シクロクロスシーズン前半の大一番、ヨーロッパ選手権がベルギーの砂コースで開催。テクニカルコースでインゲ・ファンデルヘイデン(オランダ)とトーン・アールツ(ベルギー)が新チャンピオンに輝いた。

北海に面したミッデルケルケの砂コース photo:UEC
シクロクロスシーズン前半戦の重要な一戦であるヨーロッパ選手権がベルギー北部西フランダース州のミッデルケルケで開催。北海沿いの砂コースであり、平坦な波打ち際だけではなく、高低差のある砂の丘が含まれていることが最大の特徴だ。新チャンピオン誕生を一目見ようと駆けつけた無数のベルギー/オランダ人ファンがコースサイドをびっちりと埋め尽くした。
女子エリート:砂を得意とするファンデルヘイデンが圧勝

女子エリートレースがスタート photo:UEC
11月8日(土)に開催された女子エリートでは、予想通り圧倒的な戦力層を誇るオランダ勢がレースを掌握。コンディション不良で参戦を見送った世界女王フェム・ファンエンペル(オランダ)に代わり、「第1コーナー直後に急勾配の登りがあるので、普段以上にスタートダッシュを決めることが大切だった」と言うインゲ・ファンデルヘイデン(オランダ)が真っ先に飛び出した。
かつてU23の世界女王に輝いているファンデルヘイデンがすぐさま10秒リードを得て独走し、ルシンダ・ブラントとアニック・ファンアルフェン(オランダ)が2番手グループ。今季好調のサラ・カサソラ(イタリア)も唯一の非オランダ勢としてブラントと合流。しかし砂コースを得意にするファンデルヘイデンは快調なペースを刻み、2周回終了時点で既に26秒リードを構築。結局のところ、この差はフィニッシュまで広がり続けることとなった。

1周目から独走するインゲ・ファンデルヘイデン(オランダ) photo:UEC 
気を吐いたサラ・カサソラ(イタリア)だが、砂区間でクラッシュ。4位に終わった photo:UEC

独走勝利を果たしたインゲ・ファンデルヘイデン(オランダ) photo:UEC

シクロクロス欧州選手権2025-2026女子エリート表彰台 photo:UEC
アタックと吸収で相対的にペースを落としていく2番手グループの中では、スピードに乗った状態から砂に入るタイミングでカサソラが激しく前転してしまう。こうしてオランダ勢の1-2-3体制が決まり、最終周回までノーミスで走り切ったファンデルヘイデンが独走勝利。常に上位には食い込むものの、ビッグレースでの勝ちには縁がなかった26歳が、得意のテクニカルレースでエリート昇格以降初となる選手権タイトルを手にした。
「最後までリードを維持できるとは思わなかった。ここ数レースは少し調子を落としていたけど、この砂レースは私向きと分かっていた。表彰台が目標だったので新チャンピオンになれるとは思っていなかった。本当に嬉しい勝利になった」とファンデルヘイデンは率直な気持ちを打ち明ける。2位はブラント、3位ファンアルフェン。この日もオランダ勢が表彰台を独占する形となった。
男子エリート:手に汗握る激しいバトル、アールツが涙の復活勝利

序盤から先頭グループで駒を進めたティボー・ネイス(ベルギー) photo:UEC
男子エリートレースは序盤からシクロクロス大国であるベルギーとオランダが激しく鍔迫り合いを続ける展開に。まだシーズンインしていないマチュー・ファンデルプール(オランダ)不在のレースでは時間を経るごとにベルギー勢優位の展開となっていったが、ピム・ロンハール(オランダ)が唯一先頭グループで勝負を繰り広げることとなった。
優勝候補筆頭のティボー・ネイスやマイケル・ファントーレンハウト、ヨラン・ウィズーレといったベルギー勢とロンハールがハイペースを刻み、ワンミスが大きく響く砂コースを飛ばしに飛ばす。レース終盤に入ると一時は20秒ほど遅れていた追走グループが先頭4名に迫り、トーン・アールツ(ベルギー)やキャメロン・メイソン(イギリス)たちがジャンプアップに成功する。8名まで膨れ上がった先頭グループが、激しく競り合いながら勝負の砂区間へと入った。

