先頭集団が激しく入れ替わる白熱バトル。終盤の落車から集団復帰したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)が、かつてのチームメイトであるログリッチを引き離して独走。2度目の出場で第11回ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムの覇者となった。

これが現役ラストレースとなった小野寺玲(Astemo宇都宮ブリッツェン) photo: Yuichiro Hosoda

チーム力ではトップと言える戦力で臨んだウノエックス・モビリティ photo: Yuichiro Hosoda 
カーデン・グローブス(オーストラリア)がエースを務めるアルペシン・ドゥクーニンク photo: Yuichiro Hosoda

「スペシャルゲスト」として単騎での出場となった新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo: Yuichiro Hosoda
毎年7月に行われる世界最大の自転車レース、ツール・ド・フランスの熱気が日本で味わえる「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」。その第11回大会が11月9日(日)、大宮の南に位置する埼玉県の都市拠点、さいたま新都心駅周辺を舞台に行われた。
レース当日の天候は雨。しかしスタート時刻である14時55分に合わせるように雨脚が弱まり、時刻が近づくにつれて奇跡的に止み、フィニッシュまで再び降り出すことはなかった。
外国チームの選手22名、国内チームの23名、合わせて45名の選手たちによる集団の先頭には、ツールで過去2度(2023、24年)の総合優勝を果たし、今年総合2位だったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)やプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が並ぶ。さらに、今年ツール初出場ながら区間2勝とマイヨヴェール(ポイント賞)を獲得したジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)など、紛うことなき世界トップ選手たちが集結。そしてスタートが告げられると、アリーナ内の出発地点をゆっくりと発進した。

昨年のメインアリーナからコミュニティアリーナに戻った今年のさいたまクリテ photo: Yuichiro Hosoda

ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)のアタックに追従した花田聖誠と小野寺玲(Astemo宇都宮ブリッツェン) photo: Yuichiro Hosoda
昨年のメインアリーナから例年通りのコミュニティアリーナに戻ったレースは、3.5kmを合計17周する総距離59.5km。フィニッシュラインに引かれたアクチュアルスタートを切ると、ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が飛び出し、これが引退レースとなるAstemo宇都宮ブリッツェンの小野寺玲と花田聖誠の2名が追従した。
その後、すぐにフランス王者であるドリアン・ゴドン(デカトロンAG2Rラモンディアール)らも合流。9名と、さいたまクリテリウムとしては大所帯となる逃げ集団が形成される。20秒のリードを許したメイン集団は、10日前の宇都宮ジャパンカップクリテリウムを制したリドル・トレックがコントロールを担った。
5周回を終え、レース先頭はゴドンと中村圭佑(ヴィクトワール広島)、安原大貴(マトリックスパワータグ)の3名に絞られる。しかし、すぐにプロトンがフィニッシュ手前のアンダーパスで捉え、スプリントポイントをチームメイトの背後から飛び出したミランが悠々と獲得。勝利に向けて好調さをアピールし、再びシャッフルされた集団から、トラック競技と競輪という3足のわらじを履く橋本英也(キナンレーシングチーム)が飛び出した。

レース序盤に形成された安原大貴(マトリックスパワータグ)ら9名の逃げグループ photo: Yuichiro Hosoda

集団内で仕掛けるタイミングを伺う新城幸也 photo: Yuichiro Hosoda 
積極的な走りでファンを魅了したフランス王者のゴドン photo: Yuichiro Hosoda

アタックする橋本英也(キナンレーシングチーム) photo: Yuichiro Hosoda
橋本のアタックに付き合ったのは、ヴィンゲゴーやチーム・フランスとして参戦したヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ)ら4名。そこにプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とヨナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が追いつき、新たに6名の逃げ集団が出来上がる。
残り9周(31.5km)に入り、さらにプロトンからはミランと序盤の後輪パンクから復帰したカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が合流に成功。レース距離の半分を過ぎた地点で、ツールを盛り上げた選手たちが含まれた豪華な8名の逃げへと発展したものの、選手を送り込むことのできなかったウノエックス・モビリティがペースを作り、残り25kmでプロトンと一つになった。
2度目のスプリントポイントもミランが制し、一つになった集団から再び橋本がアタック。単騎での参戦となった新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)らと共に4名による新たな逃げ集団を作る。残り5周に入ると、アリーナに入る直前のコーナー出口でヴィンゲゴーが後輪を滑らせ、落車した。

