古賀志林道での3周連続のアタックで、2025年の宇都宮ジャパンカップを制したレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)。その背景にはレース2日前、「若い頃は速筋を鍛えるべき」だと語った、1〜3分の高強度トレーニングがあった。



宇都宮ジャパンカップロードレースを制したレニー・マルティネス(フランス) photo:Makoto AYANO

10月19日に行われた宇都宮ジャパンカップロードレース。その2日前、初の試走を終えたばかりのレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)に話を聞いた。普段の練習内容を聞くと、初出場にもかかわらず優勝できた理由に納得できる。

「1〜3分の登りがメインで、最大でも10分の登りしかしない」

スタート直後からハイペースで進んだレースは、残り3周回の古賀志林道(登坂距離1.14km/平均勾配8.4%)で、マルティネスのアタックから人数が絞られる。この時マルティネスのタイムは2分40秒。まさにトレーニングで行う絶好の登坂時間だった。

しかし試走直後のマルティネスは、「せめて(古賀志の)登坂時間が5分あればよかった。そうすれば登りでライバルたちを振り落とすことのできるのに」と語っていた。なぜなら「いまは4分間の登りが、他の選手よりも優れている登坂距離だから」と。

最終周回の登坂区間で渾身のアタックを披露するレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:Makoto AYANO

天を仰ぎながらフィニッシュするレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) photo: Yuichiro Hosoda

ラスト2周回に入り、再び突入した古賀志林道でレース先頭に残されたのは7名。2度目のアタックを仕掛けたマルティネスは2分47秒で駆け上がり、さらに4名に絞られた集団から3度目の加速。そこで自己最速タイムとなる2分35秒を叩き出す。

そして最終的に後続との差を32秒まで拡げ、独走のままフィニッシュに飛び込んだ。

「長い登り」でも手応えを掴んだ2025年

グルパマFDJの下部チームから2023年にトップチームに昇格し、今年バーレーン・ヴィクトリアスに加入したマルティネス。チームが求めているの、本人も自覚する「ツール・ド・フランスで総合優勝を争える選手」。

その総合エースとしての片鱗を、マルティネスは今年のツール・ド・ロマンディで披露した。1級山岳ティオン2000(距離20.7km/平均7.6%)の頂上フィニッシュであった第4ステージで、マルティネスは精鋭集団に残る。そしてジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)のアタックに食らいつくと、一騎打ちの戦いを制し、総合首位に躍り出たのだ。

2025年のドーフィネでキャリアハイの勝利を飾ったレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos

またクリテリウム・デュ・ドーフィネの最終第8ステージでは、逃げ集団に入ったマルティネスが1級山岳モン・スニ峠(距離9.6km/平均6.9%)でエンリク・マス(スペイン、モビスター)を引き離し、区間優勝。長い距離の登りであっても、我慢強く勝負所まで耐え、得意のアタックを仕掛ける勝ちパターンを確立した。

しかし本人は、「いまはまだパリ〜ニースのような短い登りが得意」なのだという。「だけど、そこ(総合争い)に向けて一歩一歩、焦らず着実に向かっていくことになるだろう。毎年。より良い結果を追い求めていく。実際に強くなっていっている自覚もあるからね」

トレーニングの中心は「速筋の強化」

ツール・ド・フランスでは4日間にわたりマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着用した photo:CorVos

22歳のマルティネスが長距離の登坂力ではなく、短い登坂時間の最大出力を伸ばすトレーニングに注力するのは、ベルギー人である専属コーチとの指導の影響があるという。

「いまは速筋を中心に鍛えている。若い時はより速筋を鍛えるべきだとコーチに言われているからね。プロキャリアに従い、速筋は徐々に減っていくもの。遅筋はそれ以降でも鍛えられるから、若い間に鍛えるべきなんだ」

最後に今後の課題を聞くと、「すべてだね。山岳はもちろんタイムトライアルの能力も伸ばしていかなければならない。僕は特別登りが強い選手でも、TTスペシャリストでもないから」と語ったマルティネス。期待されるのは、2003年のセルジョ・バルベーロ(イタリア)以来となるジャパンカップの連覇、そしてもちろんツール・ド・フランスでの成功だ。

text:Sotaro.Arakawa
photo:Makoto AYANO
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