カナダ・モントリオールを舞台にしたロード世界選手権の男子エリートロードレースで、ブランドン・マクナルティ(アメリカ)が32.5kmを独走。昨年のGPモンレアル覇者が、アメリカに1993年以来となるアルカンシエルをもたらした。



日本代表として出場した橋川丈 photo:CorVos

ロード世界選手権2026男子エリートロードレース image:UCI

1年間の着用が許される世界一の証、アルカンシエルが争われるロード世界選手権。カナダ第2の都市モントリオールを舞台にした戦いは、男子エリートロードレースで締めくくられた。舞台は、毎年9月上旬に行なわれるワールドツアー、グランプリ・シクリスト・ド・モンレアルの13.4kmコースを後半に12周する273.7kmのコースだ。

カミリアン・ウード(距離1.6km/平均7.7%)やポリテクニーク(距離0.8km/平均4%)、パニュエロ(距離0.5km/平均7.5%)が含まれ、獲得標高差は3,803mのためクライマー向きと目されたコース。大会連覇中のタデイ・ポガチャル(スロベニア)がブエルタ・ア・エスパーニャでの骨折により不出場となるなか、日本からは橋川丈(キナンレーシングチーム)が単騎で出場。また、レムコ・エヴェネプール(ベルギー)は自身2度目のロード制覇と、達成すれば史上初となる同一大会でのタイムトライアルとの2冠を目指した。

ビニヤム・ギルマイ(エリトリア)も入った16名による逃げ集団 photo:CorVos

約110kmの平坦路を進み、周回コースを目指す選手たち photo:UCI

アクチュアルスタートとともに逃げを巡る争いが繰り広げられ、すぐにビニヤム・ギルマイ(エリトリア)ら16名による逃げグループが形成された。後方ではベルギーやマチュー・ファンデルプールを擁するオランダが先導し、エースであるイサーク・デルトロ以外は、コンチネンタルチームやクラブチームに所属するメキシコも先頭交代に選手を送る。逃げ集団は約6分のリードを保ち、残り約161kmから始まる周回コースに入った。

プロトンがモントリオール大学とモンロイヤル公園を取り囲むコースに入ると、プロトンではフランスのブリュノ・アルミライユがペースアップ。その狙いはもちろん、前哨戦のGPモンレアルで2位に入ったポール・セクサスで勝負すること。アルミライユの牽引で逃げとのタイム差が縮まる一方、逃げ集団も分裂。協調を失った逃げのリードは、残り120km地点で約1分まで縮まった。

フランスはここからヴァランタン・パレパントルがアタック。引き戻されると今度はジョルダン・ジェガットが仕掛けた。レースが一気に動くなか、ブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝したエンリク・マス(スペイン)や、優勝候補の1人に挙がったフェリックス・ガル(オーストリア)らが遅れていく。そして残り107kmで逃げが捉まり、ガル・グリヴァル(スロベニア)がプロトンを飛び出した。ここからレースはさらに激しさを増していく。

プロトンを走る橋川丈 photo:CorVos

逃げを吸収し、レース振り出しに戻したプロトン photo:UCI

すぐにグリヴァルは引き戻され、次にアントン・チャーム(デンマーク)が単独先頭に立つ。しかしチャームも残り92kmで捉えられ、幾度となくアタックと吸収が繰り返される。その後、ファンデルプールとワウト・ファンアールト(ベルギー)が揃い、さらにプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)やオスカー・オンリー(イギリス)も加わった豪華な6名の先頭集団が形成された。後続のプロトンでは、先頭集団に選手を送り込めなかったフランスやメキシコが中心となって追走。デルトロも自ら脚を使わなければならない状況となった。

一方、12秒先を行く先頭のファンデルプール・グループでは、2023年以来のアルカンシエル奪還を目指すそのファンデルプールがアタック。ログリッチやファンアールトが遅れるなか、オンリーとクイン・シモンズ(アメリカ)の2名が反応。先頭は3名となり、残り5周、残り約67km地点では、ログリッチ、ファンアールト、チャームの3名による追走集団が16秒差で続いた。さらに58秒差で、デルトロやセクサス、エヴェネプールら15名が追い、その後方にプロトンが控える展開となった。

先行したマチュー・ファンデルプール(オランダ)ら3名 photo:UCI

本調子ではないなかでも、粘りの走りを見せるレムコ・エヴェネプール(ベルギー) photo:CorVos

その後、ファンアールトとチャームがデルトロのいるグループに吸収され、ログリッチは先頭の3名に合流した。追走集団では一度遅れたファンアールトが復帰する一方、明らかに本調子ではないエヴェネプールが後退。そのため追走集団はマイケル・マシューズ(オーストラリア)ら10名に絞られた。