砂のアップダウン区間を突き進む先頭グループ photo:UEC

砂区間で競り合うマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー)とメース・ヘンドリクス(オランダ) photo:UEC 
最終スプリントで先行するトーン・アールツ(ベルギー) photo:UEC

ネイスを抑えて2度目の欧州選手権制覇を遂げたトーン・アールツ(ベルギー) photo:UEC
ベルギー勢に一矢報いたいロンハールが先行したものの、焦りでミスを呼んでアタック失敗。ネイスとアールツが長い砂登坂をスピードを維持したままクリアし、僅かに先行して最終ストレートへ。なだれ混んだマッチスプリントで先頭を維持し続けたアールツが両手を振り上げた。
勝利したアールツは、9年前の2016年に欧州王者になった経験を持つ32歳。トップ選手としてキャリアを築いてきたものの、2022年には禁止薬物のレトロゾール陽性によって2年間の出場停止処分を課されていた。しかし処分中も身の潔白をアピールし、トレーニングを続けて2024年に競技復帰。苦しい時期を経ての復活勝利となった。

シクロクロス欧州選手権2025-2026男子エリート表彰台 photo:UEC

苦しい時期を乗り越えて勝利したトーン・アールツ(ベルギー) photo:UEC
「今日は特別な一日。最初はいきなり序盤の渋滞で遅れてしまい、レースが数秒で終わったような気さえしていたよ。でも砂地で速く走れていたので何とか先頭集団に復帰。こんなに上手くいったレースは久しぶり。ここ数年は本当に苦しい時間を過ごしていたけれど、そこから今日勝てただなんて信じられないよ。僕のキャリアが始まった欧州選手権で、2度目のキャリアをリスタートできると思う」と涙をこぼしながらアールツは語る。2位は9歳年下のネイスで、2年連続の欧州チャンピオンの夢は敗れる。3位はウィズーレ。表彰台をベルギーが独占し、改めてその国力を見せつける結果になった。

シクロクロスシーズン前半戦の重要な一戦であるヨーロッパ選手権がベルギー北部西フランダース州のミッデルケルケで開催。北海沿いの砂コースであり、平坦な波打ち際だけではなく、高低差のある砂の丘が含まれていることが最大の特徴だ。新チャンピオン誕生を一目見ようと駆けつけた無数のベルギー/オランダ人ファンがコースサイドをびっちりと埋め尽くした。
女子エリート:砂を得意とするファンデルヘイデンが圧勝

11月8日(土)に開催された女子エリートでは、予想通り圧倒的な戦力層を誇るオランダ勢がレースを掌握。コンディション不良で参戦を見送った世界女王フェム・ファンエンペル(オランダ)に代わり、「第1コーナー直後に急勾配の登りがあるので、普段以上にスタートダッシュを決めることが大切だった」と言うインゲ・ファンデルヘイデン(オランダ)が真っ先に飛び出した。
かつてU23の世界女王に輝いているファンデルヘイデンがすぐさま10秒リードを得て独走し、ルシンダ・ブラントとアニック・ファンアルフェン(オランダ)が2番手グループ。今季好調のサラ・カサソラ(イタリア)も唯一の非オランダ勢としてブラントと合流。しかし砂コースを得意にするファンデルヘイデンは快調なペースを刻み、2周回終了時点で既に26秒リードを構築。結局のところ、この差はフィニッシュまで広がり続けることとなった。




アタックと吸収で相対的にペースを落としていく2番手グループの中では、スピードに乗った状態から砂に入るタイミングでカサソラが激しく前転してしまう。こうしてオランダ勢の1-2-3体制が決まり、最終周回までノーミスで走り切ったファンデルヘイデンが独走勝利。常に上位には食い込むものの、ビッグレースでの勝ちには縁がなかった26歳が、得意のテクニカルレースでエリート昇格以降初となる選手権タイトルを手にした。
「最後までリードを維持できるとは思わなかった。ここ数レースは少し調子を落としていたけど、この砂レースは私向きと分かっていた。表彰台が目標だったので新チャンピオンになれるとは思っていなかった。本当に嬉しい勝利になった」とファンデルヘイデンは率直な気持ちを打ち明ける。2位はブラント、3位ファンアルフェン。この日もオランダ勢が表彰台を独占する形となった。
男子エリート:手に汗握る激しいバトル、アールツが涙の復活勝利