落車したヴィンゲゴーが復帰した集団ではアタックが止む photo: Yuichiro Hosoda

アタックしたヴィンゲゴーに唯一追従したログリッチ photo: Yuichiro Hosoda
幸い大きな怪我のなかったヴィンゲゴーはバイクに跨り走り出すと、チームメイトのアシストもあり、すぐに集団に復帰。その時点でプロトンも一つとなり、レースは一時落ち着く。ミランが取ると思われた3度目のスプリントポイントはゴドンが取り、直後にベルギー王者ジャージを着たティム・ウェレンス(UAEチームエミレーツXRG)が飛び出す。そこに直前の落車の心配を払拭するようにヴィンゲゴーとログリッチ、アブラハムセンがジョインし、4名が新たな先頭集団を形成した。
そのまま残り2周回に入り、コミュニティアリーナを出て、タイミングを見計らっていたヴィンゲゴーがアタック。唯一ログリッチが反応し、元チームメイトの2名が先頭に立つ。新旧のブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝者コンビは最終周回に入り、残り2.1km、さいたまスーパーアリーナ前の直線でヴィンゲゴーが2度目のアタックを仕掛けた。
ツールの個人タイムトライアルでも区間優勝経験のあるヴィンゲゴーは、得意の独走力をいかんなく発揮。追いかける東京五輪個人TT金メダリストに迫ることすら許さず、アンダーパスを抜け、両手を広げてフィニッシュに到達。大観衆のなか大会初優勝に輝いた。

後続に8秒差をつけて勝利したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo: Yuichiro Hosoda

2位スプリントで先着したジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo: Yuichiro Hosoda

現役最後のレースを走り終え、引退を奥様やファンに惜しまれる小野寺玲(Astemo宇都宮ブリッツェン) photo: Yuichiro Hosoda 
宮澤崇史さんのインタビューを受ける橋本英也(キナンレーシングチーム) photo: Yuichiro Hosoda
ログリッチを捉えた集団は、エドワルト・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック)のリードアウトからミランが発射。グローブスとの集団スプリントで先行し、初出場で2位表彰台に上がった。日本人最高位は9位でフィニッシュした新城で、草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)が10位に入っている。
2022年に続く2度目の出場で初優勝を飾ったヴィンゲゴー。「勝利はいつでも気持ちがよく、良い形でシーズンを締めくくり、バケーションに入ることができる。とてもハードで速く、多くの観客に囲まれた最高の雰囲気でのレースだった」と喜びを語った。
一方、シンガポールクリテリウムに続く連勝にはならなかったものの、2位でそのスピードを日本人ファンに披露したミラン。「雨で濡れた路面のなか、タフでハイスピードのレースとなった。チームメイトが懸命にヨナス(ヴィンゲゴー)たちを追走してくれ、フィニッシュ手前数百mからスプリントしたのだが、残念ながら届かなかった」とコメントした。

埼玉県産の野菜ブーケをもらったヴィンゲゴーらトップ3の選手たち photo: Yuichiro Hosoda

敢闘賞の表彰でテレマークを決めて歓声を浴びたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo: Yuichiro Hosoda 
山岳賞を獲得したヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ) photo: Yuichiro Hosoda

キナンレーシングチームが最優秀日本チーム賞を獲得 photo: Yuichiro Hosoda

記者の質問に答えるヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo: Yuichiro Hosoda 
ジョナタン・ミラン「身長は193.5cmだよ」 photo: Yuichiro Hosoda

記者会見に応じる新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo: Yuichiro Hosoda
当日の夜中から雨は降り続けたものの、レース中は一切降らず。幸運と歓声に包まれたさいたま新都心で、2025年シーズンが余韻と共に締めくくられた。




毎年7月に行われる世界最大の自転車レース、ツール・ド・フランスの熱気が日本で味わえる「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」。その第11回大会が11月9日(日)、大宮の南に位置する埼玉県の都市拠点、さいたま新都心駅周辺を舞台に行われた。
レース当日の天候は雨。しかしスタート時刻である14時55分に合わせるように雨脚が弱まり、時刻が近づくにつれて奇跡的に止み、フィニッシュまで再び降り出すことはなかった。
外国チームの選手22名、国内チームの23名、合わせて45名の選手たちによる集団の先頭には、ツールで過去2度(2023、24年)の総合優勝を果たし、今年総合2位だったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)やプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が並ぶ。さらに、今年ツール初出場ながら区間2勝とマイヨヴェール(ポイント賞)を獲得したジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)など、紛うことなき世界トップ選手たちが集結。そしてスタートが告げられると、アリーナ内の出発地点をゆっくりと発進した。


昨年のメインアリーナから例年通りのコミュニティアリーナに戻ったレースは、3.5kmを合計17周する総距離59.5km。フィニッシュラインに引かれたアクチュアルスタートを切ると、ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が飛び出し、これが引退レースとなるAstemo宇都宮ブリッツェンの小野寺玲と花田聖誠の2名が追従した。
その後、すぐにフランス王者であるドリアン・ゴドン(デカトロンAG2Rラモンディアール)らも合流。9名と、さいたまクリテリウムとしては大所帯となる逃げ集団が形成される。20秒のリードを許したメイン集団は、10日前の宇都宮ジャパンカップクリテリウムを制したリドル・トレックがコントロールを担った。
5周回を終え、レース先頭はゴドンと中村圭佑(ヴィクトワール広島)、安原大貴(マトリックスパワータグ)の3名に絞られる。しかし、すぐにプロトンがフィニッシュ手前のアンダーパスで捉え、スプリントポイントをチームメイトの背後から飛び出したミランが悠々と獲得。勝利に向けて好調さをアピールし、再びシャッフルされた集団から、トラック競技と競輪という3足のわらじを履く橋本英也(キナンレーシングチーム)が飛び出した。




橋本のアタックに付き合ったのは、ヴィンゲゴーやチーム・フランスとして参戦したヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ)ら4名。そこにプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とヨナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が追いつき、新たに6名の逃げ集団が出来上がる。
残り9周(31.5km)に入り、さらにプロトンからはミランと序盤の後輪パンクから復帰したカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が合流に成功。レース距離の半分を過ぎた地点で、ツールを盛り上げた選手たちが含まれた豪華な8名の逃げへと発展したものの、選手を送り込むことのできなかったウノエックス・モビリティがペースを作り、残り25kmでプロトンと一つになった。
2度目のスプリントポイントもミランが制し、一つになった集団から再び橋本がアタック。単騎での参戦となった新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)らと共に4名による新たな逃げ集団を作る。残り5周に入ると、アリーナに入る直前のコーナー出口でヴィンゲゴーが後輪を滑らせ、落車した。


幸い大きな怪我のなかったヴィンゲゴーはバイクに跨り走り出すと、チームメイトのアシストもあり、すぐに集団に復帰。その時点でプロトンも一つとなり、レースは一時落ち着く。ミランが取ると思われた3度目のスプリントポイントはゴドンが取り、直後にベルギー王者ジャージを着たティム・ウェレンス(UAEチームエミレーツXRG)が飛び出す。そこに直前の落車の心配を払拭するようにヴィンゲゴーとログリッチ、アブラハムセンがジョインし、4名が新たな先頭集団を形成した。
そのまま残り2周回に入り、コミュニティアリーナを出て、タイミングを見計らっていたヴィンゲゴーがアタック。唯一ログリッチが反応し、元チームメイトの2名が先頭に立つ。新旧のブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝者コンビは最終周回に入り、残り2.1km、さいたまスーパーアリーナ前の直線でヴィンゲゴーが2度目のアタックを仕掛けた。
ツールの個人タイムトライアルでも区間優勝経験のあるヴィンゲゴーは、得意の独走力をいかんなく発揮。追いかける東京五輪個人TT金メダリストに迫ることすら許さず、アンダーパスを抜け、両手を広げてフィニッシュに到達。大観衆のなか大会初優勝に輝いた。




ログリッチを捉えた集団は、エドワルト・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック)のリードアウトからミランが発射。グローブスとの集団スプリントで先行し、初出場で2位表彰台に上がった。日本人最高位は9位でフィニッシュした新城で、草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)が10位に入っている。
2022年に続く2度目の出場で初優勝を飾ったヴィンゲゴー。「勝利はいつでも気持ちがよく、良い形でシーズンを締めくくり、バケーションに入ることができる。とてもハードで速く、多くの観客に囲まれた最高の雰囲気でのレースだった」と喜びを語った。
一方、シンガポールクリテリウムに続く連勝にはならなかったものの、2位でそのスピードを日本人ファンに披露したミラン。「雨で濡れた路面のなか、タフでハイスピードのレースとなった。チームメイトが懸命にヨナス(ヴィンゲゴー)たちを追走してくれ、フィニッシュ手前数百mからスプリントしたのだが、残念ながら届かなかった」とコメントした。







当日の夜中から雨は降り続けたものの、レース中は一切降らず。幸運と歓声に包まれたさいたま新都心で、2025年シーズンが余韻と共に締めくくられた。
ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム2025結果
| 1位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 1:26:49 |
| 2位 | ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | +0:08 |
| 3位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
| 4位 | ダヴィデ・ステッラ(イタリア、UAEチーム・エミレーツXRG) | |
| 5位 | ロメット・パユール(エストニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
| 6位 | ドリアン・ゴドン(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール) | |
| 7位 | アレクサンダー・ハイェク(オーストリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
| 8位 | ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | |
| 9位 | 新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) | |
| 10位 | 草場啓吾(愛三工業レーシングチーム) |
その他の特別賞
| スプリント賞 | ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) |
| 山岳賞 | ヴァランタン・パレパントル(フランス、スーダル・クイックステップ) |
| 敢闘賞 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) |
| ヤングライダー賞 | ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) |
| 最優秀日本人チーム賞 | キナンレーシングチーム |
| チーム総合成績 | レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ |
| チームタイムトライアル | リドル・トレック |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Yuichiro Hosoda
photo:Yuichiro Hosoda
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