先頭集団が34秒のリードを保つなか、ファンデルプールが再びアタック。シモンズがすかさず反応し、遅れていたログリッチも合流したため、この仕掛けでオンリーが脱落した。

先頭の3名をベン・ヒーリー(アイルランド)とオンリーの2名が追い、その背後にはデルトロ、セクサス、ファンアールトがいる第2追走集団が続いた。そこにエヴェネプールが合流。残り44kmでエヴェネプールがアタックしたが、セクサスが封じる。そのカウンターでデルトロがアタックし、セクサスは強豪2名の動きへの対応を強いられ、脚を削られた。

残り38km地点でヒーリーがファンデルプールら先頭集団に合流し、先頭は4名となった。後続ではデルトロが自ら脚を使って追いかける。ペースが明らかに落ちた先頭集団には、残り34.4km地点で後続集団も合流した。12名のうち9名は各国から1人ずつだったが、アメリカはシモンズ、マッテオ・ジョーゲンソン、ブランドン・マクナルティの3名を残す有利な展開に持ち込み、すかさずジョーゲンソンが仕掛けた。

残り32.5kmで集団を飛び出し、単独先頭に立ったブランドン・マクナルティ(アメリカ) photo:UCI

先頭集団の動きが一度落ち着くと、今度は残り32.5km地点でマクナルティが飛び出した。2025年のGPモンレアル覇者は一気にタイム差を広げる。激しい展開で脚を削られた追走集団は、なかなかペースを上げられなかった。残り2周、残り約26.8km地点でタイム差は1分7秒まで広がり、勝負が決まったかに見えた。

この状況に危機感を覚えたのは、ここまで上手く立ち回り脚を溜めていたトーマス・ピドコック(イギリス)だった。セクサスもこれに続き、ジョーゲンソンがマークする一方、デルトロが集団から遅れかける。追走集団は息を吹き返したものの、最終周回に入った残り約13.4km地点でも、マクナルティとの差は52秒。直後のカミリアン・ウードでマクナルティの脚が明らかに止まり、後続からはピドコックとジュリオ・チッコーネ(イタリア)が積極的に追い始めた。

ラスト2周から積極的にマクナルティを追いかけたトーマス・ピドコック(イギリス) photo:CorVos

残り9km地点で差は14秒。しかし牽制とアタックが繰り返されたため、追走のペースはなかなか上がらない。そして後方に遅れていた選手たちも続々と再合流していくなか、残り7km地点ではファンデルプールがアタック。ジョーゲンソンや、追いついたマッズ・ピーダスン(デンマーク)が反応し、その後もアタックが繰り返されたが、ジョーゲンソンがいずれも封じた。

そして最終コーナーを抜け、単独で最終ストレートに入ったマクナルティがフィニッシュラインを通過。男子エリートのロードレースでは、アメリカに1993年以来となる、33年ぶりのアルカンシエルをもたらした。

最終周回はリードを縮められながらも、粘りの走りで独走勝利を決めたブランドン・マクナルティ(アメリカ) photo:CorVos

アメリカに33年ぶりのアルカンシエルをもたらしたブランドン・マクナルティ photo:CorVos

「正直、自分でも(何が起きたのか)分からない。言葉が出てこない。残り100mまで疲れ切っていて、勝てるなんて思っていなかった」と、困惑した表情を見せたマクナルティ。「最後の登りはゾーン2ぐらいの強度で走っていた。もう限界だったが、とにかく踏み続けた。勝つには奇跡が必要だと思っていたので、どうやら奇跡が起きたみたいだ」と語った。

銀メダルを争うスプリントでは、マイケル・マシューズがファンデルプールを退けた、2位にマシューズ、3位にファンデルプールが入った。また、橋川は途中棄権している。

優勝者を含む選手たちのコメントは別記事にて伝える。

2位にはマイケル・マシューズ(オーストラリア)、3位にはマチュー・ファンデルプール(オランダ)が入った
photo:CorVos

ロード世界選手権2026 女子エリートロードレース結果
1位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ) 6:17:04
2位 マイケル・マシューズ(オーストラリア) +0:13
3位 マチュー・ファンデルプール(オランダ)
4位 クイン・シモンズ(アメリカ)
5位 イサーク・デルトロ(メキシコ) +0:14
6位 トーマス・ピドコック(イギリス)
7位 マッズ・ピーダスン(デンマーク)
8位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ)
9位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア)
10位 ベン・ヒーリー(アイルランド)
11位 マウロ・シュミット(スイス) +0:22
12位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー) +0:25
DNF 橋川丈
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos