マキシスの新型グラベルタイヤ、RAMBLERとREAVERをグラベルレースでインプレッション。新開発HYPR-Xコンパウンドを採用し、従来品より25%路面抵抗を減らし、コーナリンググリップを19%向上したグラベルタイヤを永田隼也とCW綾野真がアンバウンド・グラベルに実戦投入、ノウハウをあわせた使用感を綴ります。



マキシス RAMBLER photo:Makoto AYANO

マウンテンバイク界ではベンチマークタイヤとして絶大な人気を誇り、ロードでも実直な研究開発を反映させたハイスペックタイヤを揃える信頼のタイヤブランド、マキシス。そんなマキシスの代表的なグラベルタイヤ、RAMBLER(ランブラー)とREAVER(リーヴァー)が、新開発のコンパウンド「HYPR-X(ハイパーエックス)」を採用してアップデートされた。

年々高速化が進む世界のグラベルレースシーン。世界最大規模のグラベルレース、アンバウンド・グラベルでは今年、エリートクラスは言うに及ばず、ほぼすべての年代別クラスにおいても歴最高記録が更新されるなど、速いグラベルタイヤのニーズが高まっている。

マキシス RAMBLER のトレッド。細かなノブが並ぶ photo:Makoto AYANO

マキシスの新コンパウンド、HYPR-X(ハイパーエックス)とは、ロードバイクタイヤ用の「HYPR(ハイパー)」と、マウンテンバイクタイヤ用の「MaxxSpeed(マックススピード)」の長所を融合した新しい配合のコンパウンドだ。

2つの異なるコンパウンドの美点を掛け合わせることで、従来製品と比較して転がり抵抗は25%低減し、グリップ力は19%向上させることに成功。また、ケーシングは120TPIの高密度織りが採用されるが、そのナイロン素材は一新され、耐パンク性も向上した。

サイドウォールにはMTBで定評あるEXOプロテクションを採用し、高い耐カット性能を発揮する。マキシスの定番グラベルタイヤ、RAMBLERとREAVERは、新世代タイヤへと進化を遂げた。

マキシス RAMBLER photo:Makoto AYANO

RAMBLER(ランブラー)はオールラウンドに活躍するグラベルアドベンチャーモデル。中央部のトレッドを密集させると同時に、ブロックに傾斜を設けることでハードパックのグラベルや舗装路での転がり効率を向上している。一方でサイドノブは間隔を広く取り、あらゆる路面でのコーナリング時に高いグリップ力を発揮する設計となっている。

マキシス REAVER photo:Makoto AYANO

REAVER(リーヴァー)はより速く、より軽く、そして耐久性にも優れたハイスピード志向のグラベルレースタイヤとして開発されたモデル。トレッド中央部はロープロファイルなダイヤモンドロートレット加工が施されており、ハードパック路面でもグリップ力を確保し、転がり抵抗の低減を実現する。また、パドルノブによってハードブレーキング時にも路面に喰いつく設計となっている。

マキシス REAVER サイドには大型ノブ、センターには低いパドルノブが並ぶ photo:Makoto AYANO

大型のサイドノブは狭い間隔で配置され、安定したコーナリングパフォーマンスを実現。また各サイドノブにはサイピング(溝)が施されており、ノブが屈曲して地形に追従することでトラクションを向上させている。競技志向のライダーや、グラベルバイクでのスピードを追求したいライダーにとって魅力的な選択肢だ。

マキシス REAVER photo:Makoto AYANO

今回リリースされた新HYPR-X採用モデル、RAMBLERとREAVERは、ともに700×45Cからの展開スタートとなっているが、40Cなど他サイズは随時追加されていく予定だ。両モデルともブラックとタンウォールの2色展開で、価格は8,800円(税込)だ。

新技術を駆使し、転がり抵抗低減とグリップ力向上を果たしたRAMBLERとREAVERを、永田隼也と綾野真(CW編集部)が今年のアンバウンド・グラベルに実戦投入。その使用感とともにインプレッションをお伝えする。

RAMBLERインプレッション by 永田隼也

アンバウンド200マイルレースに初挑戦した永田隼也 photo:Makoto AYANO

MTBのマキシスサポートライダーということで、発売日前の新型RAMBLERを日本代理店のマルイ経由で特別に手配していただき、アンバウンド・グラベルで使うことができました。