男子エリートレースは序盤からシクロクロス大国であるベルギーとオランダが激しく鍔迫り合いを続ける展開に。まだシーズンインしていないマチュー・ファンデルプール(オランダ)不在のレースでは時間を経るごとにベルギー勢優位の展開となっていったが、ピム・ロンハール(オランダ)が唯一先頭グループで勝負を繰り広げることとなった。
優勝候補筆頭のティボー・ネイスやマイケル・ファントーレンハウト、ヨラン・ウィズーレといったベルギー勢とロンハールがハイペースを刻み、ワンミスが大きく響く砂コースを飛ばしに飛ばす。レース終盤に入ると一時は20秒ほど遅れていた追走グループが先頭4名に迫り、トーン・アールツ(ベルギー)やキャメロン・メイソン(イギリス)たちがジャンプアップに成功する。8名まで膨れ上がった先頭グループが、激しく競り合いながら勝負の砂区間へと入った。




ベルギー勢に一矢報いたいロンハールが先行したものの、焦りでミスを呼んでアタック失敗。ネイスとアールツが長い砂登坂をスピードを維持したままクリアし、僅かに先行して最終ストレートへ。なだれ混んだマッチスプリントで先頭を維持し続けたアールツが両手を振り上げた。
勝利したアールツは、9年前の2016年に欧州王者になった経験を持つ32歳。トップ選手としてキャリアを築いてきたものの、2022年には禁止薬物のレトロゾール陽性によって2年間の出場停止処分を課されていた。しかし処分中も身の潔白をアピールし、トレーニングを続けて2024年に競技復帰。苦しい時期を経ての復活勝利となった。


「今日は特別な一日。最初はいきなり序盤の渋滞で遅れてしまい、レースが数秒で終わったような気さえしていたよ。でも砂地で速く走れていたので何とか先頭集団に復帰。こんなに上手くいったレースは久しぶり。ここ数年は本当に苦しい時間を過ごしていたけれど、そこから今日勝てただなんて信じられないよ。僕のキャリアが始まった欧州選手権で、2度目のキャリアをリスタートできると思う」と涙をこぼしながらアールツは語る。2位は9歳年下のネイスで、2年連続の欧州チャンピオンの夢は敗れる。3位はウィズーレ。表彰台をベルギーが独占し、改めてその国力を見せつける結果になった。
シクロクロス欧州選手権2025-2026女子エリート結果
| 1位 | インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ) | 50:19 |
| 2位 | ルシンダ・ブラント(オランダ) | +0:41 |
| 3位 | アニック・ファンアルフェン(オランダ) | +0:56 |
| 4位 | サラ・カサソラ(イタリア) | +2:03 |
| 5位 | アマンディーヌ・フークネ(フランス) | +2:14 |
| 6位 | エレーヌ・クラウツェル(フランス) | +2:35 |
| 7位 | デニセ・ベッツェマ(オランダ) | +2:44 |
| 8位 | ラウラ・フェルドンショット(ベルギー) | +3:00 |
| 9位 | クリスティナ・ゼマノヴァ(チェコ) | +3:14 |
| 10位 | ジュリー・ブラウワーズ(ベルギー) | +4:00 |
シクロクロス欧州選手権2025-2026男子エリート結果
| 1位 | トーン・アールツ(ベルギー) | 58:40 |
| 2位 | ティボー・ネイス(ベルギー) | |
| 3位 | ヨラン・ウィズーレ(ベルギー) | +0:03 |
| 4位 | ピム・ロンハール(オランダ) | +0:04 |
| 5位 | キャメロン・メイソン(イギリス) | |
| 6位 | エミエル・フェルストリンゲ(ベルギー) | +0:12 |
| 7位 | メース・ヘンドリクス(オランダ) | +0:25 |
| 8位 | イェンテ・マイケルズ(ベルギー) | +0:33 |
| 9位 | フェリペ・オルツ(スペイン) | +0:37 |
| 10位 | マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー) | +0:42 |
text:So Isobe
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