルミモデルから200gの軽量化を達成している。50-34Tのチェーンリングを装備した状態では595g(実測)をマークした。

クランクセット+パワーメーターで430gを達成する

チェーンリング50-34Tを装備して595gという実測重量になった

フラッグシップコンポーネントを搭載し、UCI規定下限となる6.8kgを目指す競技車両にとって、200gという数字は決して小さくない。クランクでダイエットができれば、より信頼性の高いタイヤを選ぶことができたり、快適性の高いパーツを装着したりと、機材構成に変化をもたらすことが可能となる。

TEOの魅力は軽さだけではなく、高い剛性にもある。HI-MODカーボンを素材とし、独自のデュアルチャネル高圧成形技術を駆使して製造することで、優れたペダリング剛性を獲得しているとマージーンは説明する。剛性テストにおいてはペダル側に1500N(約153kg)の荷重を加えた評価を行ったところ、変形量はごくわずかに留まったとも。

29mm径のDUB規格スピンドルが採用されている

さらにTEOは29mm径のスピンドルを採用していることもポイントだ。これはSRAM DUB規格と互換性があり、一般的な24mmスチールスピンドルと比較して軽量かつ高剛性を実現している。スピンドル素材には軽量な航空機グレード7075アルミニウムを使用し、大径化によって剛性を確保しながらも軽量性を維持している。ボトムブラケットはDUB規格が求められるが、様々なブランドからリリースされているため、購入する際は合わせてチェックしてもらいたい。

スパイダー型パワーメーター"P515"の本体素材には7075アルミニウムが採用され、軽量性と剛性のバランスを整えつつ、単体重量99gを実現している。この軽さが先述したトータル重量の削減に貢献する。

スパイダー型パワーメーターのP515が装備されている

P515は高精度のひずみゲージと加速度センサーを搭載し、±1%のパワー計測精度を実現。内蔵された温度補償アルゴリズムにより、気温や環境の変化に左右されることなく、安定したパワーデータを提供する。各ひずみゲージには応力除去処理が施されており、過酷な環境下でも信頼性の高い計測が可能だ。

パワーレンジは0~2500W、ケイデンスレンジは20~240rpmに対応しており、スプリントからヒルクライムまで幅広い走行シーンで正確なデータを記録できる。計測データはパワー、ケイデンス、左右バランス、ペダリングスムースネスの4項目で、ペダリング効率の改善やトレーニングの最適化に必要なデータを提供してくれる。

ランタイムは満充電から連続使用で330時間。これは従来のPES-P515 Base(240時間)から90時間の延長であり、充電頻度を大幅に減らせることは嬉しいポイントだ。なお、充電は専用のクレードルで行う。

スペーサーやチェーンリングボルトが付属する

チェーンリングは110BCD SHIMANO 4アームロード用に対応しており、純正のQEDスプリットチェーンリングセット(50-34T、52-36T、53-39T)が用意されている。チェーンリングは11速・12速の両方に対応するが、SHIMANO GRX用チェーンリングは使用できない点に注意が必要だ。

通信規格はBluetoothとANT+の両方に対応しており、主要サイクルコンピューターブランドと接続可能。また、STRAVA、Zwift、TrainingPeaks、TrainerRoadといったトレーニングアプリとも互換性を持ち、1回のトレーニングで複数の端末に同時にデータを記録できる。

クランク長は160mm、165mm、170mm、172.5mm、175mmの5サイズが用意されており、ライダーの体格や好みに応じて選択可能。Qファクターは148mmで、クランクセットの価格は99,000円。純正のQEDスプリットチェーンリングセットは11,220円(共に税込)。



ーインプレッション

マージーン TEO P515(チェーンリングはQED スプリットチェーンリングセット)

TEO P515を実際に踏んでみて最初に感じたのは、パリッとした剛性の高さだ。剛性を確保するために分厚く作られていたひと昔前のカーボンクランクとは一線を画すような乗り味で、アルミクランクの感覚ともまた違う。ハイエンドカーボンフレームの薄くて硬い剛性感を連想させる踏み味だ。

ハイパワーをかけた時に踏み切れないのではないかと思わせるほどの剛性感を一踏み目で感じさせてくれたTEOだが、実際にスプリントしてみるとそんな心配はどこ吹く風。むしろ踏みやすく、最初に受けた印象が上書きされていく。力を逃さない剛性感を保ちつつ、脚への反発は最小限に抑えてくれる適度な剛性感が扱い易さを演出する。

「カーボンクランクらしい硬質なクランクに仕上がっている」高木三千成(シクロワイアード編集部)

チェーンリングを外した状態で左右合わせて430g。この軽さは実走で明確に体感できる。特に強く感じるのは漕ぎ出しの瞬間。スッとクランクが落ちていくような感覚がある。最初に感じた剛性感も振り返ってみればこの軽さに由来する感覚が影響しているのだろう。一定のケイデンスで回していても、常に「軽いな」という感覚は途切れない。平坦路では気づきにくいかもしれないが、トルクが掛かりやすい上りでは、よりその感覚は強くなる。

特にハイケイデンスでペダルを回す登りにおいて、そのアドバンテージはより大きく感じられる。足回りが軽くなることでペダリングも軽やかになる。例えばレースの最終局面、疲労が溜まりきっていても踏まなければならない時に、もう一踏ん張りできそうだ。

ヒルクライムでは軽量性のアドバンテージを感じられる

また、110BCD 4アームという規格により、チェーンリングの選択肢が広いことも大きなメリット。純正のQEDチェーンリング以外にも、例えばポガチャルも愛用するCarbon-Tiをはじめ、様々なブランドのチェーンリングを自由に組み合わせられるのは嬉しい。軽量性を重視するもよし、変速性能を重視するもよし。普段のトレーニングにはリーズナブルな製品を選び、レースでは飛び道具を装着する、といった運用も可能だ。

価格に注目が集まりがちなマージーンのプロダクトだが、それを抜きにしてもTEO P515は非常に高いポテンシャルを有している。現代のディスクロードはカスタムできるパーツが少なく、軽量化が難しい。一体型ハンドルやエアロフレームの制約で、DURA-ACEで組んでも7kg台で止まってしまうことも多い。そこから200gほどを削り取れるこのクランクは、本格的なロードレースやヒルクライム、軽量化を追求したいライダーにとって、有力な選択肢になるだろう。(インプレッション:高木三千成)

常に軽さを感じられるクランクセットに仕上がっている



マージーン TEO P515 スパイダー型パワーメーターカーボンクランクセット
計測方法:スパイダー型
重量:425g±10g(170mm・チェーンリングなし)
パワー計測精度:±1%
稼働時間:330時間(満充電時)
通信規格:ANT+, Bluetooth
保護等級:IPX7
計測データ:パワー、ケイデンス、左右バランス、ペダルスムーズネス
パワーレンジ:0~2500W
ケイデンスレンジ:20~240rpm
クランクサイズ:160/165/170/172.5/175mm
スピンドル径:29mm(SRAM DUB互換)
Qファクター:148mm
対応チェーンリング:110BCD SHIMANO 4アーム ロード用 ※SHIMANO GRX用チェーンリングは使用不可
価格:99,000円(税込)
保証期間:24か月(充電ケーブルのみ3カ月)

マージーン QED スプリットチェーンリングセット(純正チェーンリング)
サイズ:50-34/52-36/53-39
重量:138g(50-34)
対応変速:11S、12S
チェーンライン:45mm
規格:110BCD SHIMANO 4アーム(シマノ製11s/12sクランクには装着出来ません)
価格:11,220円(税込)

impression by Michinari Takagi
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