もともとRAMBLERはグラベルに乗り始めてからずっと使用してきていて、そのオールラウンドな性能と使い心地、とくに転がりの軽さを気に入っています。渡米前には時間をかけて数種のタイヤを比較して試し、そのうえでRAMBLERでいくことにしました。ただし新型が届いたのは出発の数日前で、ほぼぶっつけ本番となりました。

選んだマキシスRAMBLER 45Cはオールラウンドなパターン photo:Makoto AYANO

新型RAMBLERはさらに転がりが良くなったのが印象的です。それでいてトレッドの面の厚みがあることで、路面の石に当て込んだときにも安心で、尖った岩が多い路面でも気にせず走れることでストレスが少ないです。かつクッション性が良くて、それなのに転がりがいい。すごくバランスがいいタイヤです。

12:41:26の好タイムでアンバウンド200マイルを完走した永田隼也 photo:Makoto AYANO

ライドに疲れてくると抜重がおろそかになってくるんですが、そんなときにもタイヤのクッション性の良さが助けてくれる。新型ではMTBと同じEXOケーシングになったことで、さらに丈夫さが向上して、ガレたグラベルも安心して走れます。下り系MTBレーサーである自分にとって、マキシスのEXOケーシングへの信頼は絶対的です。

従来モデルと比べると乗り味が軽くなった感じがあります。従来モデルはモッチリして路面に吸い付く感触だったのが、パリッと乾いた感じが出て、転がり抵抗がより軽くなったことで、走りも軽やかになった。そうした感触が脚で感じられます。

サイドのヨレ感も自然になりました。従来モデルは空気圧を下げていくと、ある一定のポイントから気になるヨレが出てしまう感じがあったのが、一定のしっかり感が確保されて、扱いやすくなった。安心して空気圧を下げられます。

密集した大集団でのコーナリングはかなりの緊張を伴ったが、グリップが良いRAMBLERは安心だった photo:Makoto AYANO

コンパウンドはちょっと硬くなった感じはあります。それがロットによるのか試作品だからなのか、その点については製品版で改めて確認したいと思います。今回届いた製品はパッケージが無かったので、プロ供給用のファーストロットだと思うんです。ちょっとこだわりすぎなのかもしれませんが。

REAVERも以前に使ったことはあるんですが、僕の場合は体重が80kgもあるので、トレッド面が薄いことが気になってしまって。それで尖った岩に対しても安心な厚みがあるRAMBLERを選んでいます。その点はRAMBLERのバランスの良さにメリットを感じています。レースの条件が良く、整ったグラベルだけの高速レースならREAVERを選ぶと思いますが、様々な路面状況への対応力の広さではRAMBLERのほうが上ですね。

REAVERインプレッション by 綾野真

マキシスREAVERをアンバウンドグラベル100マイルレースに使った綾野 真(シクロワイアード編集部) photo:Junya Nagata

センタースリック系タイヤがグラベルレース界で流行しているが、やはりグリップさせにくいことで避けてきた。直線路で速くてもコーナーや登りで気を遣わざるを得ないので、扱いにくいという理由からだ。

センターにノブが無いレースタイヤ マキシスREAVERをチョイスした photo:Makoto AYANO

しかし手に取ったREAVERはサイドノブが大型で、エッジが効いていて、コーナーでもグリップが効きそうだと思えた。何よりLifeTimeグランプリで連戦連勝のキーガン・スヴェンソンが新型REAVERを発表直後に使用してさっそく勝利を挙げ、そのインパクトが大きかった。

REAVERもRAMBLERも以前からラインナップされるタイヤだが、コンパウンドがアップグレードしたなら使いたくなるもの。マキシスのMTB系タイヤのタフさは定評あるところで、サイドカットに強くなるならアンバウンド名物のフリントヒルズ(燧石)の鋭利な岩にも有効だと期待した。

エキスポでマキシスのサポートスタッフにアドバイスを受けたのもチョイスに役立った photo:Makoto AYANO

アンバウンドではパンクしないことがまず第一。そのうえで速いタイヤならタイム短縮が狙えるとも思った。さらにアンバウンド名物の「ピーナツバター泥」になっても、スリックに近いトレッドなら泥の付着対策にもなる。つまりドライでもマッドでもタイヤ選択に悩まなくていいことになる。サポート体制が無いアマチュアとしては、そうした点も考慮ポイントだ。

出国数日前に届いたタイヤをセットして渡米、ぶっつけ本番になった。試走会「シェイクアウトライド」で現地のグラベルに慣らして空気圧を設定。体重62kgで1.7気圧ほどが良いとなった。乾いて硬い路面のカンザスのグラベルで、REAVERは走行感が非常に良く、かなり好感触でレース当日を迎えた。

100マイルのトップ集団から脱落した後は、少人数グループの走りに徹する photo:Lifetime

レース後半 勾配のある坂は繰り返す足攣りとの闘いになった photo:Lifetime
今年のアンバウンド・グラベルは例年よりも好条件で、各クラスで記録更新ラッシュとなった。筆者も例に漏れず昨年のタイムを19分も更新することができた。それは序盤の1時間半で先頭グループに着いていくことができたのが大きいのだが、軽い走りのREAVERが効いたのは間違いなかった。

平均時速37km/hという先頭集団の猛スピードは、その密集度から路面の岩やギャップを避けている余裕が無く、運が悪いとクラッシュやパンクのリスクがある。しかし強化されたタイヤという安心感が頼もしかった。結果的にノーパンク、ノートラブルで走れたのは大きい。

気を遣ったのはコーナリングで、意外なほど苦労させられた。サイドのノブを路面に引っ掛けるべく意識的にバイクを倒して曲がろうと走ったが、ドライで硬かった今年の路面状況では路面にノブが刺さらず、コーナーで膨らみがちになる。路面に引っかかる要素(草や傾斜、轍)を見つけてはタイヤを当て込んでグリップさせ、コーナーリングする。そうした技術があったのはシクロクロスをやってきて良かったと思えた点だ。

サイドには大型ノブ、センタートレッドには細かいパドルノブが並ぶ photo:Makoto AYANO

路面の整ったルート上での速さは感動モノで、スムーズに滑るように進む感触は病みつきになるほどだ。トレッドセンターにしっかりノブが有るタイヤにこだわりたい気持ちは依然あるのだが、この速さの前には霞んでしまう。これはレースでしか感じられないメリットだが、スリック系タイヤよりは扱いやすいし、レースならば積極的に使いたいタイヤだと実感した。速さと転がりの軽さは120TPIという高密度ケーシングによるところが大きいだろう。そのうえで耐パンク性が高いことが条件になる。

コース後半はフラットでスムーズな路面が長く続き、脚が売り切れつつも、転がりの軽いREAVERの恩恵をフルに受けて自分でも驚くべきタイムでフィニッシュできた。まさに今回のレース条件と路面にどストライクなタイヤだった。

ただ、そうしたレースや路面が日本に少ないのは現実だ。国内でこのタイヤを使うのなら、グラベルクラシックやくらいのレース部門か、舗装路を多く含むオン&オフのミックスルートのツーリングでスピードを重視したい時、距離を伸ばしたいオールロードツーリングなどだろうか。

整ったスムースグラベル上での速さと軽い走行感は病みつきになるほど photo:Makoto AYANO

先に触れたコーナリングの難しさについては、改めて国内で使った感じでは、路面へのサイドノブの刺さりが良く、うまく使えば十分に有効だと感じた。湿った土系のハードパック路面でもバイクをしっかり倒し込むことでノブを効かせることができ、コーナリングすることができる。

ただし空気圧の設定がキモで、高すぎるとノブが効かせづらく、挙動が安定しない。トレッド全体がたわむ程度の低めの空気圧でならそれはうまくいく。その空気圧は舗装路ではたわみが気になってしまうし、走りも重く感じてしまうので、「見つけにくい空気圧」と言えそうだ。

トレッドの丈夫さは、ガレ場を含む林道ツーリングで激しく乗っても傷が一切つかないことで確信できる。それでいて重量は軽量に抑えられているので、速いタイヤにしては耐パンク性が高いという安心感がある。

先に挙げたようにREAVERは空気圧設定と使い方に少し神経質なきらいはあるので、スピードを求めないならRAMBLERのほうがオールラウンドに広い用途で気兼ねなく扱いやすいタイヤと言えそうだ。



マキシス RAMBLER
コンパウンド:HYPR-X
ケーシング:120TPI
ビード:ケブラー
サイズ:700x45C
重量:554g(ブラック)、540g(タンウォール)
カラー:ブラック、タンウォール
価格:8,800円(税込)

マキシス REAVER
コンパウンド:HYPR-X
ケーシング:120TPI
ビード:ケブラー
サイズ:700x45C
重量:509g(ブラック)、500g(タンウォール)
カラー:ブラック、タンウォール
価格:8,800円(税込)

永田選手、CW綾野のそれぞれのアンバウンド・グラベルのレース参戦レポートは以下のリンクを参照してください。